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やなぎの花

あまりにも
こころいたみたれば
いもうとよ
やなぎの花もけふはとらぬぞ。
           「冬のスケッチ」 三七葉


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イヌゴリヤナギ(ヤナギ科ヤナギ属)
イヌコリヤナギとは、柳行李をつくるコリヤナギに似ているが役に立たないという意味。
日当たりのよい小川のふちや湿地に普通にある落葉低木。

詩集『春と修羅』に登場する詩恋と病熱の原型は、この「冬のスケッチ」にあった。
賢治の「やなぎの花」は、総称としてのカワヤナギである。
ベムベロはカワヤナギの花芽のこと。
このカワヤナギの蒴果(さくか)は絹状の毛を密生させ、やがて二裂してこまかい種子を飛ばす。
賢治は、やなぎのさまざまな状態を正確に捉えて実にさりげなく描いている。

賢治作品を読むうちに、ヤナギという植物に魅かれて、多彩な美しさ、不思議さを実感するようになった。
by nenemu8921 | 2008-03-31 18:10 | 植物 | Comments(8)

アザリア

(略)
ならや栗のWood landに点在する
ひなびた朱いろの山つつじを燃してやるために
そのいちいちの株に
hale glow と white hot の azalia を副えてやらねばならぬ
(略)
                                 詩「装景手記」


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アザレア(ツツジ科ツツジ属)
日本や中国のツツジ・サツキが1850年頃ヨーロッパに渡り、温室促成用に品種改良されたもの。
明治のはじめ頃に日本に導入された。
多くは大論の八重咲きで、ピンク、白、赤、絞りや覆輪など花色も豊富で華やか。
上の画像は、幕張メッセで、今開催中の日本フラワー&ガーデニングショーで見つけたものです。

woodlamdは森林地帯。hale glowは強い赤、white hotは鮮烈な白。
田舎っぽいヤマツツジはさえないゆえに、鮮やかな花色のアザレアを副えようというのである。
賢治の時代には、アザレアは華麗な花、新鮮な花であったのだろう。
賢治はアザリア azalia と表記しているが、アザレア azalea が 適切なようである。


「アザレア」といえば、盛岡高等農林学校3年の時に、保阪嘉内らとともに創刊した文芸同人誌の名前が、「アザリア」だったことはよく知られている。
保阪嘉内と賢治に関しては、 《宮沢賢治と「アザリア」の友たち》に詳しい。クリックしてご覧ください。


追記
こちらがヤマツツジです。
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ヤマツツジ(ツツジ科ツツジ属)
たしかに、ひなびた朱色だが、山野で出会うと、はっとするほど美しい。
現代人は華やかな園芸種の花に囲まれているからかもしれない。
by nenemu8921 | 2008-03-28 23:14 | 植物 | Comments(10)

クロモジ

(略)
小十郎はなぜかもう胸がいっぱいになって、もう一ぺん向ふの谷の白い雪のやうな花と
余念なく月光をあびて立ってゐる母子の熊をちらっと見て、それから音をたてないやうに
こっそりこっそり戻りはじめた。
風があっちへ行くな行くなと思ひながら、そろそろと小十郎は後退りした。
くろもじの木の匂ひが月のあかりといっしょにすうとさした。
(略)
                              童話「なめとこ山の熊」


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クロモジ(クスノキ科クロモジ属)
山地に自生し、高さ2~4mになる落葉低木。枝は暗緑色で黒い斑点がある。
小枝を折るとさわやかな香気がある。
雌雄異株。材を楊子にする。

向ふの谷の白い雪のやうな花はもちろんマグノリア(こぶし)である。
よかったらこちらをどうぞ。
by nenemu8921 | 2008-03-27 19:34 | 植物 | Comments(10)

アオキ

白光の暮れそらに立ちて
その青木
ひたすら雨に洗はれて居り
             歌l稿 647

雨やめど
かへつて空は重りして
青木も陰の見えそめにけり
            歌稿 649



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アオキ(ミズキ科アオキ属)青木
高さ2~3mになる常緑低木。庭木としても多く植えられている。
雌雄異株。4~5月、円錐花序に紫褐色のちいさな花をつける。
果実は卵状楕円形で長さ約2cm、冬から春に美しく赤熟する。

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青木といえば、赤い実が美しいが、宮沢賢治が詠んでいるのは雨に打たれている青木、つややかな葉が心をとらえたのか。
たそがれどきの光景である。
by nenemu8921 | 2008-03-26 19:27 | 植物 | Comments(4)

こぶし

「兄さん。ヒームカさんはほんたうに美しいね。
兄さん、この前ね、僕、ここからかたくりの花を投げてあげたんだよ。
ヒームカさんのおっかさんへは白いこぶしの花をあげたんだよ。
そしたら西風がね、だまって持って行って呉れたよ。」
                        童話「楢ノ木大学士の野宿」


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クリックすると画像はおおきなります
コブシ(モクレン科モクレン属)辛夷
高さ10~20mになる落葉高木。
四方八方へ腕を伸ばした大木に出会った。花が開いたらさぞ見事だろう。
ヒームカさんのおっかさんは岩手山だろうか?
だとすれば、こんな大木が似合うような気がする。マグノリアである。
by nenemu8921 | 2008-03-25 21:20 | 植物 | Comments(2)

やなぎの花

かゞやきて
やなぎの花のとぶすその
のうまわれらをしたひつゞけり  
               歌稿 531


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アカメヤナギ(ヤナギ科ヤナギ属)


「まひるのかしはゞら 三首」の中の作品。1917(大正6)年、6月某日。賢治、弟清六、宮沢安太郎、岩田磯吉は岩手山麓に遊び、道に迷って野宿したという。
カワヤナギの花穂が白く飛ぶ季節だ。日中は、野馬の群れと戯れて、柏原を歩いたのだろう。
by nenemu8921 | 2008-03-24 12:11 | 植物 | Comments(6)

カタクリ

「兄さん。ヒームカさんはほんたうに美しいね。
兄さん、この前ね、僕、ここからかたくりの花を投げてあげたんだよ。
ヒームカさんのおっかさんへは白いこぶしの花をあげたんだよ。
そしたら西風がね、だまって持って行って呉れたよ。」
                        童話「楢ノ木大学士の野宿」


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カタクリ(ユリ科カタクリ属)片栗
比較的日光の差す落葉広葉樹林の林床に群生し、早春に下を向いた薄紫から桃色の花を咲かせる。春を告げる「スプリング・エフェメラル」の一つ。

カタクリは賢治作品にもしばしば登場する。
ヒームカさんは岩手郡玉山村にある姫神山のことというのが定説になっている。
この童話では蛇紋岩のきものを着ている女の子の山として描かれている。
が、姫神山は山頂は花崗岩で覆われた山であることから、前説への疑問もある。

今年初めてのカタクリ!! 千葉市郊外で見つけた。
昨日までほとんど開いていなかったという話だが、今日のあたたかさで、開花したらしい。
コブシもほころび始めた。
一挙に春が訪れたというかんじである。
by nenemu8921 | 2008-03-22 21:03 | 植物 | Comments(8)

すずめのかたびら

(略)
複雑な表情を雲のやうに湛へながら
かれたすゞめのかたびらをふんで、
さういふふうに行ったり来たりするのも
たしかに一度はいゝことだな
(略)
                   詩〔まあこのそらの雲の量と〕


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      スズメノカタビラ(イネ科イチゴツナギ属)雀の帷子
       いたるところに生える軟らかい1年草、または多年草。叢生し高さ5~25cm。
       葉はややまばら、花は年中咲く。


雀の帷子は虹の7色に透く頴(えい)の衿を重ね、光る羽毛のような雌蕊(めしべ)や、クリーム色の琴柱(ことじ)形の葯を垂らす。雀の帷子という名は、この薄ものの衿元の感じからついた名だろう。(「冬の草木」 新潮社)と、宇都宮貞子さんは書いている。
また、スズメノカタビラを小谷村(北安曇野郡)でコゾウナカセと呼ぶ。「取っても取っても出て来るで《小僧泣かせ》だいね」とSさんの話だった。とも言う。

あたたかくなって、わたくしの「下ノ畑」では、このスズメノカタビラやホトケノザ、オオイヌノフグリ、カラスのエンドウなどいっせいに伸び始めた。今日は雨が上がったら、草取りをしよう。
by nenemu8921 | 2008-03-20 12:37 | 植物 | Comments(8)
鵞黄の柳いくそたび、    窓を掃ふと出でたちて、

片頬むなしき郡長、     酸えたる虹をわらふなり。

                      文語詩「酸虹」



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シダレヤナギ(ヤナギ科ヤナギ属)枝垂柳。イトヤナギとも。
中国原産の落葉高木。古くから都市の街路樹としてよく用いられた。そのため、一般的にヤナギと言えばシダレヤナギを指すことが多い。しかし賢治作品に登場するのは楊(カワヤナギの方が断然多い。これはイーハトーブの環境に因るものであろう。
賢治のシダレヤナギは学名がSalix babylonicaであることから、バビロン柳と表記されることが多い。

c0104227_0201326.jpg雌雄異株である。下書稿では「牛酪(バタ)の粒噴く柳の糸」、「硫黄の粒噴きて」という表現もある。
まさにこんな情景だろうか。




















c0104227_0213530.jpgアップすれば、こんな花(雄花)である。
by nenemu8921 | 2008-03-19 00:12 | 植物 | Comments(8)

駅弁

食べたことありますか?
「銀河鉄道の夜」や「注文の多い料理店」を


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これが「銀河鉄道の夜」です。
先日新幹線の中で「トランヴェール」2008年3月号の冒頭のページで発見したもの。
JR東日本発足20周年を記念した駅弁。岩手県が生んだ偉人・宮沢賢治の代表作
「銀河鉄道の夜」をイメージしたものだそうです。
東北新幹線一ノ関駅にある弁当販売店、東京駅などで販売だそうです。
味見してみたいですね。


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こちらが「注文の多い料理店」です。
花巻駅で購入して新幹線の中でいただいたと思います。2002年6月10日の撮影でした。
里いものくるみ合え・こごみのごま和え、トウフハンバーグ・玉子焼き・舞茸・ぜんまいの煮物・大根のレモン漬・サラダ(季節の果物)・香の物と明記されていますが、肝心の中身の画像がありません。
パッケージに魅かれて購入したものの……、どういうわけか、味は覚えていません。
ヘルシーですね。現在でも、入手できるのでしょうか。

宮沢賢治という人もしばしば鉄道で旅をした人でしたが、当時、駅弁はあったのでしょうか。
花巻から上野まで、乗車時間は現在よりずっーと長かったわけですが。


追記
駅弁「銀河鉄道の夜」のパッケージはこちらです。駅弁というより、洋菓子みたいですね。
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また、フリーマガジン「中央公論Adagio」をご存知でしょうか?
2月号で宮沢賢治の特集をしていました。
都営地下鉄沿線の駅で無料配布している情報誌です。
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by nenemu8921 | 2008-03-14 22:15 | | Comments(12)

宮沢賢治の愛した鳥や植物


by nenemu8921