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原体剣舞連 → 剣舞

     dah-dah-dah-dah-dah-sko-dah-dah
こんや異装のげん月のした
鶏(とり)の黒尾を頭巾にかざり
片刃の太刀をひらめかす
原体村の舞手(をどりこ)たちよ
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生しののめの草いろの火を
高原の風とひかりにささげ
菩提樹皮(まだがは)と縄とをまとふ
気圏の戦士わが朋たちよ
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青らみわたる顥気(かうき)をふかみ
楢と椈(ぶな)とのうれひをあつめ
蛇紋山地に篝(かがり)をかかげ
                    
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ひのきの髪をうちゆすり
まるめろの匂のそらに
あたらしい星雲を燃せ
    Ho! Ho! Ho!

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夜風とどろきひのきはみだれ
月は射そそぐ銀の矢並

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打つも果てるも火花のいのち
太刀の軋りの消えぬひま
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詩「原体剣舞連」


画像は今年(2008)の賢治祭の折の、北上市の岩崎鬼剣舞保存会による剣舞。
詩「原体剣舞連」に描かれているのは、1917(大正6)年、秋、賢治が江刺郡土性調査の旅の途中、原体村で出会った上伊手剣舞だといわれている。
この剣舞に賢治はたいそう感動したようで、その後たびたび作品にも登場する。
by nenemu8921 | 2008-09-26 11:52 | イメージ | Comments(16)

ツェラ高原→天の野原

そのとき私は大へんひどく疲れてゐて、たしか風と草穂との底に倒れてゐたのだとおもひます。
その秋風の昏倒の中で、私は私の錫いろの影法師にずゐぶん馬鹿ていねいな別れの挨拶をやってゐました。
そしてたゞひとり暗いこけももの敷物(カーペット)を踏んでツェラ高原をあるいて行きました。
(略)
私は魚のやうにあへぎながら何べんもあたりを見まはしました。
たゞ一かけの鳥も居ず、どこにもやさしい獣のかすかなけはひさへなかったのです。
                                        童話「インドラの網」

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                            (クリックすると画像は大きくなります)

(略)
(風だよ、草の穂だよ。ごうごうごうごう。)
こんな語(ことば)が私の頭の中で鳴りました。
                                        童話「インドラの網」

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賢治祭や宮沢賢治学会の総会などがあり、またイーハトーブへ行ってきました。
大勢の友人や先生方にお会いし、少し興奮し、少し疲れました。
最後の一日、レンタカーで、ひとりで岩手山麓をドライイブしてきました。
そのとき見つけた光景です。広大な高原でした。草紅葉でしょうか。
コケモモに似たアカモノも赤い実をつけていました。
人にも、幸い熊にも出会いませんでした。
天の野原のイメージが頭をよぎりました。
by nenemu8921 | 2008-09-25 09:59 | イメージ | Comments(16)

スギゴケ

あるとき、三十疋のあまがへるが、一緒に面白く仕事をやって居りました。
これは主に虫仲間からたのまれて、紫蘇の実やけしの実をひろって来て
花ばたけをこしらへたり、かたちのいゝ石や苔を集めて来て立派なお庭を
つくったりする職業(しょうばい)でした。
(略)
殊にあらしの次の日などは、あっちからもこっちからもどうか早く来てお庭を
かくしてしまった板を起こして下さいとか、うちのすぎごけの木が倒れましたから
大いそぎで五六人来てみて下さいとか、それはそれはいそがしいのでした。(略)
                                      童話「カイロ団長」

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スギゴケ(スギゴケ科スギゴケ属)
茎が直立する茎葉体で、細めの葉がその周りにならんでいるようすが、スギの枝のように見える。地上に密生して群落を作る。さく柄は真っ直ぐに上に伸び、さく(胞子嚢)は円柱形にちかく、帽は上にとがっている。表面が下向きの長い毛に覆われていることが多い。
スギゴケは日本では比較的海抜の高い場所に見られ、身近に見られる"スギゴケ"の多くは、コスギゴケであることが多い。また、大型で10cmを越えるウマスギゴケやオオスギゴケが日本庭園によく使われている。

造園業を営むアマガエルたち。
彼らの視点から見れば、スギゴケは樹木に匹敵するのでしょうか。
by nenemu8921 | 2008-09-19 07:57 | 植物 | Comments(10)

盛岡高等農林学校

1915(大正4)年4月6日 盛岡高等農林学校農学科第2部に首席入学。
賢治19歳の春であった。
盛岡高等農林学校は後の岩手大学の農学部、農学科第2部は後の農芸化学科である。
1912(大正元)年、建てられたこの建物は、盛岡高等農林学校本館であった。

現在は国の重要文化財でもあり、岩手大学の農業教育資料館となっていて、誰でも見学することが出来る。

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入学式や卒業式などの全学行事は2階の講堂で行われた。
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敷地内には開校当時のままの門番詰め所もある。
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by nenemu8921 | 2008-09-17 00:15 | 場所 | Comments(10)

アケボノソウなど

サルオガセの森では、トリカブトやリンドウの花が満開だった。
他にもこんな植物が目に付いた。初めて出会った花たちです。

アケボノソウ(リンドウ科センブリ属)曙草
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アカバナ(アカバナ科あかばな属)赤花
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ミズギク(キク科オグルマ属)水菊
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by nenemu8921 | 2008-09-13 06:53 | 植物 | Comments(12)

サルオガセ

(略)
ああ、こいつは実に将軍が
三十年も北の方の国境の
深い暗い谷の底で
重いつとめを肩に負ひ
一度も馬を下りないため
将軍の足やズボンが
すっかり鞍と結合し
鞍は又馬と結合し
全くひとつになったのだ。
おまけにあんまり永い間
じめじめな処に居たもんだから
将軍の顔や手からは
灰色の猿おがせが
いっぱいに生えてしまったのだ
尤(もっと)もこのさるおがせには
九十九万人みなかかってゐた
(略)
                     童話「三人兄弟の医者と北守将軍」

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トゲサルオガセ?(サルオガセ科サルオガセ属)
サルオガセ(猿尾枷、猿麻桛)とは、「樹皮に付着して懸垂する糸状の地衣」(広辞苑)。霧藻、蘿衣ともいう。ブナ林など落葉広葉樹林の霧のかかるような森林の樹上に着生する。その形は木の枝のように枝分かれし、下垂する。サルオガセ科サルオガセ属の地衣類は、日本ではおよそ40種類確認されている。

サルオガセなるものがこの世に存在することを知ったのは、初めてこの童話を読んだときでした。
宮沢賢治という人はジャンルを越えてよくまあいろんなことを知っているなあと改めて感心しました。
実物を初めて見たのは2002年の秋、このイーハトーブの森ででした。樹齢数百年の古木に着床しています。このサルオガセに会いたくて、先月末、イーハトーブを訪れた際、盛岡から車で1時間半、区界高原の奥の湿原まで行ってみました。

あまりきれいな画像ではないので、広げるのは少々臆しましたが、サルオガセが生えるような森はこんな処です。
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地衣は菌類と違って、木を養分にし木を腐らせるということはなく、空気中の水分を直接吸収し、光合成をおこない、自活しているわけです。
つまりサルオガセは霧藻(キリモ)の名にふさわしく、霞を食して生きているわけで、人にたとえれば、仙人ともいえます。
「三人兄弟の医者と北守将軍」は、初期形は「北守将軍と三人兄弟の医者」というタイトルでした。
そのラストシーンで、将軍は王様のありがたい申し出を断って、郷里に帰って百姓になり、だんだんものを食わなくなり、秋の終わりごろ、どこへ行ったか、影もかたちもなくなってしまいます。それで仙人になったとかうわさされるわけで……、そんなことを思い出しながら、半日ゆっくり森を歩きました。
by nenemu8921 | 2008-09-12 10:21 | 植物 | Comments(6)

センニンソウ

 月は水銀 後夜(ごや)の喪主(もしゅ)
 火山礫(れき)は夜の沈殿(ちんでん)
 火口の巨きなゑぐりを見ては
 たれもみんな愕くはずだ
  (風としづけさ)
 いま漂着する薬師外輪山(ぐわいりんざん)
 頂上の石標もある
(略)

《雪ですか 雪ぢゃないでせう》
困ったやうに返事してゐるのは
雪でなく 仙人草のくさむらなのだ
さうでなければ高陵土(カオリンゲル)
(略)
                   詩「東岩手火山」


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センニンソウ(キンポウゲ科センニンソウ属)仙人草
日当りのよい山野の林の縁などに生えるつる性の半低木。和名は痩果の先につく白い長毛を仙人のヒゲにたとえたのではないかといわれるが、はっきりしないという。

作品は大正11年9月18日の日付がある。農学校の生徒を連れて岩手山に登山したときの印象を描いたもの。18日、午前3時ごろ、夜明けを待っているときのスケッチ。
後夜は夜半から朝までのこと。
月は水銀のように輝いて静にポツンと空にかかっているのは、後夜における喪主のように、厳粛で、そしてひっそりとさびしい感じである。
薬師外輪山は、薬師岳のこと。岩手山の標高は2038メートル。
高陵土(カオリンゲル)は、中国の有名な景徳鎮製の陶器の原料となる粘土を近くの山名にちなんで高陵、高嶺(中国語ではkaolin)土という。下にドイツ語の膠質の意gelを付けた賢治の造語。
標高2000メートル余の山頂付近にはセンニンソウは自生していまい。
また高陵土(カオリンゲル)に近い成分の粘土質が山頂付近に見られるかどうかも不明。
詩的レトリックだろうか。
どなたか、ご存知の方がいらしたらご教示願います。

「春と修羅」中の作品である。冒頭の2行は格調高い。
長い詩の一部しか紹介できないのは残念である。
by nenemu8921 | 2008-09-10 18:05 | 植物 | Comments(8)

藍→アイ

温く含んだ南の風が
かたまりになったり紐になったりして
りうりう夜の稲を吹き
またまっ黒な水路のへりで
はんやくるみの木立にそゝぐ
  ……地平線地平線
     灰色はがねの天末で
     銀河のはじが茫乎とけむる……
熟した藍や糀のにほひ
一きはすぎる風跡に
蛙の族は声をかぎりにうたひ
ほたるはみだれていちめんとぶ
(略)
              詩一五五〔温く含んだ南の風が〕

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アイ(タデ科タデ属)藍
タデ藍または藍タデともいう。中国原産の一年生植物。外形はイヌタデによく似ているが、アイは葉を傷めると傷口が藍色になる。茎は高さ50~70cmになり、よく枝分かれする。葉は幅の広い被針形で、インジコという色素を含んでいるため、藍色色素の原料となる。また、乾燥させて、解熱、殺菌の漢方薬としても用いられる。

作品は1924年7月5日の日付のある作品。夜の稲田をうたったもの。農学校の実習田の見回りを賢治はよく引き受けた。詩の後半は夜空の星の描写が続いている。
糀はこうじ。温くはぬくくと読む。


今年初めて、友人のG.Vさんからいただいた苗を育てた。いま私の下の畑で花が満開です。
by nenemu8921 | 2008-09-08 05:23 | 植物 | Comments(10)

こけもも うめばちそう

   ……向ふうではあたらしいぼそぼその雲が
      まっ白な火になって燃える……
ここはこけももとはなさくうめばちさう
かすかな岩の輻射もあれば
雲のレモンのにほひもする
                     詩一八一「早池峰山巓」

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コケモモ(ツツジ科スノキ属)苔桃
高山の岩地やハイマツの下に群落を作って生える常緑小低木。

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ツルコケモモの花

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ウメバチソウ(ユキノシタ科ウメバチソウ属)梅鉢草
山地の日当りのよい湿り気のあるところに生える多年草。花の形が天満宮の紋章として知られる梅鉢紋に似ることからの名前である。

輻射は車の輻(や)のように周囲へ放出すること。放射。
この作品は1924(大正13)年、8月17日の日付のある作品。コケモモは花でしょうか、実でしょうか。ウメバチソウも咲き始めた頃でしょうか。

早池峰の山上で雲のレモンの匂いを感じてみたいですね。
by nenemu8921 | 2008-09-06 08:19 | 植物 | Comments(10)

いはかがみ→イワカガミ

みんなは木綿(ゆふ)の白衣をつけて
南は青いはひ松のなだらや
北は渦巻く雲の髪
草穂やいはかがみの花の間を
ちぎらすやうな冽たい風に
眼もうるうるして息(い)吹きながら
踵(くびす)をついで攀ってくる
九旬にあまる旱天(ひでり)つゞきの焦燥や
夏蚕飼育の辛苦を了へて
よろこびと寒さとに泣くやうにしながら
たゞいっしんに登ってくる
(略)                      詩一八一「早池峰山巓」

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イワカガミ(イワウメ科イワカガミ属)岩鏡
山地の岩場や高山の草地などに生える常緑の多年草。葉は長い柄をもち、根ぎわに群生する。葉身は円形で革質、表面に鏡のような光沢があることからのネーミング。4~7月に高さ10cmほどの花茎に総状花序をつけ、淡紅色の花を3~6個開く。
 この花はなかなかうまく撮れない。葉の表情が出ている画像がなくて残念です。

九旬の旬は順の意で、1ヶ月を3旬とする。つまり10日間で、9旬は90日のこと。
夏蚕飼育は夏の養蚕作業のことか。
by nenemu8921 | 2008-09-05 10:42 | 植物 | Comments(10)

宮沢賢治の愛した鳥や植物


by nenemu8921