ヨウシュヤマゴボウ

ならや栗の Wood Land に点在する
ひなびた朱いろの山つゝぢを燃してやるために
そのいちいちの株に
hale glow と white hot の Azalia を
副えてやらねばならぬ
若しさうでなかったら
紫黒色の山牛蒡の葉を添えて
怪しい幻暈模様をつくれ
止むなくはすべてこれを截りとる
     Gillochindox Gillochindae!
                  「装景手記」


人は誰でも好きな花と嫌いな花がある。宮沢賢治は山つつじのひなびた朱色を好まなかったらしい。
釜石線の車窓から眺めて風景の印象をメモした詩的断片である。詩的言語はとかく過剰である。

超訳すれば、楢や栗の森にあちこち見えるひなびた朱色の山つつじを美しくするには、
強烈なまっ赤なアザレア、純白に燃えるアザレア(hale glow と white hot の Azalia) を
その株もとへ補ってやらねばならない。そうでなければあの紫黒色のやまごぼうの葉を持ってきて、不思議な幻想的光景にせよ。さもなくば、すべて山つつじは截りとることだ。

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Wood Land は森のこと。賢治は和製英語も巧みである。hale glow は、強い赤、white hot は鮮烈な白と いう意味合いだ。アザレアは、高農時代の同人誌の書名にもなった西洋つつじのこと。
Gillochindox Gillochindae!は、フランス語のギロチンをもじった唱え言葉だろうか。

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紫黒色の山牛蒡とは、ヨウシュヤマゴボウである。
一般になじみがあるのは、市場で流通しているヤマゴボウの漬物であろう。これはキク科のモリアザミ、オニアザミ、オヤマホクチなどのアザミ類やヤマボクチの根の総称であり、山菜として「山ゴボウ」と称される。
最近では未熟な細いゴボウもヤマゴボウ扱いである。

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ヨウシュヤマゴボウは、アメリカ原産の植物だが、明治初期に渡来し、今では山野や人里で雑草化している。
賢治の時代には園芸植物だったのだろう。
この植物は、なんといっても、葡萄のように垂れ下がる紫黒色の実が目立つ。
だが、じつは毒草である。それゆえ怪しい幻暈模様なのだろうか。

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この花も小さく可憐で、大ぶりの葉も紅葉すると不思議な美しさだ。

これらの断片的詩句は手を入れ、形を整えられて格調高く文語詩に改作される。山つつじは世紀の末の児等のため、銀の風、無色の風と婚姻せよと呼びかけ、お気に入りのアザレアもリズムが整わないヤマゴボウも退場する。

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ヨウシュヤマゴボウ(ヤマゴボウ科ヤマゴボウ属) Phytolacca americana 洋種山牛蒡 別名アメリカヤマゴボウ

以前、ご紹介したヤマツツジは、こちらをどうぞ、

アザレアは、こちらをどうぞ。

追記
標準和名のヤマゴボウはどんな植物かというと、こんなのです。
東京都薬用植物園からお借りしました。解説も同園のもの。
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ヤマゴボウは中国原産の植物といわれ、栽培され、ときに野生化しています。漢方では根を商陸と呼び、利尿薬とされます。花が赤みを帯びる日本原産のマルミノヤマゴウは、山地に自生しています。いずれもヨウシュヤマゴボウと同様、有毒植物ですが、なかなか見ることができない珍しい植物です。
Commented by matsu_chan3 at 2014-09-14 17:23
こんばんは
ヨウシュヤマゴボウは初めて見ましたがヤマブドウのような
実のつき方ですね・・ヤマゴボウもあまり見かけません(>_<)
Commented by あだっちゃん at 2014-09-14 18:27 x
ヨウシュヤマゴボウの実も付いてきましたね。
実りの秋ですね。
Commented by kana at 2014-09-14 21:02 x
ヨウシュヤマゴボウは、毒草なのですね。
その名称から、食べられるのかと思ってました。^^;
Commented by tsukey at 2014-09-14 22:12 x
時々見かけてましたが、知りませんでした。
大変勉強になりました。有難う御座いました。
Commented by マングース at 2014-09-15 09:39 x
おはようございます。
理由はなんだったのかわかりませんがヤマツツジ
は宮沢賢治からえらい嫌われていたようですね。
桜のこともあまりいい書き方をされていません
が、どちらも私は好きなんですよね~^^;
ヨウシュヤマゴボウもそうですが毒草には美しい
種が多いですね^^
Commented by nenemu8921 at 2014-09-15 10:07
matsu_chanさん。
初めてですか? 北海道には少ないのかな?
ヤマブドウ?食べるのは勇気がいりますが、子どもの頃は色水遊びをしましたよ!
Commented by nenemu8921 at 2014-09-15 10:10
あだっちゃん。
秋ですねえ。
3連休ですごい渋滞で出かける勇気がありません。
Commented by nenemu8921 at 2014-09-15 10:12
kanaさん。
絶対に食べてはいけません。
おなかを壊しそうです。(>_<)
彩がきれいなので、目を引きますね。

Commented by nenemu8921 at 2014-09-15 10:14
tsukeyさん。
花が咲き始めたときに、撮りたい被写体ですが、
なかなか見つからないんです。
いい群落があったら教えてくださいね。来年の話ですが。
Commented by nenemu8921 at 2014-09-15 10:26
マングースさん。
面白いですよね。花にも好みがあるというのが。
一般的にメジャーな派手な花は好まなかったような印象があります。
毒草は美しい? コワイのもありますねえ(^_-)-☆
Commented by saitamanikki2008 at 2014-09-15 11:42
こんにちは。
今、私の周りでは、ヨウシュヤマゴボウを中々見つけられません。
初秋 黒くなった実と赤い茎が綺麗で撮りたい植物の一つです。
早朝散歩の池の縁にあるのですが、急斜面になって近づけないのです。
葉も赤く色付き、実と一緒に撮りたいのですが。。。
毒があるとは、知りませんでした。
Commented by rindon3190 at 2014-09-15 18:52
ヨウシャヤマゴボウ、黒い実はみていますが花は実際見たことがありませんでした。きれいなんですね。

賢治の好きでなかったというヤマツツジ、あの薄オレンジ色の
ボーとした色合いのヤマツツジは、周りの新緑の葉にとけ入りそうな目立たない色ですよね。
私も子どもの頃林の中に咲くヤマツツジをみて、
もう少しぱっとした明るさにならないのかなーなんて思い、あまり好きではありませんでした。
田舎で私が子どもの頃みたツツジはヤマツツジでした。
物足りない鄙びた色合いですが、今はそんな色合いにどことなく懐かしさを感じます。
賢治も長生きして年老いてから同じヤマツツジをみていたらきっと懐かしく思ったのではないかな、と思ったりもします。

Commented by gigen_t at 2014-09-15 19:10
 此の道の音痴です、  家の周りでは 結構眼にしますが トリタテテ 気にも止めずにおりました。 コメントを拝読し 大いなる関心を持ちました、 毒草とか 何とはなしに そのように思っておりました。 勉強になりました、
Commented by nenemu8921 at 2014-09-15 19:40
saitamanikkiさん。
ヨウシュヤマゴボウは園芸種としては華やかさに欠けるし、
雑草としては大ぶりですから、たいてい刈られてしまいますね。
でも、気にかけていれば、必ず出会いのときがあると思います。
池の縁だと水面を入れていい絵になるのではないですか。
望遠で撮って見たらどうでしょう。
(^_-)-☆
Commented by nenemu8921 at 2014-09-15 19:52
rindonさん。ご丁寧なコメント、ありがとう。
ヤマツツジは酸性土壌を好む植物なのですね。火山灰台地に咲いているでしょう。
酸性土壌は農作物を栽培する上で、宮沢賢治を悩ませた1つでもあったわけです。
花の色そのものというより、景観として冴えないし、好まなかったようです。
他の詩で、そのようなニュアンスで表現しています。
この詩のヴァージョンはいくつかあって、かなり彼が気にかけていたテーマであることがわかります。
でも、おっしゃるように、宮沢賢治が長生きして酸性土壌の風土の中で長年暮らせば、また、感慨も違ったものになったかもしれません。
rindonさん。親身に考えてくださってありがとう。
Commented by nenemu8921 at 2014-09-15 19:54
gigenさん。
やや理屈っぽい話題でごめんなさい。
gigenさんだったら、このヨウシュヤマゴボウも新しい撮り方をされるでしょうね(^_-)-☆
by nenemu8921 | 2014-09-14 15:10 | 植物 | Comments(16)

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