野原はさびしくてもさびしくなくても、とにかく日光は明るくて、野葡萄はよく熟してゐます。そのさまざまな草の中を這って、まっ黒に光って熟してゐます。
耕平は、一等卒の服を着て、野原に行って、葡萄をいっぱいとって来た、いいだらう。
耕平は、潰し葡萄を絞りあげ、砂糖を加へ、瓶にたくさんつめこんだ。
耕平が、そっとしまった葡萄酒は順序たゞしくみんなはぢけてなくなった。 童話「葡萄水」より
友人から珍しい葡萄水をいただいた。ジュースを作るつもりがお酒になってしまったとのこと。
まるで耕平みたいだなと思って、ありがたく頂戴した。
ガラスの瓶に入れて冷蔵庫で冷やし、バカラのグラスで味見をしました。(^_-)-☆
(しかし部屋の中では写真がうまく撮れなかった…)
酸味の強い赤ワインのような味がしました。すごくおいしい。
童話「葡萄水」の中で、賢治が野葡萄と書いているのはヤマブドウのことです。
そっちの方から、もずが、まるで音譜をばらばらにしてふりまいたやうに飛ん来て、みんな一度に、銀のすゝきの穂にとまりました。
めくらぶだうは感激して、すきとほった深い息をつき葉から雫をぽたぽたこぼしました。東の灰色の山脈の上を、つめたい風がふっと通って、大きな虹が、明るい夢の橋のやうにやさしく空にあらはれました。そこでめくらぶだうの青じろい樹液は、はげしくはげしく波うちました。 童話「めくらぶだうと虹」
標準和名のノブドウは、賢治の世界では「めくらぶだう」です。
もずはムクドリのこと。こちらに解説があります。http://nenemu8921.exblog.jp/6243205/めくらぶだうも賢治の百舌も、みな当時の土地の人々はそう呼んでいたわけです。動植物の標準和名が広く人口に膾炙されるようになったのは、テレビが普及した1960年代以降です。
おまけです。
紅い葡萄もありました。(@_@)??
賢治作品には登場しません。
いかに塩害がひどかったか、葉が黒ずんで縮んでいるのがわかりますか。