【113】 タンポポ
2007年 04月 19日
根株燃すゆふべのけむり
こらつどひかたみに舞ひて
たんぽゝの白き毛をふく
丘の上のスリッパ小屋に
媼ゐてむすめらに云ふ
かくてしも畑みな成りて
あらたなる艱苦ひらくと
文語詩「宗谷(一)」
セイヨウタンポポ(キク科タンポポ属)
帰化植物。明治時代に渡来し、現在では最も普通のタンポポになっている。
明治のころ北海道で野菜として栽培されたものが野生化したという。
タイトルから、作品の舞台は北海道か。アイヌ部落の情景か。
黒々とした流れの岸に昨夜の焚き火のなごりがけぶっている。掘りあげた木の根株を燃したのだ。子どもたちは集って互いに踊ったり、タンポポの綿毛を吹き飛ばしたりしている。
丘の上には枕木の廃材で建てた小屋があり、老婆が娘たちにいうのだ。「開墾して畑ができたが、これからがまたたいへん苦労だよ」と。
意訳すれば、こんな内容の詩である。
下書き稿では、媼が娘たちに恋愛について語っていたのだが……。
タンポポの綿毛はいつの時代も、子ども達の玩具である。