キキョウ

(ああ、もう明るくなって来た。空が明るくなって来た。きれいだなあ。おい。)
 深い鋼青から柔らかな桔梗、それからうるはしい天の瑠璃、それからけむりに眼を瞑るとな、やはりはがねの空が眼の前一面にこめてその中にるりいろのくの字が沢山沢山光ってうごいてゐるよ。くの字が光ってうご……。  
                                         初期短編綴等「柳沢」


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キキョウ(キキョウ科Platycodon属)桔梗
多年性草本植物。山野の日当たりの良い所に育つ。日本全土、朝鮮半島、中国、東シベリアに分布する。秋の七草のひとつとして親しまれている。万葉集のなかで秋の七草と歌われているアサガオは本種であると言われている。

「柔らかな桔梗」はあけがたの空の形容。鋼青(こうじょう)は賢治の造語だが、空の形容に頻出する。新しく灼いたばかりの青い鋼の板のやうな質感を鋼青と表現することが多い。
ここでは、その鋼青の空が柔らかな桔梗色に変化し、やがて瑠璃色の晴れた空が広がることをイメージしている。
Commented by マルメロ at 2007-07-02 23:00 x
キキョウといえば最近撮ったばかりの花で他花受粉で雄しべ先熟というからくりを覚えたばかりです。この写真でも柱頭の丸い時期は回りのおしべが花粉放出中でそのおしべが周りに倒れてからめしべが鮮やかに5裂して他花受粉といった姿が読み取れます。夜明けの空の色を表わす言葉には花の色から金属現象の名を借りてもなおたりないと賢治はおもったことでしょうね。
Commented by nenemu8921 at 2007-07-03 10:05
マルメロさん。
キキョウは派手な園芸種が多いなかで、なつかしい花ですね。
そうですか。神秘的なからくりというか、植物の構造があるのですね。
賢治はこの花の色が気に入っていたのでしょうか。
Commented by ブドリ at 2007-07-03 22:37 x
キキョウの色は鮮やかで綺麗ですよね。花の咲き方も袋が弾けるようで楽しませてくれます。
マルメロさんのコメントで神秘さを知りました。いろいろな仕組みを身につけた花なんですね。
新宿御苑でも掲示されていたんですけど、キキョウは絶滅危惧Ⅱ類(VU)に指定されて、絶滅の危険が増大しているですよね。昔から親しまれてきた花の形見が徐々に狭くなってきているんです。
賢治は雲の上から淋しく思っているのでしょうね。
Commented by nenemu8921 at 2007-07-04 14:15
ブドリさん。新しいお仕事いかがですか?
気にかかっています。
キキョウはなつかしい花、嫁いで、逢えない姉がいつも来ていた浴衣の模様。その花のようにしっとりした美しい人でした。
by nenemu8921 | 2007-07-02 17:48 | 植物 | Comments(4)

宮沢賢治の愛した鳥や植物


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