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プラタヌス→プラタナス(スズカケノキ)

(略)
空気は澄みきって、まるで水のやうに通りや店の中を流れましたし、街燈はみなまっ青なもみや楢(なら)の枝で包まれ、電気会社の前の六本のプラタヌスの木などは、中に沢山の豆電球がついて、ほんたうにそこらは人魚の都のやうに見えるのでした。
(略)

                                  童話「銀河鉄道の夜」
プラタヌス→プラタナス(スズカケノキ)_c0104227_2031784.jpg
プラタナス(スズカケノキ科スズカケノキ属)鈴掛の木
スズカケノキ科スズカケノキ属に属する植物の総称。街路樹・庭園樹として広く用いられている。
プラタナス(Platanus)の語源は、ギリシャ語の「platys」(広い)から。大きな葉に由来する。賢治の表記、プラタヌスはドイツ語読みだという。
ヨーロッパ南東部からアジアが原産というこのプラタナスが日本に導入されたのは明治末。
日比谷公園のプラタナスの大木は1904(明治37)年に植栽されたものだという。

宮沢賢治にとっても、異国情緒を感じさせる植物だったのだろう。
このボンボンのような実がお気に入りだったようで、詩「高架線」では、グリーン・ランターンと呼んでいる。
「銀河鉄道の夜」は、天上を旅する物語だが、地上の植物が実に数多く登場する。





日本に導入されたプラタナスは、モミジバスズカケノキ、アメリカスズカケノキ、スズカケノキの三種。最初の画像は今日、谷津干潟近くの公園で出会ったアメリカスズカケノキ。
こちらは新宿御苑のプラタナスの並木。これはモミジバスズカケノキ。
6本ではなく、60本くらいはありそうだ。
日本でも、また世界でも街路樹として一番数が多いそうである。
プラタヌス→プラタナス(スズカケノキ)_c0104227_0314479.jpg

Commented by sdknz610 at 2008-11-22 11:30
「御苑」に神木みたいな巨木があるのを思い出しました。
私にはスズカケノキとなると、それが・・・。
あの実はどうなっているのか・・・。
Commented by tamayam2 at 2008-11-22 16:56
一枚めの背景のボケ方がきれいですね。確かにドイツ語で
Plataneです。私のアパートの前がこれの並木でしたら、カサコソ
枯葉を踏みしめて通勤しました。実はボンボンみたいですが、
踏まれるとフェルトのような種が飛び散ります。幹の模様がきれい
な木ですね。
Commented by nenemu8921 at 2008-11-22 19:40
samさん。御苑には大木がいろいろありますね。
連想ゲーム風に云えば、プラタナスは、私の場合、日比谷公園ですね。
葉が散った後も、ボンボンは裸の枝で、よく風と遊んでいますね(^^♪
Commented by nenemu8921 at 2008-11-22 19:49
tamayamさん。
背景は紅葉した樹木ですが、人魚の都といった雰囲気を遊んでみました。(#^.^#)
そうでしたか。ドイツで。
ヨーロッパにはこのプラタナスの並木が多いという記述がありました。
ボンボンは踏み潰されて、散乱するのでしょうね。
樹肌も美しく、たいへん丈夫だそうで、都会向きなのでしょうね。

Commented by かぐら川 at 2008-11-23 13:26 x
プラタナスは、西洋医学の祖とされているヒポクラテスにちなんで「ヒポクラテスの木」とも呼ばれていて、大学の医学部前や病院の前に植えられることも多いようですね。ただし、「プラタナス」は、分類学上の属名ですから、
Platanus orientalis
Platanus acerifolia
Platanus occidentalis
の3種があって、「ヒポクラテスの木」は、Platanus orientalis。日本で目にする街路樹は、Platanus acerifoliaで別種の木ですね。賢治がイメージしていたのは、はたしてどのプラタナスなのでしょうか。
なお、ヒポクラテスは、エーゲ海のコス島生まれでこのコス島にその木の下でヒポクラテスが弟子に「医の精神」を説いたという「ヒポクラテスの木」が今も老木として残っているとものの本に書いてあります(ヒポクラテス自身が植えた樹とも)。そんなことも、どこかで賢治につながっているような気がします。

Commented by かぐら川 at 2008-11-23 13:58 x
〔追記〕
古代アテネには、すでにプラタナスの並木道があったようで、ヒポクラテスだけでなくプラトンなどの哲人がその木陰で真理を説いたといいます。この樹葉花の花言葉「天才」はそのことにちなむのでしょうか。
・「ヒポクラテスの木」については、次のページがまとまっています。
http://yutaka901.fc2web.com/page5bgx08.html
・賢治の思想とも重なる「ヒポクラテスの誓い」については
http://www.kanazawa-med.ac.jp/mic/rinri/hippocrates.html
・「篠懸」「鈴懸」については
http://nogakusanpo.maya-g.com/displog/42.html
Commented by fan_tail at 2008-11-24 07:00 x
おはようございます♪
昨日ディズニーランドでこの実を見ました。
なんだろうと思いながら写してきましたけど、プラタナスだったのですね。
ほんとにボンボンみたいでかわいいですね。
教えていただいてありがとうございます。
Commented by matsu_chan3 at 2008-11-24 08:00
プラタナスの実はまさにボンボンのようですね。
風に揺られているのを見ていると何かポエムが聴こえてきそうです。
Commented by nenemu8921 at 2008-11-24 10:36
かぐら川さん。いろいろありがとうございます。
まあ、博識ですね。
哲学的でもあります。勉強になります。

賢治は東京滞在中にプラタナスを気にかけたのではないかと思います。
東北の山野にはない植物ですから。ギンドロと同様に。

花巻温泉の花壇設計のアドヴァイスの際、プラタナス七樹の植栽を指示し、実際に植えられたようですが、何処の木か、分かりません。
次回、花巻温泉を訪ねた折に、さがしてみたいですね。
Commented by nenemu8921 at 2008-11-24 10:42
fan_tailさん。まぁ、ディズニーランドへ行かれたのね(#^.^#)
いろいろいいところへ行っていますね。

あそこは園芸種の植物が意外と面白いものがあるんですよね。
ディズニー・シーがオープンした時、野生のイチジクが数種類植栽されていて、実もついていて、興味深かったです。


Commented by かぐら川 at 2008-11-25 23:07 x
いやいや博識などではなく、気になったことを調べてご報告しているだけなのですが、ときに穏やかなこのガーデンに不協和なものを持ちこんでいるようで反省をしている次第でもあります。
そのうえでの蛇足です・・・。《プラタヌス》は学名(ラテン語)のPlatanusをそのままローマ字式に読んだまでで、ドイツ語と考える必要はないと思います。(ドイツ語では、プラターネの発音になります)
なお、「高架線」(1928)という作品では、プラタヌスを「グリーン ランターン」と呼び替えていますが、そこではこの樹の英語の呼び名platan(プラタン)と、ランターンが裏で響きあっている――微かな唸りからプランタン(春)も生じつつ――ようにも思えてくるのですが。
Commented by かぐら川 at 2008-11-25 23:08 x
(続)
最初の上京(ドイツ語講習)の短歌(1916/下記)に〔プラタヌス〕が登場して以来、賢治は一貫して〔プラタヌス〕のようですが、当時プラタヌスという表記が、かなり一般的に使われていたのではないでしょうか。

※高等農林の校友会会報から、賢治が最初に詠んだ東京のプラタヌスを前後の歌とともに引用しておきます。

 大使館、低き煉瓦の、塀に降る、並木桜の朝の病葉。
 錦町、もやを通れる晨光の、しみじみ注ぐ、プラタヌスかな。
 八月も、終れる故に、小石川、青き、木の実の降れるさびしさ。

「大使館」は、関東大震災で崩壊する前の英国大使館。「錦町」は神田錦町。10年後の上京ではここに宿をとることになります。ともに麹町の下宿からドイツ語学校への通い路とその周辺でしょう。「小石川、青き」はここにお住まいの青木玉さんであるはずもなく、小石川植物園でしょうか。この降る「青き木の実」とはいったい何の樹なのでしょうか、突きとめたいところ。
Commented by nenemu8921 at 2008-12-05 09:56
かぐら川さん。こちらのコメントに気づかずにいて、失礼しました。
いろいろご教示ありがとうございます。
神田錦町にはプラタナスの並木があったのかしら?
いまはどうかしら?
小石川はご想像のとおり、植物園です。
この校友会会報に発表した作品の一部は歌稿Bの大正5年7月にも記載されていて、小石川の歌には、植物園というメモがあります。
他の歌には青木の実をうたったものもありますが、ここでは青い木の実なのでしょうね。八月なのでまだ熟してない木の実の意でしょうか。

小石川植物園にはもう何年も行っていませんが、行ってみようかな。
かぐら川さん、ありがとうございます。
by nenemu8921 | 2008-11-21 20:31 | 植物 | Comments(13)

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