2008年 01月 09日 ( 1 )

カモ

(略)犬のあとからいまのっそりとあらはれたのは
まさしく新渡辺辨護士だ
相かはらずの猟服に
鳥打しゃぽは茶いろでございだ
去年の秋から
玉葱の苗床だの
チュウリップの畦だのに
大股な足あとを何べんもつけた
その正真の犯人だ
こいつをとっちめるには
まづ石膏であの足あとのネガとポジをとることだ
しかるに人をもってして
ことさらにおれの童話を懇望したのは
まさしくこいつのおかみさん
そこで差引き勘定は
こゝで一発この青ぞらに
鉄砲を打ったら許してやらうといふ次第
ぜんたい鳥が居ないのか
見廻すと ゐる
ゐるゐる じつにたくさんゐるぞ
(略)
川の向ふが禁漁区なのでうたないのか
鳥が小さいのでうたないのか
あたらないからうたないのだ
獅子鼻まで行くつもりだな
あすこで鴨をうつといふのか
勝手にしろ おれの方は蕪だ
(略)            
             詩「蕪を洗ふ」

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宮沢賢治の「下ノ畑」は北上川の河川敷沿いにあった。
そこは鴨撃ちが犬を連れてうろつくところでもあった。
オリンピック競技に射撃があるように、鉄砲は痛快だ!
しかし、玉葱の苗床だのチュウリップの畦を荒らされてはたまらない。
何とかとっちめてやりたいが、この弁護士の奥さんが「私」の童話集「注文の多い料理店」をぜひ欲しいと、人を介して言ってきている。
無名の童話作家としては、人に読んでもらえることは天にものぼる喜びだ。
えぇい、ここでドカンと一発ぶっ放してくれれば、差し引き勘定、ゼロにしてもいいな。
畑を荒らしたくせにただで通り過ぎるとはけしからん。
当たらなくてもいいからさっさとぶっぱなせ。おやおや行っちゃった、残念…といったところだろうか。
蕪を洗いながら詩人の胸に去来した思いをそのまま書き連ねた作品だ。
冬は白鳥や雁や鴨の季節である。しかし、宮沢賢治は鴨はみな鴨で、種類を識別していないのは残念である。
当時はたくさんの鴨や雁が当たり前に身の回りにたくさん居たのだろう。
しばらくカモを紹介していきたい。

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ホシハジロ♂(ガンカモ科)星羽白
全長45cm 冬季、湖沼、川、海岸でごく普通に見られるが、どちらかといえば淡水に多い。主に水中のアマモなどの水草を食べている。早くから日本に渡来し遅くまで残っている♂の目はルビー色をしており、赤褐色の頭がバックでもよく目立つ。♀は全体に褐色で目も褐色。

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マガモ♀♂(ガンカモ科)真鴨
全長59cm 冬季、各地の水辺で普通に見られ、オナガガモについで数が多い。本州中部以北の湖沼で繁殖の記録がある。本種を家禽化したものがアヒルであり、さらに本種とアヒルをかけあわせたものをアイガモと呼ぶ。
緑色の頭部から青首とも呼ばれ、狩猟鳥として毎年多数が捕獲されている。
by nenemu8921 | 2008-01-09 17:32 | 鳥・動物 | Comments(6)

宮沢賢治の愛した鳥や植物


by nenemu8921