イロハモミジ

だめでせう
とまりませんな
がぶがぶ湧いてゐるですからな
ゆふべからねむらず血も出つづけなもんですから
そこらは青くしんしんとして
どうも間もなく死にさうです
けれどもなんといゝ風でせう
もう清明が近いので
あんなに青ぞらからもりあがって湧くやうに
きれいな風が来るですな
もみぢの嫩芽(わかめ)と毛のやうな花に
秋草のやうな波をたて
焼痕のあるむしろも青いです
あなたは医学会のお帰りか何かは知りませんが
黒いフロックコートを召して
こんなに本気にいろいろ手あてもしていただけば
これで死んでもまづ文句もありません
血がでてゐるにもかかはらず
こんなにのんきで苦しくないのは
魂魄なかばからだをはなれたのですかな
ただどうも血のために
それをいえないがひどいです
あなたの方からみたらずゐぶんさんたんたるけしきでせうが
わたくしから見えるのは
やっぱりきれいな青ぞらと
すきとほった風ばかりです。
             詩「眼にて云ふ」

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「疾中」詩篇の一つ。
血が出つづけているので言葉が発せない。だから眼で云うというのである。
瀕死の状況の中で、青ぞらときれいな風を感じ、
もみぢの嫩芽(わかめ)と毛のやうな花が秋草のようにゆれている情景をイメージしている。
清明は二十四節気の一つ。太陽の黄経が15度の時。春分後15日目、すなわち3月の節。
太陽暦の4月4日ごろにあたる。
偶然、清明どき、4月4日にイロハモミジの嫩芽(わかめ)と花を撮影した。
嫩は最近は使われない漢字だが、若くてやわらかいの意。嫩(ふたば)と読むこともある。
昭和4年春の作品。賢治は前年の夏、嵐の中を農村指導に奔走して病に倒れたという。いったんは小康を得るが、
12月には再び高熱に冒され、急性肺炎の診断まで受け、重篤な症状が続いた様子である。
夏には快方に向った。
「疾中」詩篇はこの時期の作品。
このときの医師は共立病院の佐藤隆房院長ではなく、主治医の佐藤長松博士であろうと言うのが小沢俊郎氏の見解である。





こうして見ると、もみぢの嫩芽、嫩葉、花とは、なんと生命力にあふれていることだろう。
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花はアップしてみると美しいとはいえないが…。
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Commented by シュウ at 2013-04-06 23:39 x
偶然にもついさっき、母親と「もみじの花って見たことないね。でも秋には種を見かけるのだから、気付いてないだけで咲いているのだろうね。」と話していたところです!
小さくて華やかさもあまりありませんが、たくさんの花を枝いっぱいに咲かせている姿にいのちの一生懸命さを感じました。
もしかしたら、賢治さんも病床からそんな風に感じていたのかな・・・と想像しました^^
Commented by matsu_chan3 at 2013-04-07 05:34
南からの強風と雨は一気に北国の雪を解かしてくれる。
雪があるうちは自然の冷蔵庫状態・・やっと木々の蕾も
膨らんできてます。ネコヤナギ、キタコブシ・・♪♪
Commented by gigen_t at 2013-04-07 08:48
作品も含め、 賢治への 造詣の深さに 感じ入っております、
Commented by マングース at 2013-04-07 11:34 x
こんにちは。
モミジの嫩芽が大阪でも開きだしています^^
そして派手ではない花も一緒に咲き出しています。
萌黄色の嫩葉と紅色の花、この組み合わせは
なかなかきれいで大好きです♪
Commented by saitamanikki2008 at 2013-04-07 16:24
こんにちは。
この季節 新緑のモミジが大変綺麗ですよネ。
春風になびく 新緑のモミジの枝を見て
大河のゆっくりな流れのようにも感じることもあります。
Commented by あだっちゃん at 2013-04-07 18:46 x
カエデの芽出しは綺麗ですね。
なんとも素敵な色合いです。
我家の鉢植えのカエデ、全然面倒をみていません。
地植えにしようかな。
Commented by tsukey at 2013-04-08 05:14 x
モミジの花を見に、私も行きました。
若葉と共に咲く花は、春を感じさせてくれます。
Commented by nobumaki at 2013-04-08 11:24 x
病は気からとは言いますが、本当に苦しんでいる病人に向けては使えない言葉ですよね。
でもこの詩を読んで苦しみを和らげる力ってあるのかも・・・って思ってしまいました。
自分が患ったとき、この詩はきっと励みになるでしょう。
Commented by nenemu8921 at 2013-04-09 00:39
シュウさん。
もみじの花ってあまり話題になりませんが、新緑はやはり眼を引きますね。
ほんの短い期間ですが。
瀕死の状況の中で生命力あふれる新緑はまぶしいものだったでしょうね。
Commented by nenemu8921 at 2013-04-09 00:42
matsu_chanさん。
もうじきですね。春の足音が聞こえるでしょう。
夏鳥たちもそろそろでしょうか。
つぐみの姿が見えなくなりました。
(^_-)-☆
Commented by nenemu8921 at 2013-04-09 00:44
gigenさん。
どうもお付き合いさせてごめんなさい。
《もみぢの嫩芽(わかめ)と毛のやうな花》というイメージのモミジを撮りたかったわけです。。。。
Commented by nenemu8921 at 2013-04-09 00:46
マングースさん。
ほんとうに美しいですよね。
でも、写真を撮るのは難しいです。
風があるときはダメで何回も失敗でした。。。
Commented by nenemu8921 at 2013-04-09 00:48
saitamanikkiさん。
この時期はモミジに限らず、新緑の木々はみな美しいと感じます。
この赤い小さな花がポイントになるのでついついカメラを向けてしまいます。
Commented by nenemu8921 at 2013-04-09 00:51
あだっちゃん。
鉢植えのカエデは管理がたいへんでしょう。
地植えにすれば、木も人も楽になるのでは……。
のびのび出来ますものね(^_-)-☆
Commented by nenemu8921 at 2013-04-09 00:52
tsukeyさん。
この時期は撮るものがたくさんあるので、余り目が行かない素材ですよね。
でも、この詩のイメージに近かったのでUPしてみました。
Commented by nenemu8921 at 2013-04-09 00:54
nobumakiさん。
こんな風に苦しんでいる自分自身を表現できる人は稀でしょうね。
苦しんでいる自分自身を見つめるもう一人の自分、それが詩人と言うものでしょうか。
by nenemu8921 | 2013-04-06 23:08 | 植物 | Comments(16)

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