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こはやまつつじ丘丘の、    栗また楢にまじはりて    熱き日ざしに咲きほこる。

なんたる冴えぬなが紅ぞ、  朱もひなびて酸えはてし、  紅土(ラテライト)にもまぎるなり。

いざうちわたす銀の風、 無色の風とまぐはへよ、 世紀の末の児らのため。

さは云へまことやまつつじ、 日影くもりて丘ぬるみ、 ねむたきひるはかくてやすけき。

                                      文語詩「山躑躅」(一百編) 



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画像提供は大角修さんです。
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画像提供は大角修さんです。

ヤマツツジ(ツツジ科ツツジ属) 山躑躅
山野にふつうに生え、高さ1~4mになる半落葉低木。花はふつう朱赤色。
ツツジ科の樹木は丈夫で美しい花を咲かせ、花期も長い。多くの園芸品種もある。

丘丘にクリやナラに混じって暑い日差しをあびながら、咲きほこるヤマツツジ。
酸性化した赤土と見分けがつかないほど冴えない色だというのである。
「きわたる無色の風、銀色の風と結婚したらどうかね、お前の子孫が末永く繁栄するためにもさ」と、ユーモアをこめて語りかけているのである。紅土は、主として、鉄、アルミニウムの水酸化物から成る土壌で、文字どおり赤みがかったれんが状の土壌。ルビのラテライト(Laterite)は原名。
詩句にこうした専門用語がしぜんに登場するのも土壌学を専門に学んだ賢治らしい表現である。
風と結婚したためか、最近のツツジ科の植物には、さわやかな花も多い。
by nenemu8921 | 2007-04-30 13:20 | 植物 | Comments(2)

【120】 セイタカシギ

イーハトーブ番外・セイタカシギ
昨日、千葉県習志野市の谷津干潟でセイタカシギのラブラブカップルに出会いました。
あたたかい気持ちのよい日で、鳥たちはセンターの前の流れで水浴びをしたり、草地で昼寝をしてくつろいでいました。セイタカシギの愛情あふれる場面をご紹介します。
この鳥は賢治作品に登場するわけではありませんが、私が野鳥に関心を持つきっかけになった鳥で、特別の思いを抱いています。
と、いいますのは、現在の住まいに数十年前、転居してきたとき、ベランダで洗濯物を干しているときに、近くの水田に白い見かけない鳥が5,6羽舞いおりて、けれっ、けれっと鳴くのです。
驚いて、降りていってみると、極端に長く、細い足は紅く、体重を支えられるのかと思うほどで、白い体に艶々した黒い翼が朝日に光っていました。忘れられない光景です。
それがセイタカシギという鳥だと知り、それからすっかり野鳥ファンになり、自然そのものに関心を持つようになりました。
現在では住まい周辺の水田はみな、マンションや駐車場に変わってしまいましたが、この鳥に出会わなかったら、野鳥や植物に関心をもつことはなかったかもしれません。
宮沢賢治の読み方もちがったものになっていたかもしれません。

これらのシーンは、どなたも観察できる谷津干潟観察センターの観察コーナーで、鳥たちを脅かすことなく撮ったものです。(ガラス壁ごしに、鳥たちに気づかれずにどなたでも観察できます)
昨年もここでセイタカシギは営巣して雛を育てたそうです。リングをしている鳥が♀で、昨年営巣した個体と同じ鳥のようです。今年も雛が巣立つとよいですね。

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セイタカシギ(チドリ目セイタカシギ科)
主に旅鳥として渡来。東京湾周辺では越冬、繁殖するものもある。
水田、蓮田、入り江などに住むが、多くない。

思いがけない場面に出くわし、不備な態勢で、下手な写真をお見せするのは冷汗ですが、
他にも数十枚のショットがあります。セイタカシギの研究や調査をしている方にはご協力できます。
by nenemu8921 | 2007-04-27 18:31 | 番外 | Comments(6)
酸っぱい胡瓜をぽくぽく噛んで
みんなは酒を飲んでゐる
……土橋は曇りの午前にできて
   いまうら青い榾のけむりは
   稲いちめんに這ひかゝり
   そのせきぶちの杉や楢には
   雨がどしゃどしゃ注いでゐる……
みんなは地主や賦役に出ない人たちから
集めた酒を飲んでゐる
……われにもあらず
   ぼんやり稲の種類を云ふ
   こゝは天山北路であるか……
さっき十ぺん
あの赤砂利をかつがせられた
顔のむくんだ弱さうな子が
みんなのうしろの板の間で
座って素麺(むぎ)をたべてゐる
   (紫雲英(ハナコ)植れば米とれるてが
   藁ばりとったて間に合ぁなぢゃ)
こどもはむぎを食ふのをやめて
ちらっとこっちをぬすみみる
            詩「饗宴」


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レンゲソウ(マメ科ゲンゲ属)蓮華草
中国原産の2年草。根に根粒菌がついて空気中の窒素を固定できるため、もともとは緑肥として利用されてきた。これが水田地帯を中心に野生化したもの。
別名ゲンゲ。紫雲英(しうんえい)は、レンゲソウの漢名。花巻地方では、方言か、俗名か、ハナコと呼ぶことが多かった。

部落の共同作業、土橋つくりのあとのご苦労さん会の饗宴である。
宮沢賢治はこの時期、羅須地人協会活動を本格的に始めた時期であった。
慣れない労働に疲れ、ぼんやりしている詩人の耳に「れんげを田に植えたら米がたくさん獲れるって?藁ばかり獲れたって間に合わないさ」と誰かの声が響く。
下書稿をよむと、賢治自身が子どもと同じように疲れ、半人前の仕事しかできない自身への無力感、屈辱感がにじんでいる。
by nenemu8921 | 2007-04-25 22:54 | 植物 | Comments(2)

【118】 オキナグサ

  おきな草
  丘のなだらの夕陽に
  あさましきまでむらがりにけり
             歌稿〔B〕321 


  
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画像提供は大角修さんです。

  オキナグサ〔キンポウゲ科オキナグサ属〕翁草
  日あたりのよい草原に生える多年草。
  近年自生地が減り、環境省の「絶滅危惧Ⅱ類」に指定されている。
  花茎は高さ10cm前後で開花するが、花後伸長して30~40cmにもなる。

  やはり賢治10代のときの短歌。
  「あさましき」は、意外である、驚くべきであるの意。
  が、ここは、興ざめである、あまりのことにあきれるといったところか。
by nenemu8921 | 2007-04-24 17:10 | 植物 | Comments(13)

【117】 カタクリ

     かたくりは
      青き実となる
      恋ごころ
      風にふかるゝ
      5月の峡に  
           歌稿〔B〕315


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カタクリ(ユリ科カタクり属)片栗
種子が地中に入ってから平均8年目でようやく2枚の葉を出して開花するそうです。

この短歌は賢治が18歳の時のもの(大正3年5月)。
この年の4月に盛岡市岩手病院に入院して肥厚性鼻炎の手術を受けた。
入院中に看護婦の一人に恋し、悩んだという。
初恋は報われぬもの。
さびしい歌だが、歌稿〔A〕では
  「かたくりは青き実となる
   うすらやみの
   脳のなかなる5月の峡に 」 であった。
  うーむ、独特ですね。
by nenemu8921 | 2007-04-23 19:55 | 植物 | Comments(4)

【116】 ヒナゲシ

ひなげしはみなまっ赤に燃えあがり、めいめい風にぐらぐらゆれて、息もつけないやうでした。                                       童話「ひのきとひなげし」
テクラと呼ばれたひなげしは、この一むらの中では、いちばんかがやいて一番大きく、そしていちばんかしこかったのです。
                                   童話「ひのきとひなげし」初期形
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画像提供はnamiheiさんです。

小さいひなげしの花が、さびしく燃えながらひとりごとを云ひました。
「わたしなんか、まるでつまらないわね、美しくさへなれたら、もうあしたの晩死んだっていいんだけれど。」
                                  童話「ひのきとひなげし」初期形
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となりの花が云ひました。
「わたしだってさうよ。だって美しいことのほかに、わたしらの命なんてないんでせう。」
「あら、あなたの位立派だったら沢山だわ。あなた、本当にお立派よ。まるでお日様のやうよ。あなたの位になれたら、わたし悪魔のうちへ下女奉公にでも何でも行くわ。」
                                  童話 「ひのきとひなげし」初期形

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ヒナゲシ(ケシ科ケシ属)雛罌粟
耐寒性の1年草。別名虞美人草。

美しくなりたい!という願望で悪魔に魂を売り渡す物語は、古今東西の文学の古典的テーマである。
賢治文学では、危ないところでひのきが登場して「はらぎゃあてい」と叫び、蛙に化けた悪魔からひなげしたちを救う。
この初期形はお説教調が強いせいか、後に手を入れて大幅に改稿している。
by nenemu8921 | 2007-04-22 09:34 | 植物 | Comments(10)

【115】 桜草(プリムラ)

(略)
丘も峠もひっそりとして
そこらの草は
ねむさもやはらかさもすっかり鳥のこゝろもち
ひるなら羊歯のやはらかな芽や
桜草(プリムラ)も咲いてゐたらう
            詩〔どろの木の下から〕


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ニホンサクラソウ(サクラソウ科サクラソウ属)日本桜草
山間の湿地や河岸の原野などに生える多年草。日本原産。自生地は激減している。
「サクラソウ」というのは本来、日本産のこの植物のみを指す名称なので、ニホンサクラソウと呼ぶのは適切ではない。しかしほかのプリムラ(サクラソウ)属の植物と区別するために、そのように呼ばれるようになったのだろう。
しかし、面倒なのは宮沢賢治が描いている桜草は、しばしばプリムラというルビが振られていることで、、これは、学名 Primula sieboldiiからのルビで、西洋桜草を指すわけではない。

賢治の時代には、盛岡から外山へ越える北上山地に、桜草の群落があちこちに見られたようだ。
by nenemu8921 | 2007-04-21 21:42 | 植物 | Comments(2)
先ず博物館に入る。(略)
会場のアイヌに関する標本並に札幌附近雑草の標本亦よき教材なり。
後者は しらねあふひ、ちごゆり、はくさんちどり等殆んど岩手山三合目の植物にして、実に之等二地が花巻と比較して年平均四度位低温なること及植物の垂直水平両分布を説明するものなり。(略)
                                           〔修学旅行復命書


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画像提供はyonoさんです。

シラネアオイ(シラネアオイ科シラネアオイ属)白根葵
1科1属1種の日本特産の多年草。主として日本海側の深山の林下や、高山の雪渓のそばなどに生えている。栃木県日光白根山に多くあり、花がタチアオイに似ていることからの名。


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チゴユリ(ユリ科チゴユリ属)稚児百合
やや明るい山地に生える多年草。花被片は長さ1~1.5cm。
宮沢賢治記念館のある花巻市の胡四王山にはたくさん自生している。


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ハクサンチドリ(ラン科ハクサンチドリ属)白山千鳥
高山の草地に生える多年草。

宮沢賢治が花巻農学校の教師時代、生徒を引率して北海道修学旅行をした折の、学校へ提出された報告書の一部である。

4月から始まったNHKさんの朝ドラ「どんど晴れ」の舞台が盛岡市ですね。
小岩井農場の一本桜も懐かしいです。
ドラマで、八幡平のハクサンチドリのことが話題になっていたので、ストックから取り出してみました。
昨年、6月末に早池峰山で撮影したもの。
by nenemu8921 | 2007-04-20 22:42 | 植物 | Comments(6)

【113】 タンポポ

まくろなる流れの岸に
根株燃すゆふべのけむり
こらつどひかたみに舞ひて
たんぽゝの白き毛をふく

丘の上のスリッパ小屋に
媼ゐてむすめらに云ふ
かくてしも畑みな成りて
あらたなる艱苦ひらくと
     
       文語詩「宗谷(一)」


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セイヨウタンポポ(キク科タンポポ属)
帰化植物。明治時代に渡来し、現在では最も普通のタンポポになっている。
明治のころ北海道で野菜として栽培されたものが野生化したという。

タイトルから、作品の舞台は北海道か。アイヌ部落の情景か。
黒々とした流れの岸に昨夜の焚き火のなごりがけぶっている。掘りあげた木の根株を燃したのだ。子どもたちは集って互いに踊ったり、タンポポの綿毛を吹き飛ばしたりしている。
丘の上には枕木の廃材で建てた小屋があり、老婆が娘たちにいうのだ。「開墾して畑ができたが、これからがまたたいへん苦労だよ」と。
意訳すれば、こんな内容の詩である。
下書き稿では、媼が娘たちに恋愛について語っていたのだが……。
タンポポの綿毛はいつの時代も、子ども達の玩具である。
by nenemu8921 | 2007-04-19 23:36 | 植物 | Comments(0)
古びた水いろの薄明穹のなかに
巨きな鼠いろの葉牡丹ののびたつころに
パラスもきらきらひかり町は二層の水のなか
  そこに二つのナスタンシャ焔
  またアークライトの下を行く犬
    (以下略)             
            詩〔古びた水いろの薄明穹のなかに〕

ナスタンシャ
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ナスタチューム(ノウゼンハレン科キンレンカ属)
和名を金蓮花という。ノウゼンハレンは凌霄葉蓮。
ハーブの仲間として人気がある。花、葉、茎、種も食用に適す。さわやかな辛味があってサラダなどに向く。
栽培は簡単。耐寒性はないが、こぼれ種で発芽し、丈夫に育つ。
最近では珍しくもない園芸種だが、この時代にこんな花も栽培していたのだろうか。ナスタンシャという表現を理解できた読者はいただろうか。

古びた水いろの薄明穹とは、ここでは夕暮れどきの雰囲気の賢治風形容である。
パラス ( Pallas) は太陽系の小惑星の一つ。1802年3月28日にドイツの天文学者ハインリヒ・オルバースにより発見され、ギリシア神話に登場するトリトンの娘パラスにちなんで命名された(ギリシア神話にはもう一人、パラスという名の男性が登場するが、初期の小惑星はすべて女性名が付けられた)。
実際に小惑星が肉眼で見えるわけではなく、その存在を感じるような…雰囲気、心情というところ。
二層の水のなかは、夕闇の暗さと明るさと。あるいは春と冬との空気感か。
アークライトはアーク燈。弧光燈。当時の街灯。
春。葉牡丹の茎が立つ季節にはナスタチュームも焔のように咲きはじめた。
葉牡丹の画像日付でも明らかなように、ここ関東では今時分の光景だが、作品には1927年、5月7日の日付がある。「詩ノート」の作品。この時期の詩はモノローグ風のものが多い。
by nenemu8921 | 2007-04-16 18:47 | 植物 | Comments(2)

宮沢賢治の愛した鳥や植物


by nenemu8921