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くひな →ヒクイナ

(略)
ここらの空気はまるで鉛糖溶液です
それにうしろも三合目まで
たゞまっ白な雲の澱みにかはってゐます
月がおぼろな赤いひかりを送ってよこし
遠くで柏が鳴るといふ
月のひかりがまるで掬って呑めさうだ
それから先生、鷹がどこかで磐を叩いてゐますといふ
   (ああさうですか 鷹が磐(けい)など叩くとしたら
    どてらを着てゐて叩くでせうね)
鷹ではないよ くいなだよ
くいなでないよ しぎだよといふ
(略)
                         詩「林学生」

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画像提供は船橋の猛禽大好きさんです

ヒクイナ(クイナ科)緋水鶏
夏鳥として渡来。全国の平地から低山の水田や湿地に生息する。臆病な鳥。なかなか姿を見せない。最近は湿地の減少などで生息数が非常に減っている。が、一方で越冬例の報告もある。繁殖期にはキョッ、キョッ、キョッ、キョキョキョキョ…と次第にテンポをあげて鳴く。その鳴声から、古来、クイナが戸をたたくと表現された。

水鶏(くひな)のうちたたきたるは誰が門さしてと、あはれにおぼゆ   源氏物語
たたくとて宿の妻戸を明けたれば人もこずゑの水鶏なりけり      拾遺和歌集
くひなだにたたけばあくる夏のよをこころみじかき人やかへりし     古今和歌集

文学に登場するクイナといえば、このヒクイナをさした。






標準和名クイナは似た環境を好み、姿形も似ているが、冬鳥で、戸をたたくように鳴くことはない。
↓こちらがクイナである。
くひな →ヒクイナ_c0104227_13411130.jpg
画像提供は船橋の猛禽大好きさんです

クイナ(クイナ科)水鶏
北海道と本州北部で繁殖例があるが、普通は冬鳥。
繁殖期にはヒューヒューという声を発するそうである。
この鳥も最近では姿を見られるのはまれになった。バンやオオバンと同じ仲間である。

『新宮沢賢治語彙辞典』では、ヒクイナとクイナと混然としているので注意。

1924(大正13)年6月21~22日にかけて、宮沢賢治は農学校の生徒らと共に岩手山登山をした。
その折の会話である。夜半か、夜明けかどきか。
遠く聞こえる鳥の声は、判別できなかったらしい。
《鷹がどてらを着て磐(けい)など叩く》姿は、ユーモラスである。
磐(けい)は、吊り下げて、撞木(しゅもく)で打ち鳴らす楽器。もとは中国古来のものだが、日本では勤行の際、導師が打ち鳴らす仏具のひとつ。
タカは夜行性ではないので、普通、夜、鳴くことはない。だからどてらを着て登場だろうか。
ヒクイナも低山、平地に多い。、岩手山の三合目辺りではどうだろうか。
ヤマシギなどの地シギの声かもしれない。この時期、鳥達は繁殖期でにぎやかだったろう。
Commented by matsu_chan3 at 2009-02-16 07:26 x
初めて見るヒクイナです・・・ヒクイナは足が大きいのでしょう?
バンなどと似ているからね・・・しかしこちらには来てくれない(>_<)
Commented by グレ at 2009-02-16 12:38 x
渡り鳥なんですね!?
でも水鳥とは違うんですね。
ヤンバルクイナはずっとそこで生息してるのでしょうか?
Commented by nenemu8921 at 2009-02-16 21:28
matsu_chanさん。
この子は幼鳥で、関東で越冬した個体のようです。

そうですか。北海道では行き会えないのですか。
クイナの仲間は南に多いですね。
エゾクイナなんて!! いるといいですね。(#^.^#)
Commented by nenemu8921 at 2009-02-16 21:35
グレさん。こんばんわ。一般的には渡り鳥、夏鳥です。
湿地、水田などを好むので、水鳥ともいえます。
ヤンバルクイナは沖縄の固有種(その地方にだけ特産する生物種)です。
渡り鳥は固有種とはいえませんから。

石垣島へ行ったときには、ヤンバルクイナには行き会えませんでしたが、シロハラクイナというかわいいクイナが車の前を横切って散歩していました。(#^.^#)
Commented by キッコ at 2009-02-17 09:28 x
戸をたたくクイナというのはこれですか。
初めて拝見。
なかなか見られないのですかね。
賢治も見たことなかった!!かな。
ここでは何かの鳥の声を問題に(話題に)しているようですね。
古来日本人は、鳥の姿より、鳴声に託して、心情を委ねた詩歌がおおいですな。
Commented by sdknz610 at 2009-02-17 10:22
夏鳥ですか!今は珍しい鳥さんでしょうね。こっちにはなかなかやって来ないだろうな~・・・。
Commented by nenemu8921 at 2009-02-17 23:55
キッコさん。
そうですね。最近ではヒクイナはなかなか行き会えません。
会話は半分、ユーモアというか、言葉遊び的な要素もありますね。

賢治作品でも、鳥に関しては鳴声の描写、形容が多いですね。
双眼鏡もなかったし。 人は鳴声から鳥の存在を認識した時代ですよね。
Commented by nenemu8921 at 2009-02-18 00:00
samさん。
この季節のヒクイナには愕きました。
温暖化のせいなのか、野鳥を観察する人が増えた結果なのか。

今世紀後半の地球の生物事情は、今とかなりかわってしまうかも。

Commented by 谷津の・・・ at 2009-02-18 22:08 x
 こんばんわ~昨日は「茜浜緑道」へ行かれましたか?行ったらお逢いできるかな~と思いつつも、雲がかかるのではと自宅待機。

本日 調査依頼の「きぶし」の現況、マダマダです 黒色染料に使われると言うだけ有ってアノ舞妓さんのかんざし状にはなって居りませんが花芽が黒々と不気味、時折お知らせします。

見るべきものが一つ、習志野名木百選の一番「アメリカスズカケノキ」のピンポン玉のようなボンボンが青空に面白いですよ、近い内に載せてみようかな~。 花
Commented by nenemu8921 at 2009-02-18 23:25
谷津の花歩きさん。こんばんわ。
気にかけていただきありがとうございます。
昨日は、午後千葉市内で会合が一つあり、夕方になってしまったので、
帰途、美浜橋で撮影しました。
(茜浜では、間に合いそうもなかったので)
海は黄金色に燃えましたが、富士山はぼやけていました(~_~)

キブシのこともありがとう。まだ早いですね。

スズカケノキですか。どうぞ、UPして下さい。
最近、お元気になられたようで、楽しみに拝見しています。

by nenemu8921 | 2009-02-15 14:38 | 鳥・動物 | Comments(10)

宮沢賢治の愛した鳥や植物


by nenemu8921