天子→月
2009年 05月 08日
丘はかれ草もまだらの雪も
あえかにうかびはじめまして
おぼろにつめたいあなたのよるは
もうこの山地のどの谷からも去らうとします
あゝあかつき近くの雲が凍れば凍るほど
そこらが明るくなればなるほど
あらたにあなたがお吐きになる
エステルの香は雲にみちます
おゝ天子
あなたはいまにはかにくらくなられます
詩 〔東の雲ははやくも蜜のいろに燃え〕
『春と修羅 第二集』中の1924年4月20日の日付のある作品。
外山の岩手県種畜場の種馬検査を視察するため、夜どうし歩き続けて朝を迎えたときの作品。
あなたとは、天子、月天子、月のことである。
宮沢賢治は太陽讃歌をさまざまな形で遺しているが、月もまたかれの賛美の対象だった。
荘厳な印象である。
作品の舞台は北上山地だが、越後の山間の部落で、美しい夜明けに出会ってこの詩を想起した。
東の空が蜜のいろに燃えはじめると、棚田ははじめは青く、それから紅色に美しく染まった。
素晴らしいシ~ンを体験されましたね。これはもう定点観測地にしちゃいます?♪
山古志村の近くの松之山というところです。
山古志村は地震ですっかり景観が変り、撮影には向かないそうです。
大河ドラマは今年は面白くなくて見ていないのですが、今度じっくり見てみますね。(^^♪
エステルの香とはどんなものでしょうか。
この作品ははじめ「普香天子」というタイトルでした。
賢治は月の意味で使っていますが、明星天子(金星)のことだそうです。
http://www.bekkoame.ne.jp/~kakurai/kenji/history/h4/1924420b.htm
賢治の事務所で詳しい解説があります。
情報が過剰であることはその功罪がありますね。
情報が先行するためにはじめての体験の新鮮さが人に伝わりにくいことです。
けれども、多くの情報があって、いつも人より遅れている私などもこうして恩恵に与るわけですから。
ここで言うエステルは脂肪酸RCOOHとアルコールR'OHの脱水縮合したRCOOR'でしょう。RとR'に色々あり多種のエステルがあります。香りも様々ですが果物の香りはエステルに由来するようです。この香りが何故天子の吐く息なのか?それは賢治に聞かないと分かりません。nenemuさんなら分かるかもしれませんね^^
さわやかな甘い香りなのでしょうか。
天子の吐く息というと、聖なる雰囲気ですが(^^♪
聖なる香が末香くさくなくてよかった!!(#^.^#)
別の作品でチューリップの花を杯に見立て、光のお酒、その香りを、
とても合成できないエステルだと云うシーンもあります。
ありがとうございました。