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ヤマユリ←白百合

いなびかりまたむらさきにひらめけばわが白百合は思ひきり咲けり
                                   歌稿A193

空を這ふ赤き稲妻わが百合の花はうごかずましろく怒れり
                                  歌稿A194


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ヤマユリ(ユリ科ユリ属)山百合
日本特産のユリで、北海道と北陸地方を除く近畿地方以北の山地の林縁や草地に分布する多年草である。
鱗茎は扁球状で直径10cmほど、苦味がなく食用になる。
茎は高さ1~1.5mになる。強い香気がある。

賢治作品に登場する白百合は、山百合である。
賢治の「白百合」は恋、または恋人の比ゆになっていると指摘する人もいる。
嵐の中の白百合を歌ったこれらの短歌をベースにして、後に短編「ガドルフの百合」が誕生する。
創作初期の作品だ。
by nenemu8921 | 2007-07-31 09:22 | 植物 | Comments(6)

ウド

うどの花
ひたすらに噛む甲虫の
翅にうつりて
飛ぶちぎれ雲
      歌稿B 251a252


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ウド(ウコギ科タラノキ属)独活
春に芽吹く若いやわらかい茎は食用になる。香りがよく風味のある山野草として親しまれ、栽培もされている。
8~9月に散形花序に淡緑色の小花をつける。液果は熟すと黒くなる。

賢治作品では、山菜としてのウドも登場するが、花をうたったものは珍しい。
by nenemu8921 | 2007-07-29 18:58 | 植物 | Comments(7)

やあもうどうして
空の電気がひとつぱちっとやりました
まもなくそこらの蛇紋岩だの橄欖岩(かんらんがん)が
ごろごろうなりだすでせう
それではどうも早く走って下りないと
谷もわたって行けなくなってしまひます
それでは神さま
ひとつはしるといたします
(略)
いやあなたさまこんどは
どういふわけでまたもやそんな
うすむらさきにべにいろなのを
まっかうわたくしに照らしつけて
おおどしなさるでありますか
           詩「渓にて」(下書稿四)


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画像提供は堀内洋助さんです

この作品は、最終形では、雰囲気もやや落ち着き、内容も切り詰められてしまうが、この(下書稿四)では詩人のあわてた様子が伝わってきて、面白い。
≪空の電気がひとつぱちっとやりました≫なんて、科学的で、詩的で、ユーモラスではありませんか。
賢治が雷雲を描くときはいつも空のエレキという表現が多いのだが……。

しかし、野外で雷に出会うとコワイだろうなあ。
by nenemu8921 | 2007-07-27 01:04 | 気象 | Comments(2)

シラネアオイ

雫にぬれたしらねあふひやぜんまいや
いろいろの葉が青びかりして
風にぶるぶるふるえてゐるといふことは
ここだけ雲が切れてるためかと考えまして
空をすかして見ましても
枝の間の雲脚は
なかなかもってむじないろです。
(略)
             詩「渓にて」(下書稿四)


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画像提供は
fieldnote さんです。
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画像提供はyonoさんです

シラネアオイ(シラネアオイ科シラネアオイ属)白根葵←しらねあふひ
1科1属1種の日本特産の多年草。主として日本海側の深山の林下や、高山の雪渓のそばなどに生えている。

早池峰山麓の渓谷を歩いているときに雷に出会ったときの作品である。
by nenemu8921 | 2007-07-27 00:38 | 植物 | Comments(6)
苗代の水を黒く湛えて
そこには多くの小さな太陽
また巨大なるヘリアンサスをかゞやかしむる
            詩「装景家と助手との対話」


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ヒマワリ(キク科ヒマワリ属)向日葵
北米原産の一年草。
学名はHelianthus annuus L.で、Helianthus(ヘリアンサス)は、ギリシャ語の 「helios(太陽)+ anthos(花)」が語源。つまり ”太陽の花”の意味。
ヒマワリは既に紀元前からインディアンの食用作物として重要な位置を占めていた。種子は食用にもなり、油も取れるが、賢治はそのことに触れていない。
園芸種としては切花用の矮性種や、シックな赤い花びらのもの、八重咲き種など改良種が目覚しく、100種以上あるという。

田の畦に大きなヒマワリの花を咲かせれば、苗代の水にいくつもの太陽が輝くように、映ってさぞ、立派だろう。いかにも賢治風である。が、……。
by nenemu8921 | 2007-07-25 18:17 | 植物 | Comments(5)
つりがねさうか野ぎくの花が、そこらいちめんに、夢の中からでも薫りだしたといふやうに咲き、鳥が一疋、丘の上を鳴き続けながら通って行きました。
                                       童話「銀河鉄道の夜」


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ホタルブクロ(キキョウ科ホタルブクロ属)蛍袋
各地の丘陵や山地に生える多年草。和名の由来は、この花の中に子どもが蛍を入れて遊んだことによるとか、ちょうちんの昔の呼び名である「火垂る袋」によるものとか云われている。

ツリガネソウという名は標準和名では存在しないが、一般的に、釣鐘状の花をつけた植物(ホタルブクロ、ツリガネニンジン、シャジンの仲間など)の総称である。
賢治の表記はさまざまであるが、作品の背景を考慮し、詩的エッセンスを配慮すれば、ブリューベルやツリガネソウもイメージが明確になることもある。

「オホーツク挽歌」の「不思議な釣鐘草(ブリーベル)はハマベンケイソウであろうし、
「早池峰山巓」の「釣鐘人参(ブリューベル)のいちいちの鐘もふるへる」とあるのは、ツリガネニンジンであろう。
「銀河鉄道の夜」では、あかりのイメージがあるホタルブクロがよく似合う。

ブリューベルは、blue bell(英・一般に青いついがね型の花の咲く草)で、おしゃれに呼んでみたもの。
「新宮沢賢治語彙事典」では、フランス語、ドイツ語。英語のさまざまな意味を調べて、首をかしげているが、書斎の知識だけでは賢治文学は解読できない。
直観力とアバウトさも賢治のネーミングの手法なのだ。
by nenemu8921 | 2007-07-23 12:19 | 植物 | Comments(4)

オミナエシ

ある死火山のすそ野のかしはの木のかげに、「ベゴ」といふあだ名の大きな黒い石が、永いことじいっと座ってゐました。
(略)
はじめは仲間の石どもだけでしたがあんまりベゴ石が気がいいので、だんだんみんな馬鹿にし出しました。
をみなへしが、斯う云ひました。
「ベゴさん。僕は、たうとう、黄金のかんむりをかぶりましたよ。」
「おめでたう。をみなへしさん。」
「あなたは、いつ、かぶるのですか。」
「さあ、まあ私はかぶりませんね。」
「さうですか。お気の毒ですね。しかし、いや。はてな。あなたも、もうかんむりをかぶってるではありませんか。」
をみなへしは、ベゴ石の上に、このごろ生えた小さな苔を見て、云ひました。
ベゴ石は笑って、
「いやこれは苔ですよ。」
「さうですか。あんまり見栄えがしませんね。」
                      童話「気のいい火山弾」


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オミナエシ(オミナエシ科オミナエシ属)女郎花
日あたりのよい山地や丘陵に生える多年草。女郎花と書くが、これは漢名ではない。
名前の「オミナ」は「美しい女性」、「エシ」は「飯」の意とする説もある。同属のオトコエシに比べて弱々しいからである。
全国の草地や林縁に普通な植物であったが、近年は少なくなった植物。
秋の七草の一つだが、もう咲き始めている。梅雨明けもまだだというのに。


いかにもオミナエシの花は素朴な黄金のかんむりである。
by nenemu8921 | 2007-07-21 10:56 | 植物 | Comments(6)

ノカンゾウ

日ざしがほのかに降ってくれば
またうらぶれの風も吹く
にはとこやぶのうしろから
二人のをんながのぼって来る
けらを着 粗い縄をまとひ
萱草の花のやうにわらひながら
ゆっくりふたりがすすんでくる
その蓋のついた小さな手桶は
きょうははたけへのみ水を入れて来たのだ
今日でない日は青いつるつるの蓴菜を入れ
欠けた朱塗の椀をうかべて
朝の爽やかなうちに町へ売りにも来たりする
鍬を二梃たゞしくけらにしばりつけてゐるので
曠原の淑女たちよ
あなたがたはウクライナの
舞手のやうに見える
   ……風よたのしいおまへのことばを
      もっとはっきり
      この人たちにきこえるやうに云ってくれ……
        詩「曠原淑女」(〔日脚がぼうとひろがれば〕下書稿(一))


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ノカンゾウ(ユリ科ワスレグサ属)野萱草
野原や山麓に生える多年草。ヤブカンゾウより、やや小ぶりで一重咲き。

賢治は萱草といっているので、ヤブカンゾウでもノカンゾウでもいいのだが、この詩のイメージとしては、ノカンゾウがいいなと思う。
この作品は手入れされて、定稿では「睡蓮の花のやうにわらひながら」となる。

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ジュンサイ(ハゴロモモ科ジュンサイ属)蓴菜
多年生の水生植物である。澄んだ淡水の池沼に自生する。若芽の部分を食用にするため、栽培されている場合もある

花巻でよくお世話になる「ならの里」というユースでは、このジュンサイを自家栽培していて、よくご馳走になる。
この宿のすごいのは、野菜、ヨーグルト、漬物、みな自家栽培の新鮮な素材をつかっているところだ。
by nenemu8921 | 2007-07-19 23:31 | 植物 | Comments(6)

アジサイ

あぢさゐいろの風だといふ
雲もシャッツも染まるといふ
ここらの藪と火山塊との配列は
そっくりどこかの大公園に使へるといふ
(略)
           詩「林学生」(下書稿二)


ヤマアジサイ(ユキノシタカアジサイ属)
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タマアジサイ(ユキノシタ科アジサイ属)
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アジサイ(園芸種)
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アジサイ(ユキノシタ科アジサイ属)紫陽花
日本原産の落葉低木。原型種のガクアジサイを品種改良し、園芸種として現在花の形・大きさなど数多くの種類がある。現在、庭木では日本から西洋に渡り品種改良されたセイヨウアジサイが多く見られるが、日本に多くの種類が自生する。
学名はHydrangea、「水の容器」という意味。学名のままヒドランジアあるいはハイドランジアということもある。

この作品の定稿では
ラクムス青(ブルー)の風だといふ
シャッツも手帳も染まるといふ  と、手入れされている。
ラクムスはアルカリに入れると青に変化するリトマスのこと。
アジサイの花の色が土壌の酸性度によって変化することからの発想か。

さて、アジサイいろの風とは?
by nenemu8921 | 2007-07-18 22:42 | 植物 | Comments(4)

ヘンルータ→ルー

(略)
北の和風は松に鳴り
稲の青い鑓ほのかに旋り
きむぽうげみな
青緑或はヘンルータカーミンの金平糖を示す
(略) 
                     詩ノート〔午はつかれて塚にねむれば〕


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ルー(ミカン科ヘンルーダ属)
ヘンルーダ(ヘンルータ)は、江戸期にこの花が渡来したときのオランダ語が訛ったたもの。英語ではコモンルー(common rue)あるいは単にルー(rue)と言う。学名は Ruta graveolens 。
最近ではハーブ・ブームで、ルーまたはヘンルーダで流通している。
地中海沿岸地方の原産の多年草。樹高は50cmから1mほど。
シェークスピアにもギリシャの自然誌にも登場する由緒正しい薬草で、魔女を追い出し、疫病を払うと伝えられてきた。柑橘にも似たこの香りは、ネコが嫌がるというので猫寄らずという別名もある。わが「下ノ畑」の隣人は猫よけに植えている。

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ウマノアシガタ(キンポウゲ科キンポウゲ属)←きむぽうげ
草原や水田の畦にも多い多年草で、賢治はよく目にしたと思う。お気に入りだったようだ。他の作品ではバターカップという英名でも、しばしば登場する。

キンポウゲ(ウマノアシガタ)の花後の果実を見て、このルーの果実も、似ていることを想起したのであろう。どちらも金平糖に似ていることからの連想。
カーミンは、carmine(英・深紅色の)か? 日本で流通しているルーは、殆んど黄色い品種で、紅いルー(ヘンルータカーミン)は、市場にはないという。宮沢賢治の博識には驚くばかりだが、実際にこの花を見る機会はあったのだろうか?書物からの知識だろうか。
by nenemu8921 | 2007-07-16 00:18 | 植物 | Comments(5)

宮沢賢治の愛した鳥や植物


by nenemu8921