巨桜の花の梢 

ネパールの旅レポートの途中ですが、
   日本の春が気になり、誘われて桜の撮影に行って来ました。

(略)
海ぞこのマクロフィスティス群にもまがふ
巨桜の花の梢には
いちいちに氷質の電燈を盛り
朱と蒼白のうっこんかうに
海百合の椀を示せば
釧路地引の親方連は、
まなじり遠く酒を汲み
魚の歯したワッサーマンは、
狂ほしく灯影を過ぎる
(略)
                    詩「函館港春夜光景」

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夜空に広がる巨きな桜の枝をマクロフィスティス群(ジャイアントケルプのこと)にたとえています。
農学校の修学旅行で訪れた北海道函館港の夜景を歌ったもの。うっこんかうは欝金香で、チューリップの漢名ですね。
にぎやかなお花見の情景です。夜桜で、つるされたチューリップ型の電燈に海百合と呼ばれる化石のイメージまで重ねています。
ワッサーマンはwasserman(独語)で、Nix、Nickerとも呼ばれるヨーロッパの民間伝承にしばしば登場する水の中に住む妖精。緑色の歯、魚の歯をし、緑の帽子をかぶっていて、溺れた人間の魂を逆さに伏せたポットの中に閉じ込めておくと言い伝えられ、多くの伝承説話があります。(ハイネ「流刑の神々」にも言及がある)。
樹齢数百年の桜の大木の梢を見ると、いつもこの詩句を思い出します。ここでは水を張ったちいさな田に写りこんだ樹影に巨大な昆布のイメージがダブり、いっそうその感を強くしました。

マクロフィスティス Macrocystis(大気胞)ジャイアントケルプは、よくラッコが毛布代わりに体に巻いている大型の渇藻類のこと。この植物は主に深さ6~18メートルで成長し、その群生したものは森と呼ばれる。
カリフォルニアのモントレー海岸はジャイアントケルプの森で有名である。私は葛西臨海公園の水族館で見せて戴いた体験があるが、若芽のきれっぱしのような貧弱なもので、イメージとは遠かった。
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海百合とは海底に棲む棘皮動物ですが、エンクリヌスという文字が下書稿にあることから化石のイメージを重ねていたことは明らかです。こんな形を見れば、なるほどチューリップによく似ていますね。
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函館ならぬ信州で出会いました。
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駒つなぎの桜と言われています。夜明け前5:00ごろの画像です。

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桜のある民家。茅葺屋根が気に入って車を停めてもらって撮影しました。南アルプスが姿を見せてくれました。

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名もない桜も美しい。近くの高遠の桜はもう散り始めていて作品になりませんでした。
Commented by saitamanikki2008 at 2010-04-26 16:32
凄く活動的な生活を送っておりますね !
去年、北信州に桜を見に行きましたが、葉桜でガッカリでした。
「駒つなぎの桜」の桜樹は素晴らしい樹形してますね。
夜明け前、棚田 ? の水面に映った姿は、怪しいような雰囲気が漂っています。
この一瞬は、ネパールレポートを中断しても向き合う価値のある風景だと思います。


Commented by シャルル at 2010-04-26 21:20 x
「駒つなぎの桜」この世のものとは思われないような、桜の写真を見せていただきました。ありがとうございます。
この木に馬をつないで一休みしたのでしょうか。一休みのつもりが、300年くらい経ってしまったというような、伝説がありそうな気配ですね。
Commented by ミチ at 2010-04-26 22:02 x
「駒つなぎの桜」から「名もない桜」まで、ハッとして気持ちが揺さぶられる程美しいです。

「駒つなぎの桜」から「名もない桜」までハッとする程美しいです。

ネパールのこどもたちは見ていると懐かしい気がしてきました。
5月にお会いできるのを、とても楽しみにしています。

Commented by オキザリス at 2010-04-26 22:06 x
幻想的な桜ですね。
函館港の夜桜も幻想的な光景ですね。何か、官能的な。
巨大な桜の幹をケルプの森にたとえるなんて、宮沢賢治はよくいろんなことを知っていたのだなあと感心します。
ワッサーマンも水の妖精と聞いて、幻想の光景にふさわしい登場人物ですね。
この詩は田谷力三さんとか、浅草オペラのことやオルフィス幻想も出てきますね。
全編夢か現かといった風だったのでしょうか。
この駒つなぎの桜は怪しい雰囲気が漂っていますね(*^_^*)
実際の函館港の夜景もすごいと聞きますが。


Commented by nenemu8921 at 2010-04-27 09:23
saitamanikkiさん。ありがとうございます。
夜明け前の暗いなかでセッティングしての撮影だったので、どんな風に写っているのか心配でした。
明るくなってからは魔法が消えたように、ただの美しい桜に変わっていました。
Commented by nenemu8921 at 2010-04-27 09:30
シャルルさん。ストリーテーラーですね。(^^♪
貴女の伝説の方がすてき。
義経が馬をつないだ桜だという解説の看板がありました。
是まであまり知られていなかったのに、最近人気の桜だそうで、
狭い斜面に人も多かったです。

Commented by nenemu8921 at 2010-04-27 09:37
ミチさん。ありがとう。
ハッとしてくださって嬉しいです(*^_^*)
5月はお世話をおかけします。
そろそろ川べりの菖蒲も咲きますね。(^^♪
Commented by nenemu8921 at 2010-04-27 09:42
オキザリスさん。
この詩は、ご指摘のように、現実の光景と幻想と混然としているところが面白いですね。
浅草オペラは、華やかな夜景を見ての連想で、田谷力三さんはこの場にいたわけではありません。
百万ドルの夜景と言われる函館港の夜景にお花見のにぎやかさが加わって、賢治たちは愕いたことでしょうね。
函館公園は当時と位置が変わって、再現は難しいようです。
Commented by odamaki719 at 2010-04-27 11:13
こんにちは✿
駒つなぎの桜の映り込みが素晴らしいです。
朝の静かな時間が伝わってきますね。
茅葺屋根の民家の桜もいいです。
最後の枝垂れ桜は妖艶です。
もう随分前に観光バスで高遠の桜を見に行った事がありますが
人の多さにお花見どころではありませんでした。
高遠の桜はピンクが少し濃い目で綺麗なのですよね。
Commented by nenemu8921 at 2010-04-27 16:23
odamakiさん。
そうですか。高遠の桜は昔から有名なのですね。
日本人はどうして桜が好きなのかしら。
ご自宅の敷地や墓地に植えられた樹齢数百年の桜も、今回は撮影しました。
みな○○の桜と名前がついている有名な桜みたいなのですが。
でもやや盛りを過ぎていて…。
いい出来でなかったので、UPしませんでした。
Commented by kimiko_shibata1 at 2010-04-27 20:34
こんばんは
素晴らしい桜を拝見させていただきました。
夜明けに棚田に写りこんだ幻想的な桜・・・ため息が出てしまいます。
Commented by nenemu8921 at 2010-04-27 21:04
kimikoさん。
ありがとうございます。
桜は時間帯によっても違った雰囲気になりますね。
この桜はライトアップされているそうです。
Commented by misty_hill at 2010-04-27 22:45
「駒つなぎの桜」は 私の心が揺れました。
この映像は 目に焼き付きました。

奥州平泉は 一関市出身の私には 
子供の頃に 自転車で気軽に遊びに行く場所でした。
あまりに身近過ぎて 義経や藤原一族のことは 
かなり あとになって その歴史的価値を知ることになりました。
それにしても 美しい写真です。 
ドラマがあります。  
Commented by kurotsugumi at 2010-04-27 23:39 x
nenemuさんの写真は素晴らしいですね。
一枚目の桜は荘厳さを感じました。
二枚目のは目をみはる思いでしたよ。
どちらも大きな写真で見てみたいです。
名もない桜も、じっと咲いてくれてますね。
主張しないのがいいです。

ところで、nenemuさんのネパール旅行はすごいですね。子供たちの目がきれい!
Commented by nenemu8921 at 2010-04-28 00:40
misty_hillさん。ありがとうございます。
宮沢賢治は桜をそれほど好きでなかったようなので、
実のところ、あまり思いいれがないのですよ。
 ………。褒めていただくと…。
やっぱりモデルがいいのかしらん。
Commented by brue-nile at 2010-04-28 00:46
こんばんは~♪

駒つなぎの桜を見に来ました。
実際に見た事はないのですが、
これ、有名なサクラですよね~♪

頂いたコメントのお返事に書いたのですが、
エドヒガンって書いて下さったので、
直ぐ判りましたよ…
義経の駒つなぎ、ですよね!!

お写真に桜の精が写っていないか、
探してしまったくらい、
幻想的で素晴らしいお写真に感動しています!

桜もそうですが、
海百合の方がもっと嬉しいです。

生物学を勉強していたので、
高校時代に、
近所の大学卒寸前のお兄さんに
お願いして、
生物学の教科書のお古を貰って、
その中にありましたよ。

大学時代にアルバイトで、
ある専門誌に、
化石などの挿絵を描いていたのも、
この教科書の影響でしたよ。

思わぬ再会が嬉しいです…
本当にありがとうございます<m(__)m>
Commented by nenemu8921 at 2010-04-28 00:55
kurotugumiさん。
やっぱり、モデルとカメラ??がいいのかしらん。
ありがとう。たいそう励みになります(*^_^*)

ネパールは面白かったですよ。
クロツグミさんもこれから色々機会があると思いますが、写真はアジアが面白いです。
快適な旅行は欧米だと思いますが……。
Commented by nenemu8921 at 2010-04-28 01:07
まあ、ナイルさん。お忙しい方なのに、ようこそ。
本当に何でもよくご存知ですね!!
化石お好きなのですね。これは保育社の原色化石図鑑で見つけました。
新校本宮沢賢治全集は各巻の箱の装丁は、化石のイラストが多彩に描かれています。箱だけお送りしたい気分です。(^^♪
よくあちこち広げるので、箱から出して本体だけ並べてあります。
あつ、貴女のイラストではないでしょうね。
…間宮俊一さんでした。
嬉しいお話、本当にありがとう。


Commented by ILmoon at 2010-04-28 11:32 x
あっ! 脳細胞かシナプスか?
右横から見たら、そんな小宇宙
闇に浮かぶ発光体にさえ見えて、不思議な不思議な空間
こんな造形は嬉しくなります。インパクトありますね。
それに、白髪のカツラ。大きなカツラです。
かぶって歩きたくなります。
・・イメージの世界にご招待いただき感謝です。
Commented by tamayam2 at 2010-04-28 14:12
こまつなぎのサクラ、絶賛!
ザブトン10枚分です。
Commented by nenemu8921 at 2010-05-23 16:13
ILmoonさん。ユニークな発想!
伺うだけで楽しくなります。
世界は当たり前では時々退屈ですよね。
賢治は樹木をよく髪の毛に喩えています。
なるほどねえと思いますね(*^_^*)
ILmoonさん。ありがとう。
Commented by nenemu8921 at 2010-05-23 16:17
tamayamさん。
座布団10枚ですか!!
キャー、うれしいなあ。
夢よ、醒めるな!
by nenemu8921 | 2010-04-26 11:44 | 植物 | Comments(22)

宮沢賢治の愛した鳥や植物


by nenemu8921