センニンソウ

 月は水銀 後夜(ごや)の喪主(もしゅ)
 火山礫(れき)は夜の沈殿(ちんでん)
 火口の巨きなゑぐりを見ては
 たれもみんな愕くはずだ
  (風としづけさ)
 いま漂着する薬師外輪山(ぐわいりんざん)
 頂上の石標もある
(略)

《雪ですか 雪ぢゃないでせう》
困ったやうに返事してゐるのは
雪でなく 仙人草のくさむらなのだ
さうでなければ高陵土(カオリンゲル)
(略)
                   詩「東岩手火山」


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センニンソウ(キンポウゲ科センニンソウ属)仙人草
日当りのよい山野の林の縁などに生えるつる性の半低木。和名は痩果の先につく白い長毛を仙人のヒゲにたとえたのではないかといわれるが、はっきりしないという。

作品は大正11年9月18日の日付がある。農学校の生徒を連れて岩手山に登山したときの印象を描いたもの。18日、午前3時ごろ、夜明けを待っているときのスケッチ。
後夜は夜半から朝までのこと。
月は水銀のように輝いて静にポツンと空にかかっているのは、後夜における喪主のように、厳粛で、そしてひっそりとさびしい感じである。
薬師外輪山は、薬師岳のこと。岩手山の標高は2038メートル。
高陵土(カオリンゲル)は、中国の有名な景徳鎮製の陶器の原料となる粘土を近くの山名にちなんで高陵、高嶺(中国語ではkaolin)土という。下にドイツ語の膠質の意gelを付けた賢治の造語。
標高2000メートル余の山頂付近にはセンニンソウは自生していまい。
また高陵土(カオリンゲル)に近い成分の粘土質が山頂付近に見られるかどうかも不明。
詩的レトリックだろうか。
どなたか、ご存知の方がいらしたらご教示願います。

「春と修羅」中の作品である。冒頭の2行は格調高い。
長い詩の一部しか紹介できないのは残念である。
Commented by グレ at 2008-09-10 21:19 x
仙人草きれいですね!
原種のクレマチスだそうですね。
植えようかと思ったら、かなり性が強くて他の花がやられてしまうそうです。
こうして見ると白い花って華やかですね!

”カオリンゲル”は賢治の造語ですか?
なんかすごく語呂がいいですね(*^^)v
Commented by sdknz610 at 2008-09-10 21:35
月は水銀・・・とか、・・・夜の沈殿とか・・・賢治のモノイイの不思議がまざまざと・・・。
センニンソウ・・・未見なんです。長~いヒゲを見てみたいな~・・・。
9日の赤城・地蔵には無かったです。
クサボタンはあったんですが、あの果穂はもうちょっと先になりそう・・・。
Commented by nenemu8921 at 2008-09-11 03:02
グレさん。クレマチスの原種ですか。
白い花が群がって咲くので、遠くから見たら雪が積もっているようにも見えるのでしょうね。

宮沢賢治は造語癖があったようです。
そのルールが独特なので、研究者は踊らされてしまいます。(*^_^*)
Commented by nenemu8921 at 2008-09-11 03:10
samさん。クサボタンは香りがないでしょう。
センニンソウはかなり強い芳香があります。
友人のガーデンに咲いているのですが、1枝いただいたら、部屋中が2,3日いい香りでした。
クサボタンの綿毛も繊細でステキですよね。
赤城山、行ってみたいです。
Commented by rinrin at 2008-09-11 12:07 x
カオリンゲルなんて、賢治はなかなかのお茶目な人だったかも♪
今だったら、ネーミングで商品化できそうですね
Commented by ウーミン at 2008-09-11 21:56 x
岩手山に10年ぐらい前登った事があります。
風が強くて、2、3分、立っているだけでもやっとでした。
山頂にはたくさんの石仏があったのが印象に残っています。
賢治たちが登ったこのときは穏やかな夜だったようですね。
Commented by nenemu8921 at 2008-09-12 11:46
rinrinさん
宮沢賢治が今の時代に生きていたら、コピーライターでも十分生活できたでしょうね。(*^_^*)
音楽的才能でしょうか。
Commented by nenemu8921 at 2008-09-12 11:49
ウーミンさん。山は天候に拠ってずいぶん違った印象になりますね。
あの石仏を数えるヒマはなかったですね。
私が友人たちと登ったとき、数えている人が居ました。
賢治の詩に出てくる数と合わないと悩んでいましたよ。
by nenemu8921 | 2008-09-10 18:05 | 植物 | Comments(8)

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