【65】 マグノリア その1

賢治作品にはたくさんのマグノリアが登場する。
辛夷(こぶし)であったり、ひきざくらだったり、厚朴(ホオノキ)だったり、表記も呼び名もさまざまであるが、それらはすべてマグノリアである。
モクレン科モクレン属の学名がMagnoliaceae Magnolia、マグノリアである。
けれども、作品を読み込んでいくと、それらのイメージはそれぞれ限定できそうだ。

直き時計はさま頑く、       憎に鍛えし瞳は強し
さはあれ攀ぢる電塔の、      四方に辛夷の花深き。

南風(かけつ)光の網織れば、  ごろろと鳴らす碍子群、
艸火のなかにまじらひて、     蹄のたぐひけぶるらし。

                      文語詩「電気工夫」


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画像提供はyonoさん

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コブシ(モクレン科モクレン属)辛夷
山野に自生する落葉高木。早春、桜に先駆けて咲く。握りこぶしを思わせるつぼみからコブシの名の由来という説もある。

電塔に攀じ登ろうとする電気工夫は正確な時計のように頑なで融通の利かない男。
するどい視線でなぜか憎しみに燃えている。
登れば、男の視界は開け、眼下には、あちこちに咲く白いこぶしの花が群れている。
南からの風に運ばれてまぶしく光が降り注ぎ、送電線も光って揺れ、揺れた碍子はごろろと鳴る。
枯れ草を焼く野火も遠く見え、牛か、馬か、煙にかすんでいるようだ。と読めようか。

この文語詩の最初の形は、詩ノートで、「あっちもこっちもこぶしのはなざかり」と始まっている。
はなざかりのこぶしは長い冬の終わりを告げている。
閉ざされた男の心も春をかんじ解放されただろうか。
Commented by asitano_kaze at 2007-01-31 20:46
はじめまして。asitano_kazeと申します。
ブログにお出でいただきましてありがとうございます。
さてさて、あまりの格調の高さに迷いの森に入ってしまった状態で
どぎまぎし呂律が回らなくなっています。
文語詩の意訳見事です。
これなら私にも多少は理解できそうです。
閉ざされた男の心にはかすかに揺れる白い花の灯りがにじんでいるような気がします。
Commented by ベラ at 2007-01-31 20:50 x
nenemuさん、こんばんは(^o^)丿

マグノリアって名前の響きが素敵よね。
コブシは日本原産、ハクモクレンは中国原産と聞きました。

コブシは春一番に咲き始めるので、もうすぐ見られますね。(^-^ )

確か、マグノリアという名前の映画がありましたよね・・・
やっぱり、響きがいいんだわ、コブシやモクレンより・・・(^ー^* )フフ♪
Commented by nenemu8921 at 2007-02-01 12:57
ベラさん。こんにちわ。
本当にマグノリアって言葉の響きがいいわよね。

宮沢賢治って、言葉と実態のイメージがぴったりで、やっぱりすごいなあと思います。

映画は、「マグノリアの娘たち」でしたか?
Commented by nenemu8921 at 2007-02-01 13:08
asitano_kazeさん。ようこそ。
お名刺に私の好きな作家の名前が多かったので、親しみを感じました。
PCもデジカメも技術的なことはどうも苦手です。
でも明日の風を感じて、日々すごしたいと思っています。
今後ともよろしくお願いします。
リンクありがとうございました。
メールお待ちしています。




by nenemu8921 | 2007-01-29 23:22 | 植物 | Comments(4)

宮沢賢治の愛した鳥や植物


by nenemu8921