ういきょう→フェンネル ハーブ

(略)
低原(のはら)の雲はもう青ざめて
おかしな縞になってゐる――
もう眼をあいてゐられない
めんだくさい 溶けてしまはう
このうゐきょうのかほりがそれだ
(略)
風……骨、青さ、
(略)
                 詩〔いま来た角に〕 下書稿(二)「水源手記」

c0104227_1543441.jpg
c0104227_15435342.jpg
ウイョウ(セリ科ウイキョウ属)茴香 最近ではハーブの仲間としてフェンネルの名の方が一般的かもしれない。
地中海沿岸が原産の多年草。古代エジプトや古代ローマでも栽培の記録があるという。
丈は1~2m。葉は糸状で、全草が鮮やかな黄緑色をしている。花期は、6月~8月、枝先に黄色の小花を多数つける。秋には7~10mm程度の長楕円形をした茶褐色の実をつける。
日本には平安時代に中国から渡来。一部では栽培もされていたようだが、一般的に広まったのはここ近年のハーブ・ブームによるものであろう。

大正13年4月19日、土曜日。農学校の実習授業を終えたあと、宮沢賢治は盛岡に出て北上山地を、夜を徹して歩き続けた。20日は外山にある牧場の種馬検査日で、それを見学する目的だ。街道ではなく、山の沢沿いの山道である。明るい月夜だった。
曲り屋のある一軒の民家の庭先で、詩人はひるまの疲れから睡魔に襲われ、幻聴に襲われ、風に溶け込んだウイキョウの香りを感じているというのである。近くの民家でフェンネルが栽培されていたわけではない。4月半ばの北上山地にフェンネルは咲かない。
この作品は再三の推敲がなされて、タイトルも変るが、「春と修羅 第二集」に収められている。

私の下ノ畑では、4,5年前に種から育て、大きくしたが、このごろは飽きて一昨年に処分してしまった。
が、毎年春になるとあちこちにこぼれ種が芽を噴き、そのままにしておくと大きくなる。市民農園全体で、あちこちに大人の背丈を越えたウイキョウの緑の葉が繁り、今はあまい独特の香が漂っている。

以前詩「山の晨明に関する童話風の構想」からミヤマウイキョウとともに紹介した。


追記
賢治はウイキョウを知っていたか

茴香の実を吹落す夕嵐 (去来,『猿蓑』1691)

茴香の花の静みにほのゆるる宵のかをりや星に沁むらん (島木赤彦『馬鈴薯の花』)

わが世さびし身丈おなじき茴香も薄黄に花の咲きそめにけり
茴香の花の中ゆき君の泣くかはたれどきのここちこそすれ
憎悪(にくしみ)のこころ夏より秋にかけ茴香の花の咲くもあはれや (憎きは女、恋しきもまた女)(北原白秋『桐の花』1913)

賢治が北原白秋を読んでいたことは良く知られています。おそらくこうした文学的体験から、ウイキョウを認識していたのではと、思われます。
Commented by キッコ at 2008-06-18 19:05 x
宮沢賢治はういきょうの香りを知っていたのですか?
何処で? どんな体験から?
Commented by オキザリス at 2008-06-18 19:07 x
フェンネルいいですね。におってくるようです。
どんな料理に使っていますか?
良かったら教えてください。
Commented by sdknz610 at 2008-06-19 16:46
ワ~・・・これ初めて見ます。フェンネル・・・覚えておかなくっちゃ。
アリウムに似てない事もないけど、やっぱり大分違う・・・♪
近所では終ぞ見た事無いな~・・・。
Commented by namiheiii at 2008-06-19 22:20
キアゲハの食草で沢山の幼虫がたかって丸坊主にするのを近くの畑で見たことがあります。
Commented by nenemu8921 at 2008-06-20 00:08
キッコさん。賢治はウイキョウの香りを認識していたかどうかはともかく、
ういきょうがよい香りの植物であることは知っていたのでしょうね。
おそらく、文学的体験体と思うのですが。詳しくは↑を見てくださいね。
Commented by nenemu8921 at 2008-06-20 00:13
オキザリスさん。
あまりクッキングはしていないのですよ。
芳香剤代わりに切花にして部屋で楽しんだりしています。
アレンジメントにも便利です。花も葉も。
Commented by nenemu8921 at 2008-06-20 00:16
samさん。私の写真は下手で芸が無いですが、雨上がりにこの花に出会うと、散形花に雨粒がいっぱいについて、被写体としても面白いものです。
Commented by nenemu8921 at 2008-06-20 00:19
nanihei先生。それでわれらが農園にはアゲハが数多く出没するのですね。
ここ数日よくナミアゲハが飛んでいます。狭い土地にしてはアゲハの数が多いなあと感じていました。
by nenemu8921 | 2008-06-18 17:03 | 植物 | Comments(8)

宮沢賢治の愛した鳥や植物


by nenemu8921