スイセン

朝日かゞやく水仙を、       になひてくるは詮之助、
あたまひかりて過ぎ行くは、   枝を杖つく村老ヤコブ。

影と並木のだんだらを、     犬レオナルド足蹴れば、 織れば、
売り酒のみて熊之進、      赤眼に店をばあくるなり。
                     
                            文語詩「村道」


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ニホンスイセン(ヒガンバナ科スイセン属)
地中海沿岸原産の多年草。この属にはラッパスイセンやニホンズイセンなど色や形の異なる種や品種が多くあるが、この属に含まれるものを総称してスイセンと呼んでいる。日本には早い時代に渡来し、各地に自生地がある。画像はニホンスイセン。

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こんな道から詮之助やレオナルドがやって来そうな気がする。 (イメージです)

作品は文語詩五十篇の一つ。平和な村の光景である。
栽培した水仙をかついで朝日の中を詮之助がやってくる。ヤコブと呼びたいような村の古老が木の枝を杖代わりに歩く姿にすれちうがう。おはよう。古老の頭は日に光っている。
並木の影が落ちてだんだら模様になっている道をレオナルドという犬が走ってくる。
酒屋の熊之進は、目を赤く充血させて、ようやく店の戸をあけようとしている。きっと昨夜も売りものの酒を飲んだんだな。
大意はこんなところだろうか。
この作品は、口語詩「1043 市場帰り」に手を入れて、文語詩に改作したもの。
微妙にニュアンスが異なっている。が、この文語詩の明るい雰囲気が好きだ。


追記
表記の間違いのご指摘をご丁寧にいただいた。
犬レオナルド足蹴ればではなくて、足織ればである。
全く気がつかずにいた。というより、足蹴ればだと思い込んでいた。
今校本全集を確認すれば、たしかに足織ればとあり、全く赤面の至である。
このことによって、解釈が異なるだろうか。
並木とその影でだんだら模様になった道を犬が歩く。その足取りがだんだら模様に機織るように見える、
と解したい。
I先生、まことにありがとうございました。   2011・11・17










イーハトーブでは、水仙は四月の花だ。
こちら千葉では、いま、水仙が満開である。
鋸南町のスイセンロード(↑の画像)は有名である。
私の「下ノ畑」でも、いま水仙はよい香りを放っている。

犬レオナルドは賢治の命名で、下書稿では「黄いろのむく犬」とある。ヤコブは旧約聖書の登場人物か。
詮之助、ヤコブ、熊之進、レオナルドなどが登場するこの世界は、目の前のスケッチに、手を入れて作品化していくうちに、心象中の光景に変貌を遂げた。
Commented by bella8 at 2009-01-09 19:36
今日は寒い一日でしたね。
今にも雪が降りそうでしたがこちらは降りませんでしたね。

今にも甘い香りが漂ってきそうな美しい水仙ですこと!
寒い中で健気に咲いてくれていますね。

ヤコブは兄弟であるヨハネと共にイエス・キリストの弟子になりましたね。
ヤコブは2番目の孫のクリスチャンネームです。(^-^)

Commented by マルメロ at 2009-01-09 23:17 x
ネネムさん今日の寒さはやはり盛岡には雪がしんしんと降っているそうな。でも気仙沼にはスイセンがもう咲いたとか。春を告げる花として香りたかく咲く様がこんな明るい詩となったのですね。
Commented by nenemu8921 at 2009-01-11 00:07
ベラさん。本当に昨日、今日は寒かったですね。
今日は都心で会合があって、久しぶりにがんばって出かけてきました。(^^♪
ヤコブ!そうですか。団子三兄弟のまんなかの方ですね。クリスチャンネームなのね。(*^_^*)
敬虔な雰囲気のキャラクターですよね。聖ヤコブ。
どんな青年になるか、楽しみですね。

Commented by nenemu8921 at 2009-01-11 00:10
マルメロさん。
雪が積もった盛岡の町を歩いてみたいです。
中津川のほとりを。
スイセンの花は寒い中で、ほっとしますね。
by nenemu8921 | 2009-01-08 09:28 | 植物 | Comments(4)

宮沢賢治の愛した鳥や植物


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