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鈴蘭の実

(略)
次の日ホモイは、お母さんに云ひつけられて笊を持って野原に出て、鈴蘭の実を集めながらひとりごとを云ひました。
「ふん、大将が鈴蘭の実を集めるなんてをかしいや。誰かに見つけられたらきっと笑はれるばかりだ。狐が来るといゝがなあ。」
すると~(略)
                                            童話「貝の火」

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スズラン(ユリ科スズラン属)鈴蘭
山地や高原の草地に生える多年草。4~5月に長さ5~6cmの花序に5~10個の鐘状の花を下向きに開く。10~11月ごろ赤い実をつける。

画像は私の「下ノ畑」のもの。ドイツスズランとよばれる園芸種である。
野生のスズランは岩手山麓でも見たことがない。
賢治作品にはきみかげそうという名前でもたびたび登場し、その頃はたくさん自生していたようだ。
花は以前紹介した。よかったらこちらをどうぞ。
by nenemu8921 | 2008-10-31 00:17 | 植物 | Comments(8)

いちゐ →イチイ

(略)
けれどもジョバンニは手を大きく振ってどしどし学校の門を出て来ました。
すると町の家々ではこんやの銀河の祭りにいちゐの葉の玉をつるしたりひのきの枝にあかりをつけたりいろいろ仕度をしてゐるのでした。
(略)
                          童話「銀河鉄道の夜」〔活版所〕

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画像提供は阿出川栄次さんです。

イチイ(イチイ科イチイ属)一位
寒い地方に多い常緑針葉樹。高さ10~20mになる。葉は扁平の線形で普通2列に水平につく。花期は3~4月。雌花は9~10月に熟すと、肉質の赤い仮種皮(かしゅひ)が種子を覆う。仮種皮は食べられるが種子は有毒。別名オンコ、アララギ。
東北では庭先によく見かける庭園樹でもある。

「銀河鉄道の夜」の銀河の祭、ケンタウルス祭は、クリスマスや復活祭を連想させる。
この一節もリースや ライトアップされたツリーをおもわせる。
が、「銀河鉄道の夜」の世界は、舞台は「イタリアあたり」で、季節は秋である。お盆や精霊送りのイメージとも重なっている。
by nenemu8921 | 2008-10-28 08:51 | 植物 | Comments(16)

山葡萄

(略)
どこからか葡萄のかをりがながれてくる
東は青い高原の縞
かゞやかに陽は醸造されるけれども
この谷の霧の中でだって
何軒かの小さな部落がある
その人たちが去年の山葡萄で
こっそりつくった酒かもしれない
  ……けれどもどうして
     この谷の底の人たちには
     いくら山葡萄をとっても
     それをこさへるひまなどはない……
(略)
                    詩「朝日が青く」下書稿(一)手入れ形

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ヤマブドウ(ブドウ科ブドウ属)山葡萄
主として東アジアに分布する野生のブドウで、日本では山地に自生する。画像①②は6月末のもので、葡萄の花である。画像③は9月はじめのもの。実は真っ黒に熟すという。
生食ではおいしいという人と、すっぱいという人といろいろである。
最近では生のぶどうジュースや、ブドウジャム、ワインなどを製造して、観光地でみやげ物として売っている。干しブドウもあった。
賢治の時代は、このヤマブドウで自家製のお酒をこっそり作る人が多かったが、密造酒である。

作品は種山ヶ原周辺の部落を訪れた時のもの。
この詩は、「~~葡萄のかおりは、葡萄でなくて栗の花だ」とつづき、
最終形では、山葡萄でつくった酒云々は削除されてしまうが、
賢治作品には密造酒をテーマにした童話もある。
by nenemu8921 | 2008-10-26 22:39 | 植物 | Comments(8)

ツツドリ

こらはみな手を引き交(か)へて、   巨(おお)けく蒼きみなかみの
つつどり声をあめふらす、       水なしの谷に出で行きぬ。

厩(うまや)に遠く鐘鳴りて、       さびしく風のかげろへば、
小さきシャツはゆれつゝも、       こらのおらびはいまだ来ず。
                                  
                          文語詩〔こらはみな手を引き交へて〕

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画像提供は阿出川栄次さんです

ツツドリ(ホトトギス科)
夏鳥として九州以北の山地の林に渡来し、秋は平地の桜の木の毛虫をよく食べに来る。
主にセンダイムシクイに托卵。ポポ、ポポと続けて鳴く。カッコウに似ているが、下面の斑は太くて粗く、目は暗色。

ツツドリが鳴く外山の初夏。子ども達は誘い合って、谷へ遊びに行った。農家の庭先には洗濯された子どもらのシャツだけがゆれている。
子どもらの不在ばかりが気になるのは、その母の視点からのスケッチだからである。
この作品は神隠しがテーマだとする読解もあった。
ツツドリが雨降らすほどに鳴けば、不吉な雰囲気が盛り上がる。

この夏も岩手山麓や外山周辺でツツドリの声を聞く機会はあったが、いつも姿は確認できない。むしろ、渡去途中で首都圏周辺の平地で見かけることが多い。この画像も千葉市郊外の自然公園での撮影だという。秋には彼らは特徴のある鳴声を聞かせてくれないから、よく似たカッコウやホトトギスとの識別がたいへんである。

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by nenemu8921 | 2008-10-23 21:29 | 鳥・動物 | Comments(14)

キバナツノゴマ

これは何ですか?とよく近隣の人から聞かれる植物です。これが花です。今年8月末の画像です。
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葉はフキの葉のように大きいのですが…。
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そしてこれが実です。昨日の画像。
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緑の皮が枯れて剥けるとこんな実が出てきます。15cmほどの大きさです。
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キバナツノゴマ(ツノゴマ科ツノゴマ属)黄花角胡麻
南米原産の一年草。別名悪魔の爪。
1989 年に食虫植物であることが判明。
葉や茎、花の表面に短い腺毛がはえ、粘液を出す。よく見ると、小さな虫が粘着されて死んでいる。
でも匂い(香りではなく)がちょっと…ニガテです。

以前、房総の鋸南町に水仙の花を見に行ったとき、形が面白かったので、この実をいくつか買って帰りました。¥100でした。
そのときはリースに飾って楽しんだりしたのですが、こぼれた種を畑にまいたら、こんな花が咲いたというわけです。
名前がなかなか分かリませんでしたが、このほどようやく判明しました。

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by nenemu8921 | 2008-10-21 23:55 | 私の「下ノ畑」 | Comments(14)

トウワタ

私の下の畑で、今朝見つけました。何だと思いますか?
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そうです。トウワタです。
トウワタ(ガガイモ科トウワタ属)唐綿。
アフリカ、南北アメリカ、西インド諸島原産の多年草。和名をヤナギトウワタとも。
園芸店では学名のままのネーミングでアスクレピアスという名でも流通している。
夏から秋にかけて花を咲かせ、花後、結実して白い綿状の冠毛を付けた種子ができる。
トウゴマもトウワタも毒草。ご用心下さい。
唐胡麻、唐綿…、江戸期に入ってきたものは、中国産でなくても、みな唐~~とつくのは面白いですね。
童話「風野又三郎」ではクサワタ・草綿という名で、「鹿踊りのはじまり」ではゴマザイという地方名でガガイモが登場しますが、いずれも花ではなく、この綿毛のイメージが語られています。よく似ていますね。
⑤が花です。今も咲いています。
④が若い莢。
③②①はじけるとこんな風になります。
by nenemu8921 | 2008-10-20 01:52 | 私の「下ノ畑」 | Comments(12)

たうごま←トウゴマ

(略)
   ……砂丘のなつかしさとやはらかさ
      まるでそれはひとりの処女のやうだ……
はるかなはるかな汀線のはてに
二点のたうごまの花のやうな赤い火もともり
二きれひかる介のかけら
雲はみだれ
月は黄金の虹彩をはなつ
               詩「牛」下書稿(一)手入れ形「海鳴り」

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トウゴマ(トウダイグサ科)唐胡麻。別名ヒマ(蓖麻)
アフリカ原産の1年草(熱帯圏では多年草)。 
種からとれるひまし油(蓖麻子油)は下剤,印刷インキなどに使われる。
大きな葉は掌状に 5 ~ 11 に中裂し,鋸歯がある。長さ約 20 センチの直立した総状花序をつけ,上部には雌花,下部には雄花がつく。
種子は有毒。画像は雌花。

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左側の黄色い小さな花のかたまりが雄花。↑

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左の青い実が若い種子。そうです。オオオナモミに似ていますね。↑

1924年5月22日の日付がある作品。花巻農学校の生徒を引率して北海道修学旅行へ出かけた折の作品。苫小牧の製糸工場を見学した後、夜の海岸でのスケッチ。
戦前には、トウゴマはひまし油を採るために栽培する農家も珍しくなかった。
介(カイ)は、かたいことの意で、転じて甲羅、貝殻、よろいなどの意もあり、ここでは貝殻であろう。
トウゴマの花はもちろん雌花のことだろう。
こうして花を確認してみれば、海に灯った赤い火は小さな漁船でもあろうか。
この作品は手を入れられて、後に文語詩「牛」に改稿される。
by nenemu8921 | 2008-10-17 18:32 | 植物 | Comments(8)

ダリヤ→ショウ

(略)
更に深赤第三百五、
この花こそはかの窓の外
今宵門並に燃す熱帯インダス地方
たえず動ける赤い火輪を示します
(略)
                詩ノート「ダりヤ品評会席上」

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ダリア(キク科ダリア属)
三番目の花は赤い花であろうが、どんな種類か分からない。こんなイメージでしょうか。

この作品を改稿した文語詩「萎花」では、「カクタス、ショウをおしなべて」という詩句が見られる。

ショウ咲きとは、ボール咲きの一種であり、完全八重咲きで、小花はらせん状に配列して先端が円く、筒状ないし全長の2分の1以上が内巻きする。頭花はほぼ球状を呈している。
ポンポン咲きは、ボール咲きの小輪のものだという。
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画像は最近のポンポン咲きのダリアである。
ポンポンダリアという名前は懐かしい。
by nenemu8921 | 2008-10-14 23:50 | 植物 | Comments(4)

カクタス→ダリア

(略)
これに次では第百四十
これは何たるつゝましく
やさしい支那の歌妓であろう
それは焦がるゝ葡萄紅なる情熱を
各カクタスの弁の基部にひそめて
よぢれた花の尖端は
伝統による奇怪な歌詞を叙べるのであります
更にその雪白にして尖端に至って寧ろ見えざる水色を示すものは
その情熱の清い昇華を示すものであります
                     詩ノート「ダリヤ品評会席上」

カクタス咲きダリア
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カクタス咲きとは、花びらが外側に捲き、剣のような様相を見せる咲き方のダリアの花型。
カクタスの名の由来は、とがった花弁がサボテンの花に似ていたことから付けられ、原種に近い「ダリア・ジュアレジー」から誕生したと言われる。
宮沢賢治はダリアの花に関してもかなり専門的な知識を持っていたようである。
カクタス咲きは、最近ではその花弁の形状により「ストレート・カクタス」「インカーブド・カクタス」「セミ・カクタス」の3つに分けられる。
画像は最近のカクタス咲きのダリア。

追記
旅行先で、思いがけず、ダリアの名花が咲き競うガーデンに立ち寄る機会があった。
画像を新しくした。他にもよかったら、続きをどうぞ。

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by nenemu8921 | 2008-10-10 09:20 | 植物 | Comments(16)

デコラチーブ→ダリア

略)
第百一号これはまことに一位を得たのでありますが
かつその形はありふれたデコラチーブでありますが
更に仔細にその色を看よ
そは何色と名づけるべきか
赤、黄、白、黒、紫、褐のあらゆるものをとかしつつ
ひとり黎明のごとくゆるやかにかなしく思索する
この花にもしそが望む大なる爆発を許すとすれば
或いは新たな巨大な科学のしばらく許す水銀いろか
或いは新たな巨大な信仰のその未知な情熱の色か
容易に予期を許さぬのであります


デコラティブ咲きダリア
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まことにこの花に対する投票者を検しましても
真摯なる労農党の委員諸氏
法科並びに宗教大学の学生諸君から
クリスチャンT氏農学校長N氏を連ねて
云はば一千九百二十年代の
新に来るべき世界に対する
希望の象徴としてこの花を見たのであります(略)
                    詩ノート 一〇八六 「ダリヤ品評会席上」

デコラティブ咲きダリア
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ダリア(キク科ダリア属)
デコラチーブ→デコラティブとは、ダリアの咲き方の分類である。
デコラティブ咲きとは八重咲きで、中央の筒状花は見えない。舌状花の花冠は幅広く平らかやや湾曲する。捩れることもある。いわゆる一般的なダリアである。
ダリアはメキシコ原産の多年草。18世紀にダリアの原種がメキシコからスペインへ送られ、スウェーデンの植物学者アンドレス・ダール氏にちなんで名付けられたという。
また日本へは江戸時代末期にオランダから持ち込まれ、昭和期には家庭の庭先を飾る花として普及した。和名は天竺牡丹。

作品は、詩ノートに書かれたものだが、後に手を入れられて文語詩「萎花」となる。
作品の日付のある昭和2年の夏に、じっさいにダリヤ品評会があったかどうか不明。
資料がない。どなたか、ご存知の方がいらしたらご教示願いたい。
画像はデコラティブ咲きの最近の品種である。
by nenemu8921 | 2008-10-07 09:03 | 植物 | Comments(10)

宮沢賢治の愛した鳥や植物


by nenemu8921