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【59】 半透明な緑の蜘蛛

それはちひさな蜘蛛の巣だ
半透明な緑の蜘蛛が森いっぱいにミクロトームを装置して
虫のくるのを待ってゐる
にもかかわらずは虫はどんどん飛んでゐる
あのありふれた百が単位の羽虫の輩が
みんな小さな孤光燈といふやうに
さかさになったり斜めになったり
自由自在に一生けんめい飛んでゐる
                 詩〔落葉松の方陣は〕


半透明な緑の蜘蛛とは何か?
賢治作品に登場するクモは、植物や鳥に比べれば、そう多くはない。
カラマツ林(落葉松)のなかで見つけた半透明の緑のクモとは何か?
ミクロトーム(microtome)は、顕微鏡で観察する際の試料を薄く切るための装置。
ここではクモの巣を比ゆしている。
網を張る緑色のクモは、水平円網を張るウロコアシナガグモ(アシナガグモ科)、エゾアシナガグモ(アシナガグモ科)、サツマノミノダマシ(コガネグモ科)などがある。
サツマノミノダマシは昼間は葉裏に隠れていて、夕方になるとすばやく円網を張る。山の林道から都会の公園まで、広く見られる。
ワカバグモ(カニグモ科)、ツユグモ(カニグモ科)、ハナグモ(カニゴモ科)も美しい緑色のクモだが、徘徊性で、網は張らず、大きな前足を広げて虫を待ち伏せして捕獲する。
『宮沢賢治語彙辞典』ではワカバグモとしているが、これは明らかな早とちりといえそうだ。

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ウロコアシナガグモ 画像提供は福光村昆虫記さん
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サツマノミノダマシ 私の「下ノ畑」で、昨年7月にアガバンサスの葉の上で見つけたもの。夕方になっても網は発見できなかった。

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ワカバグモ 画像提供は虫ナビさん

「下ノ畑」ニ居リマス
住まいのベランダから見下ろせる場所に市民農園の一角を借りて小さな畑で、花や野菜を作っています。
猫の額というより、鼠の額ほどのスペースで、「下ノ畑」と呼ぶのはおこがましいのですが、宮沢賢治が愛した植物を実際に育ててみますと、新たに発見するものも多いことは確かです。
冷や汗ですが、少しづつこの「下ノ畑」も紹介したいと思います。
by nenemu8921 | 2007-01-13 23:52 | 昆虫・クモなど | Comments(0)

宮沢賢治の愛した鳥や植物


by nenemu8921