ばらの実

一つぶのばらの実を唇にあてました。
するとどうでせう。唇がピリッとしてからだがブルブルッとふるひ、何かきれいな流れが頭から手から足まで、すっかり洗ってしまったやう、何とも云へずすがすがしい気分になりました。空まではっきり青くなり、草の下の小さな苔まではっきり見えるやうに思ひました。
それにいままで聞こえなかったかすかな音もみんなはっきりわかり、いろいろの木のいろいろな匂いまで実に一一手にとるやうです。おどろいて手に持ったその一つぶのばらの実を見ましたら、それは雨の雫のやうにきれいに光ってすきとほってゐるのでした。
    童話「よく利く薬とえらい薬」


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画像提供はyonoさん
by nenemu8921 | 2006-11-28 23:19 | 植物 | Comments(0)

宮沢賢治の愛した鳥や植物


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