「青のはてー銀河鉄道前奏曲ー」
2012年 12月 05日
凍りつくような寒い日でしたが、行ってみました。
タイトルやパンフの印象から、宮沢賢治のきらめく言葉をトッピングしてあいまいに纏め上げた舞台かな(そういうスタイルが多いので)と、あまり期待しないで、拝見しました。
吉祥寺シアターはキャパ300くらいかな、おしゃれだけれど小さな劇場、休憩なし2時間たっぷりの公演の間、狭い座席で、身動きならずエコノミー症候群にならないかと案じながら、そのうえ、隣の関取風の体格の叔父さん、しきりに溜息を連発し、そのたびに漂ってくる加齢臭のやるせなさ…。おまけに今回の企画をご紹介くださったA新聞の文化部の新鋭の記者さんは、開演前の短い時間も、微笑みながら、しきりに大判スマホだか、ノートPCだか、バシャ、バシャと打ちながらの会話。(おいおい落ち着かないわよ…)
やれやれ、そうしたすべてに耐えて拝見した舞台は、想定外にすばらしいものでした!!
ここ数年、宮沢賢治関係の芝居、映画、朗読、音楽会…拝見した中で、出色のものといえると思う。
脚本が良いんですね。
どんな内容かって。旅の物語なのですよ。多重構造の。
最果ての北の地、サハリンまで出かけた宮沢賢治、表むきは教え子の就職依頼のため、その実、逝ってしまった最愛の妹トシの魂を探すための旅、1923年8月3日。
時々は回想シーンも入るため、時間の層は一層複雑になっているわけですが。
宮沢賢治ファンの女の子、宮沢賢治を求めてサハリンまで出かける旅、2012年の現在。
この女の子が作者の分身でしょうね。現代ですから樺太の歴史に想いをはせるパートなどは数年前この地を訪れた私も同じ感想をいだいたものの。。。。
(あらら、別のテーマの物語でしょうに。。。)
他にも多くの旅人たちがそれぞれの時間軸の中で旅をし、それらが多重な時間の層の中で展開されるという物語になっています。
冒頭は「宗谷挽歌」の一節から、船員に自殺者と間違えられる賢治。いや詩を書いているのだと説明し、展開されていきます。サガレンへ向かう船、夜の甲板。
まあ、宮沢賢治をよく読みこんでいるな、周辺資料もていねいに調べて、構築したな!!と、好感が持てます。
花巻弁もかなり苦労しただろうなあと感心するほどの滑らかさ。方言指導も半端じゃないですね。
役者さんも際立ちすぎないところがいい。いや、ちょっと弱いかな。。。賢治は悪くなかったですけど。
「おめぇの祈りで何変ったのや?
そのほんとうの幸いどやら―その前におめぇに何がひとづでもでぎだのが?」ー
「賢治……。おめぇ、自分のために悲しんでんでねえのが」父・政次郎
「ほんとうの幸いってなんだよ。祈ってさえいればそこに行くのか?賢治さん、あんたは純粋すぎて見えちゃいないんだ。国柱会に閉じこもって、暮らしから切り離れて――あんたの言う実践は、俺にはどっか遠い別の世界のこととしか思えない。虚しい遊びだ。」保阪嘉内
「ほんとうの幸いってなんですか。そんなものがあるんですか。
誰かの幸せを願うことは、誰かの不幸を願うことと同じじゃないですか。
そうして考えると、願う、それ自体が罪なんじゃないですか。
無限のループに出口はあるんですか。ー」女の子(わたくし)
繰り返される「ほんとうの幸い」への疑問。
かつてこんな風に愛を込めて、賢治を追い詰めた作家がいただろうか。
宮沢賢治という人自身、多重な要素をふくんでいて、一つの切り口で描くと字余りの部分が気になってしまう。
でもその多面体的な全貌を描こうとすると、どうしても求心力が弱くなる。
この物語もあれこれ盛り込みすぎたために、鋭く切り込んだ部分がぼやけてしまった。。。。
意図してのことかな。
サガレン→栄浜→白鳥湖→白鳥の停車場→銀河鉄道の夜の世界へ
それゆえ、銀河鉄道の夜前奏曲(プレリュード)でしょうか。
妹トシ、父親政次郎、友人保阪嘉内と車掌、製紙会社の細貝さん、鳥捕りのキャラは成功といえるかな?
個人的には保阪嘉内が出来すぎ…の感あり。
あまりにも巷の伝説に重心をかけていやしないか。
井上ひさしの「イーハトーブの劇列車」を想起させる。
あれほど泥臭くない。舞台装置もすっきりとスマートである。
会場全体の3分の2ほどのところに斜めに舞台を設定し、林立している銀色のポール。
天上から吊り下げられている椅子やチェロ、時計など。その空間で物語りは展開された。
意欲的な舞台。
脚本を書いたのは、この人、長田育恵さんという若い劇作家です。
井上ひさしの最後の弟子だとか。。。
登場に乾杯を!!
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時々のぞき見しては素通りしてました。。。m(_ _)m
賢治の公演。素敵なひとときでしたね。
ブルーベリ見てくださったのね~v(*^-゜)v
気付くのが遅く、今ごろになってしまいました(汗) ごめんなさい!
ありがとうございます。
どうぞ、今後ともよろしくお願いします。