サルオガセ

(略)
ああ、こいつは実に将軍が
三十年も北の方の国境の
深い暗い谷の底で
重いつとめを肩に負ひ
一度も馬を下りないため
将軍の足やズボンが
すっかり鞍と結合し
鞍は又馬と結合し
全くひとつになったのだ。
おまけにあんまり永い間
じめじめな処に居たもんだから
将軍の顔や手からは
灰色の猿おがせが
いっぱいに生えてしまったのだ
尤(もっと)もこのさるおがせには
九十九万人みなかかってゐた
(略)
                     童話「三人兄弟の医者と北守将軍」

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トゲサルオガセ?(サルオガセ科サルオガセ属)
サルオガセ(猿尾枷、猿麻桛)とは、「樹皮に付着して懸垂する糸状の地衣」(広辞苑)。霧藻、蘿衣ともいう。ブナ林など落葉広葉樹林の霧のかかるような森林の樹上に着生する。その形は木の枝のように枝分かれし、下垂する。サルオガセ科サルオガセ属の地衣類は、日本ではおよそ40種類確認されている。

サルオガセなるものがこの世に存在することを知ったのは、初めてこの童話を読んだときでした。
宮沢賢治という人はジャンルを越えてよくまあいろんなことを知っているなあと改めて感心しました。
実物を初めて見たのは2002年の秋、このイーハトーブの森ででした。樹齢数百年の古木に着床しています。このサルオガセに会いたくて、先月末、イーハトーブを訪れた際、盛岡から車で1時間半、区界高原の奥の湿原まで行ってみました。

あまりきれいな画像ではないので、広げるのは少々臆しましたが、サルオガセが生えるような森はこんな処です。
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地衣は菌類と違って、木を養分にし木を腐らせるということはなく、空気中の水分を直接吸収し、光合成をおこない、自活しているわけです。
つまりサルオガセは霧藻(キリモ)の名にふさわしく、霞を食して生きているわけで、人にたとえれば、仙人ともいえます。
「三人兄弟の医者と北守将軍」は、初期形は「北守将軍と三人兄弟の医者」というタイトルでした。
そのラストシーンで、将軍は王様のありがたい申し出を断って、郷里に帰って百姓になり、だんだんものを食わなくなり、秋の終わりごろ、どこへ行ったか、影もかたちもなくなってしまいます。それで仙人になったとかうわさされるわけで……、そんなことを思い出しながら、半日ゆっくり森を歩きました。
Commented by ケイタロー at 2008-09-12 22:17 x
サルオガセですか。
こんな森を歩いていたら、仙人になった北守将軍にバッタリ出会いそうですね。
どんな風に声をかけますか? nenemuさんだったら。
森には他にどんなものが見られましたか?
熊は大丈夫なんですか?
Commented by sdknz610 at 2008-09-12 23:16
植物の多様性にはあらためて驚きます。初めて知りましたよ♪
霧藻とは言い得て妙♪
だんだん食わなくなり、消えて往く・・・?何とも人生そのもののような♪

これを求めてイーハトーブの奥深く分け入ったという、
nenemuさんの多様性にあらためてビックリ♪
Commented by nenemu8921 at 2008-09-13 06:34
ケイタローさん。
北守将軍には出会いませんでしたが、虔十みたいに気のいいおにいさんが、リンドウの花が満開だと森の奥まで案内してくれました。
森の手前に牛を放牧しているところがあって、そこの管理をしている方のようです。
熊に出会う可能性があるというので、ちょっと緊張しましたが。大丈夫でしたよ。
Commented by nenemu8921 at 2008-09-13 06:46
samさん。
サルオガセも種類が多いようですが、これは正確には何という種類か、確認できませんでした。
賢治もアバウトな書き方なので。

数年前に行ったときはだいぶ迷いましたが、最近は道もよくなっています。
ほとんど人に出会うことがありません。
ミズバショウの季節には多少の人が訪れるそうです。
Commented by グレ at 2008-09-13 21:34 x
へぇ~こんな生物があるのですね!
まるで岩盤に引っかかったネットのようですね(ー_ー)!!
霧藻は霧を食べて生きている・・・なんかロマンティックですね。

ブログを始めてつくづく感じるのは、自分は知らないことがなんてたくさんあるのだろうということです!
そして素敵な人がなんてたくさんいるのだろうと・・・
ブログをやっていて良かったと思う瞬間です(*^^)v
ありがとうございました。
Commented by nenemu8921 at 2008-09-14 18:38
グレさん。霧藻っていい言葉ですよね。
でも実物は……。こんなものが顔や手に生えたら……。
童話の文法は過剰ですね。(*^_^*)
by nenemu8921 | 2008-09-12 10:21 | 植物 | Comments(6)

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