【131】 つめくさ

「おや、つめくさのあかりがついたよ。」ファゼーロが叫びました。
なるほど向ふの黒い草むらのなかに小さな円いぼんぼりのやうな白いつめくさの花が
あっちにもこっちにもならび、そこらはむっとした蜂蜜のかをりでいっぱいでした。
                              
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「あのあかりはねえ、そばでよく見るとまるで小さな蛾の形の青じろいあかりの集りだよ。」
「そうかねえ、わたしはたった一つのあかしだと思ってゐた。」
「そら、ね、ごらん、さうだらう、それに番号がついてるんだよ。」

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処々にはせいの高い赤いあかりもりんと灯り、その柄の処には緑いろのしゃんとした葉もついてゐたのです。

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つめくさの花はちゃうどその反対に明るく、まるで本統の石英ラムプでできているやうでした。
                                      童話「ポラーノの広場」

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シロツメクサ(マメ科シャジクソウ属)
ヨーロッパ原産の多年草。江戸時代にオランダからガラス器が送られてきたとき、こわれないように本種を詰めものにしていたことからこの名が生まれた。
クローバーの名前でも親しまれている。

ムラサキツメクサ(マメ科シャジクソウ属)←アカツメクサ
帰化植物。ヨーロッパ原産の多年草。

童話「ポラーノの広場」は、つめくさの灯りをたよりに、ポラーノの広場という理想世界を探しにいく物語だ。
宮沢賢治はしばしば夜の散歩に出たという。暗がりの中で白くぼっと咲いているつめくさの花とその香りが、この物語を賢治に書かせたのだ。
Commented by ブドリ at 2007-05-15 00:26 x
ポラーノの広場ではつめくさが印象的ですよね。
小さな一つ一つからつむぎだされる物語だから親しみやすく心に残るのでしょうね。

原宿の賢治関係というと宮沢賢治研究会でしょうか?参加されている方に私のブログも知られているんですか。嬉しいですね。
たしかに土曜日は普段よりもくしゃみが出やすかったような気が(笑)
Commented by nenemu8921 at 2007-05-15 08:16
ブドリさん。おはようございます。
うーむむむ…。よくご存知ですね。
ブドリさんって、本当は私の隣に座っていらした方かしら??
Commented by namiheiii at 2007-05-15 21:01
蜂蜜の香り、石英のランプ・・・賢治の感性はユニークですね。私にはかって外国から梱包の詰め物としてこの国に渡って来た西洋の野草としか映りません。TBさせて頂きました。
Commented by マルメロ at 2007-05-16 02:12 x
シロツメクサこの名の響きはハンドルネームとしてなじんでいるので分身のような。まさにこのポランの広場で灯をともすシロツメクサに魅了れてのことです。壊れやすい硝子を身をもって守るといい四葉のクローバーという貴重なもので喜びを与えるなんていうイメージに勝手にあこがれています。ちなみに友人がこの広場と名のついた碾き臼手打ち蕎麦屋を営んでいて何かと盛岡に行った時は必ず寄って食べてくることを楽しみにしています。彼の風貌は賢治のような,それは言いすぎかな。
Commented by nenemu8921 at 2007-05-16 08:09
namihei先生、おはようございます。
拝見しました。ありがとうございます。
ツメクサの灯りというのは、賢治ならではの発想ですね。
宮沢賢治を読んでいると、見慣れた景色も新鮮に迫ってきます。

Commented by nenemu8921 at 2007-05-16 08:13
マルメロさん。おはようございます。
ハンドルネームなの? わぁ、いいですね。
盛岡のお友達のお店、よかったら、教えてくださいな。
6月に花巻へ行くので、盛岡にも立ち寄る予定です。
おそば、東北はおいしいですね(*^_^*)
Commented by pianix at 2007-05-17 14:34
最近、ツメクサは枯れても美しいと認識するようになりました。この時期、ツメクサの絨毯が広がっています。四つ葉や五つ葉は票本にして女性に差し上げています。独身女性には喜ばれます。
最後の花は「セッカツメクサ(雪花詰草)」のようですね。
Commented at 2007-09-09 12:58 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by nenemu8921 at 2007-09-09 23:27
田中様。お忙しい中、ありがとうございます。
昨日は千葉Kの会合があり、失礼しました。
お目にかかりたかったです。
拙い作品を見ていただき、冷汗ですが、優しいお言葉励みになります。
時々、このブログにもコメントいただけると嬉しいです。どうぞ、よろしく。

Commented by nenemu8921 at 2007-09-09 23:56
pianixさん。失礼しました。長いこと気づかずに居りました。なんと5月にご訪問いただいたのですね。ああ…。
賢治には枯れたツメクサの描写もいくつかあります。
でも写真でその美しさ?を表現するのは難しいです。
チャレンジしてみませんか?

セッカツメクサとはなんとステキな言葉でしょう。
by nenemu8921 | 2007-05-14 01:44 | 植物 | Comments(10)

宮沢賢治の愛した鳥や植物


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