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ミズギボウシ

   秋立つけふをくちなはの、  沼面はるかに泳ぎ居て、
   水ぎぼうしはむらさきの、  花穂ひとしくつらねけり。 

   いくさの噂さしげければ、  蘆刈びともいまさらに、
   暗き岩頸 風の雲、     天のけはひをうかゞひぬ

                              文語詩「上流」

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ミズギボウシ(ユリ科ギボウシ属)Hosta longissima var. brevifolia 水擬宝珠

秋立つけふ は立秋のこと。
くちなは はへびのこと。たしかに朽ちた縄に似ていますね。
蘆刈 蘆(葦)は、アシともヨシとも言うが、イネ科ヨシ属の多年草で、水辺にまっすぐに伸びる茎は木化し、竹ほどではないにせよ材として活用できる。古くから様々な形で利用され、親しまれた。日本では稲刈りの後に芦刈が行われ、各地の風物詩となっていた。軽くて丈夫な棒としてさまざまに用いられ、特に葦の茎で作ったすだれは葦簀(よしず)と呼ばれる。また、屋根材としても最適で茅葺民家の葺き替えに現在でも使われている。

「文語詩五十篇評釈」(信時哲郎)では、次のように大意をまとめている。
  立秋の日、蛇が沼地のはるか遠くから泳いできて、
  ミズギボウシは紫色の、はなのついた花穂をまっすぐに立てている。
  開戦の噂がかまびすしいので、蘆を刈る人もいまさらながら、
  暗く見える岩頸の上を風に流される雲の様子から、天の具合を思案している。

 ミズギボウシは愛知県以西の本州、四国、九州に自生するとあることから、標準和名のミズギボウシではなく、水辺のギボウシのイメージでの表記かなと思っていたが、よく似たコバギボウシのことをさしているのだろうという説もある。
コバギボウシはこちらです。      
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コバギボウシ(ユリ科ギボウシ属)Hosta sieboldii var. sieboldii f. spathulata 小葉擬宝珠

今年7月に「つくば実験植物園」で取材したものです。
Commented by matsu_chan3 at 2012-09-10 15:43
おや ギボウシにもいろいろな仲間があるのですね。
花はいずれも似ているが独特で綺麗です!
さすが 詳しいですね(^_-)-☆
Commented by あだっちゃん at 2012-09-10 20:13 x
ミズギボウシがまだ綺麗に咲いていたのかと思いました。
7月撮影で納得。
Commented by kimiko_shibata1 at 2012-09-10 21:43
ミズギボウシとは??
はじめて知りました。賢治さんの言い回しではなくてそのものが品種として存在するのですね。
Commented by saitamanikki2008 at 2012-09-11 10:37
こんにちは。
ギボウシも色々と種類があるのですね。
我が家のギボウシは、どこでもあるような種類ですが
名称など知りません。
春 葉が綺麗に生えるので植えてます。
Commented by gigen_t at 2012-09-12 08:20
 確たる意味は分かりませんが 何となく分かるような気がします、 作品と対比すると 味わい深いものがあるようです、
Commented by kobane99gi at 2012-09-12 09:16
『宝珠と見まがうような』 花 (実?) なのですね。
ヘクソカズラもこんな風に名付けられたらよかったのに。

*nenemuさんの名フレーズを、
パクってしまったかもしれません。( 『光の扇』 )
今更気付いて…ごめんなさい。
直して、単語だけ使わせて頂きますね。
Commented by yohachi-nitta at 2012-09-12 16:17
似て非なる花があるものですね。
少しも知らないなんて、本当に恥ずかしいことです。
でも、
高峰高原で腹ばいになって、マクロで撮影をしていたら、トレッキングシュ-ズにリュックを背負ったオバサンが二名後ろに立っていて、
振り向いたら なんという花ですか?って聞かれました。
「私が花の名前を知って居ると思ったのですか?」って尋ねたら、
「そういう研究をしている人かと思いました」だって・・ずるいよね。
Commented by rinrin at 2012-09-12 22:01 x
こんばんは
私も今年森や安比でギボウシを見て自然に咲くことを知りました
いつも庭で見ていたのです
この紫が緑の草原で見るとハッとしますね
Commented by nenemu8921 at 2012-09-13 00:40
matsu_chanさん。
花はほとんど同じですね。
葉が大きいのがオオバギボウシで、若い茎をウルイといいますね。東北では。
北海道ではウルイは食さないでしょうか?
Commented by nenemu8921 at 2012-09-13 00:41
あだっちゃん。
在庫画像から編集してみました。
Commented by nenemu8921 at 2012-09-13 00:46
kimikoさま。
ミズギボウシは関西、四国地方に自生するようです。
賢治がコバギボウシと間違えて呼んだのか、
ミズギボウシとネーミングしたか、どうかわかりませんが。

Commented by nenemu8921 at 2012-09-13 00:48
さいたまにっきさん。斑入りの葉のギボウシは園芸種だと思います。
とてもきれいですよね。観葉植物にして部屋に飾りたいほどです。
Commented by nenemu8921 at 2012-09-13 00:51
gigenさん。
賢治の文語の詩は省略が多くてわかりにくいものが多いですが、
これはきれいにまとまっている作品だと思います。
やや、情緒的ですね(^_-)-☆
Commented by nenemu8921 at 2012-09-13 01:08
kobaneさん。「光の扉」すてきです。
どうぞ、どうぞ、自由に展開してくださいね。
私などよりずっとすてきです。
ギボウシはつぼみが擬宝珠に似ていることからのネーミングだそうです。
擬宝珠は、伝統的な建築物の装飾で橋や神社、寺院の階段、廻縁の高欄(手すり、欄干)の柱の上に設けられている飾りのこと。ネギの花の事を指すこともあるようです。
Commented by nenemu8921 at 2012-09-13 01:22
yohachiさん。
ふふ。きっとその道のプロに見えたのでしょうね。
プロですよね。
「撮るしん」も拝見しましたよ。スゴイなあ。
植物の名前を知っているからといっても、いい写真が撮れるわけでもありませんしね(^_-)-☆
Commented by nenemu8921 at 2012-09-13 01:26
rinrinさん。
山菜のウルイは食べるでしょう。
あれもギボウシ(オオバギボウシ)ですね。
でも斑入りの葉のギボウシは庭の花ですよね。
そろそろミズの実とか、出回る季節ではないですか?
by nenemu8921 | 2012-09-10 15:04 | 植物 | Comments(16)

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