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天子→月

東の雲ははやくも蜜のいろに燃え
丘はかれ草もまだらの雪も
あえかにうかびはじめまして
おぼろにつめたいあなたのよるは
もうこの山地のどの谷からも去らうとします
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(略)
あゝあかつき近くの雲が凍れば凍るほど
そこらが明るくなればなるほど
あらたにあなたがお吐きになる
エステルの香は雲にみちます
おゝ天子
あなたはいまにはかにくらくなられます
                   詩 〔東の雲ははやくも蜜のいろに燃え〕

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『春と修羅 第二集』中の1924年4月20日の日付のある作品。
外山の岩手県種畜場の種馬検査を視察するため、夜どうし歩き続けて朝を迎えたときの作品。
あなたとは、天子、月天子、月のことである。
宮沢賢治は太陽讃歌をさまざまな形で遺しているが、月もまたかれの賛美の対象だった。
荘厳な印象である。
作品の舞台は北上山地だが、越後の山間の部落で、美しい夜明けに出会ってこの詩を想起した。
東の空が蜜のいろに燃えはじめると、棚田ははじめは青く、それから紅色に美しく染まった。
Commented by sdknz610 at 2009-05-08 21:28
棚田に嵌るのはこういう事かと、あらためて溜息が出ます。
素晴らしいシ~ンを体験されましたね。これはもう定点観測地にしちゃいます?♪
Commented by namiheiii at 2009-05-09 09:36
山古志村ですか?素晴らしいですね。一度見てみたいものです。NHK大河ドラマのオープニングに使われているCGも此処でしょうか。
Commented by namiheiii at 2009-05-09 09:38
エステルの香と言うところが賢治ならではですね。
Commented by キッコ at 2009-05-09 11:56 x
天子の消えた朝ですか?
荘厳な雰囲気が感じれます。
でも情報にあふれた現代では、ここが有名な撮影スポットだと分かってしまうのが残念ですね。
Commented by nenemu8921 at 2009-05-09 23:36
samさん。
時間の経過を表現したかったのですが、ちょっと単調でしたか?
天候に恵まれないとこういう写真は撮れないですね(^^♪
Commented by nenemu8921 at 2009-05-09 23:42
namihei先生
山古志村の近くの松之山というところです。
山古志村は地震ですっかり景観が変り、撮影には向かないそうです。
大河ドラマは今年は面白くなくて見ていないのですが、今度じっくり見てみますね。(^^♪

エステルの香とはどんなものでしょうか。
Commented by nenemu8921 at 2009-05-10 00:07
キッコさん
この作品ははじめ「普香天子」というタイトルでした。
賢治は月の意味で使っていますが、明星天子(金星)のことだそうです。
http://www.bekkoame.ne.jp/~kakurai/kenji/history/h4/1924420b.htm
賢治の事務所で詳しい解説があります。

情報が過剰であることはその功罪がありますね。
情報が先行するためにはじめての体験の新鮮さが人に伝わりにくいことです。
けれども、多くの情報があって、いつも人より遅れている私などもこうして恩恵に与るわけですから。
Commented by namiheiii at 2009-05-10 21:51
nenemuさん
ここで言うエステルは脂肪酸RCOOHとアルコールR'OHの脱水縮合したRCOOR'でしょう。RとR'に色々あり多種のエステルがあります。香りも様々ですが果物の香りはエステルに由来するようです。この香りが何故天子の吐く息なのか?それは賢治に聞かないと分かりません。nenemuさんなら分かるかもしれませんね^^
Commented by nenemu8921 at 2009-05-11 00:04
namihei先生。
さわやかな甘い香りなのでしょうか。
天子の吐く息というと、聖なる雰囲気ですが(^^♪
聖なる香が末香くさくなくてよかった!!(#^.^#)

別の作品でチューリップの花を杯に見立て、光のお酒、その香りを、
とても合成できないエステルだと云うシーンもあります。

ありがとうございました。
Commented by オキザリス at 2009-05-11 08:18 x
すばらしい夜明けですね。
すばらしい日本の原風景ですね。
賢治の時代、ごく当たり前の景色だったのでしょうか?
荘厳な詩の雰囲気にぴったりの写真ですね。
Commented by nenemu8921 at 2009-05-11 22:34
オキザリスさん。
ここは星峠というところです。
名前からしてイーハトーブの親類みたいですね。(^^♪

どこへ行っても、何を見ても、賢治文学との連想をつい広げてしまいます。(^^♪

by nenemu8921 | 2009-05-08 20:29 | イメージ | Comments(11)

宮沢賢治の愛した鳥や植物


by nenemu8921