をとこへし←オトコエシ

(略)
(ふん。なあに、馬何処かで、こはくなってのっこり立ってるさ。)と思ひました。
そこで嘉助は、一生懸命それを跡けて行きました。ところがその路のやうなものは、まだ百歩も行かないうちに、をとこえしやすてきに背の高い薊の中で、二つにも三つにも分かれてしまって、どれがどれやら一向わからなくなってしまいました。嘉助はおういと叫びました。
おうとどこかで三郎が叫んでゐるやうです。(略)
(あゝ、こいつは悪くなって来た。みんな悪いことはこれから集(たか)ってやって来るのだ。)と嘉助は思いました。全くその通り。俄かに馬の通った痕は、草の中で無くなってしまひました。
(あゝ、悪くなった、悪くなった。)嘉助は胸をどきどきさせました。(略)
                                      童話「風の又三郎」


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オトコエシ(オミナエシ科オミナエシ属)男郎花
山野にふつうに生える多年草オミナエシに比べ、茎は太く、葉も大型、全体に毛を密集し、葉は白くて派手さがないなどから、オトコの名を冠したものだろう。

「風の又三郎」の《九月四日 日曜》の一場面である。
子どもたちが連れ立って、山へ出かけて行き、放牧されている馬と遊ぶうちに、走り出した馬を嘉助が追いかけ、道に迷って昏倒するシーンである。
初めて読んだときに、たいへん印象的だった。以後、事態がよくない状況の中で、ますます悪化するような羽目に陥ったとき、みんな悪いことはこれから集(たか)ってやって来るのだ!というこの嘉助のセリフをいつも思い出す。
by nenemu8921 | 2007-08-15 14:17 | 植物 | Comments(0)

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