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あやしき蜘蛛

(略)
私の父はちかごろ毎日申します。
「きさまは世間のこの苦しい中で農林の学校を出ながら何のざまだ。何か考へろ。
みんなのためになれ。錦絵なんかを折角ひねくりまわすとは不届千万。
アメリカへ行かうのと考へるとは不見識の骨頂。
きさまはたうとう人生の第一義を忘れて邪道にふみ入ったな。」
おゝ、邪道 O’JADO! O’JADO! 私は邪道を行く。見よこの邪見者のすがた。
(略)
見よ。
このあやしき蜘蛛の姿。
あやしき蜘蛛のすがた。
(略)
                            書簡154 保阪嘉内あて
                            大正8(1919)年 8月20日前後 封書

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ジョロウグモ(コガネグモ科)秋の蜘蛛の代表。人家周辺に多い。
(あやしき蜘蛛はジョロウグモと明記されているわけではありませんが…)

この時期の賢治は、盛岡高等農林学校の研究生として、稗貫郡の土性調査にかかわっていた。家から独立して東京で人造宝石製造をしたいという賢治の願いは、父に許されず、鬱々とした日々だった。質・古着商という家業になじむことが出来ず、自立することも出来ず、懊悩するばかりだった。
青年団指導者講習受講のため、上京していた高農時代の友人保阪嘉内にあてたこの手紙には、まさに発狂前夜のような、その心情が赤裸々に記されている。
賢治が家を出て国柱会の門を叩くのは大正10年の1月である。

錦絵は浮世絵のこと。賢治の浮世絵コレクションは有名である。

保阪嘉内に関してはこちらをどうぞ。

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by nenemu8921 | 2008-11-28 10:36 | イメージ | Comments(9)

いてふ→銀杏

(略)
東の空が白く燃え、ユラリユラリ揺れはじめました。
おっかさんの木はまるで死んだやうになってじっと立ってゐます。
突然光の束が黄金(きん)の矢のやうに一度に飛んで来ました。
子供らはまるで飛びあがる位輝きました。
北から氷のやうに冷たい透きとほった風がゴーッと吹いて来ました。
「さよなら、おっかさん。」「さよなら、おっかさん。」(略)
                              童話「いてふの実」


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イチョウイチョウ科イチョウ属)公孫樹、銀杏
古い時代に渡来し、初めは社寺によく植えられたが、現在では街路樹としても多い。
高さ30~45mになる落葉高木。雌雄異株で、秋、雌木にはギンナンが実る。

おっかさんのような銀杏の大木に出会った。もう子供らは旅立った後だった。
おっかさんの扇形の黄金の髪の毛は散って散って、地面を黄金色のカーペットで覆っていたが、まだまだ無尽蔵のように見えた。

以前、いてふの実、子供たちを紹介したこちらをどうぞ。
by nenemu8921 | 2008-11-24 20:49 | 植物 | Comments(21)
(略)
空気は澄みきって、まるで水のやうに通りや店の中を流れましたし、街燈はみなまっ青なもみや楢(なら)の枝で包まれ、電気会社の前の六本のプラタヌスの木などは、中に沢山の豆電球がついて、ほんたうにそこらは人魚の都のやうに見えるのでした。
(略)

                                  童話「銀河鉄道の夜」
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プラタナス(スズカケノキ科スズカケノキ属)鈴掛の木
スズカケノキ科スズカケノキ属に属する植物の総称。街路樹・庭園樹として広く用いられている。
プラタナス(Platanus)の語源は、ギリシャ語の「platys」(広い)から。大きな葉に由来する。賢治の表記、プラタヌスはドイツ語読みだという。
ヨーロッパ南東部からアジアが原産というこのプラタナスが日本に導入されたのは明治末。
日比谷公園のプラタナスの大木は1904(明治37)年に植栽されたものだという。

宮沢賢治にとっても、異国情緒を感じさせる植物だったのだろう。
このボンボンのような実がお気に入りだったようで、詩「高架線」では、グリーン・ランターンと呼んでいる。
「銀河鉄道の夜」は、天上を旅する物語だが、地上の植物が実に数多く登場する。

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by nenemu8921 | 2008-11-21 20:31 | 植物 | Comments(13)
イーハトーブの友から木枯らしの便りが届きました。
もうじき雪です。
木の実も草の実も大地で眠りにつきます。

この秋に出会った木の実、草の実を続けます。

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スズメウリ(ウリ科スズメウリ属)
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カラスノゴマ(シナノキ科カラスノゴマ属)
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ヒヨドリジョウゴ(ナス科ナス属)
みな鳥の名前に関係しているのも面白い!

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タンキリマメ(マメ科タンキリマメ属)

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by nenemu8921 | 2008-11-19 09:27 | その他 | Comments(14)
友人のBellaさんから電話があって、久しぶりに出会って、「下の畑」周辺を
ご一緒にデジブラしました。
短い時間でしたが、楽しかった。
木の実、草の実、いのちの実!!そんな季節ですね。今日見かけた実たち。

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イシミカワ(タデ科イヌタデ属)

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ヘクソカズラ(アカネ科ヘクソカズラ属)

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ノバラ

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ウド(ウコギ科タラノキ属)

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ゲンノショウコ(フウロソウ科フウロソウ属)ミコシグサとも。

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オニドコロ(ヤマノイモ科ヤマノイモ属)だと思うのですが。
by nenemu8921 | 2008-11-17 21:47 | その他 | Comments(10)

ダアリア複合体←電燈

(略)
黒く巨きな松倉山のこつちに
一点のダアリア複合体
その電燈の企画(プラン)なら
じつに九月の宝石である
その電燈の献策者に
わたくしは青い蕃茄(トマト)を贈る
(略)
   (オルゴールをかけろかけろ)
(略)
             詩「風景とオルゴール」


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皇帝ダリア(キク科ダリア属)皇帝ダリア(木立ダリア)
中南米原産。丈2~5mにもなるので木立ダリアの名もある。短日性で晩秋に咲く。


「風景とオルゴール」は、1923(大正12)年9月16日の日付の作品。花巻電鉄が花巻から大沢温泉まで開通したのはこの年の5月だった。花巻の西北を流れる豊沢川に沿って五間森方面から松倉山を左手にして、夕方帰路に向かう途中のスケッチか。
その沿線に初めて設置された街灯を詩人は、華やかなダリアの花束、或いは一つの茎に花がたくさん咲きそろったように見えるダリアのようだとして称えているのである。
こんな立派な電燈を発案して実行した人には敬意を表して、新鮮な青いトマトを捧げたいという賢治特有の表現だ。
オルゴールは風が電線を鳴らす音であろうか。風よ吹け吹け。

当時は日本では見ることの出来なかった皇帝ダリアだが、いかにもこのダアリア複合体のイメージに似つかわしいと思って添えてみた。
電気もトマトも、この時代、新鮮な風物であり、賢治のお気に入りだった。

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by nenemu8921 | 2008-11-16 02:35 | イメージ | Comments(14)

シジュウカラ


(略)
      ……きのふまでは
         四十雀をじぶんで編んだ籠に入れて
         づしだまの実も添へて
         町へもってきてやったりした、
         わり合ひゆたかな自作農のこどもだ……
(略)
                         詩「しばらくだった」

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画像提供はfieldnoteさんです。

シジュウカラ(シジュウカラ科)四十雀
全国に留鳥としてすみ、木の多い住宅地でも普通に見られる。秋冬には他種との混群も作る。地上で落ち葉をのけて下の餌を探すことも多い。

現代では野生の小鳥を飼うことは出来ないが、昭和の中頃までは、身近な小鳥を飼い鳥にすることは珍しくなかった。メジロ、ウグイス、ホオジロ、マヒワとともに、シジュウカラも飼われていたようだ。
づしだまの実は、ジュズダマのこと。餌のつもりで添えたのであろう。
しかし、ジュズダマの実をシジュウカラが食べるだろうか。

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づしだま→ジュズダマ(イネ科ジュズダマ属)数珠玉
水辺に生育する大型のイネ科植物。ハトムギの原種。インドなどの熱帯アジア原産で、日本へは古い時代に入ったものと思われる。
脱落した実は、乾燥させれば長くその色と形を保つ。かつてはお手玉を作るのに、よく用いられた。
by nenemu8921 | 2008-11-12 19:01 | 鳥・動物 | Comments(12)
(略)
そのうちたうたう秋になりました。
樺の木はまだまっ青でしたが、その辺のいのころぐさはもうすっかり黄金いろの穂を出して、
風に光り、ところどころすゞらんの実も赤く熟しました。
(略)
                                        童話「土神ときつね」

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エノコログサ(イネ科エノコログサ属)

秋が深まると、エノコログサのその細い葉も草紅葉となり、穂はむらさき味をおびて、夕日に光って、一層美しい。

すずらんの実はすこし前にご紹介した。
by nenemu8921 | 2008-11-09 22:56 | 植物 | Comments(10)

カラスウリ

光波測定の誤差から
から松のしんは徒長し
柏の木の烏瓜ランタン
   (ひるの鳥は曠野に啼き
    あざみは青い棘に遷る)
(略)
              詩「滝沢野」


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カラスウリ(ウリ科カラスウリ属)烏瓜
林の縁などに見られる多年草のつる草。まきひげで他の木などにからみつく。
以前にも「銀河鉄道の夜」の一節とともに紹介した。こちらをどうぞ。

詩「滝沢野」は、岩手県岩手郡滝沢村の原野をうたったもの。
柏の木の烏瓜ランタンとは、柏の木にカラスウリがからんで、その赤い実がさがっているのを手さげランプのように見立てているのである。
lantern(英)は、カンテラ、ランタン、手さげランプ

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by nenemu8921 | 2008-11-06 20:30 | 植物 | Comments(16)

めくらぶだう→ノブドウ

(略)その城あとのまん中に、小さな四っ角山があって、上のやぶには、めくらぶだうの実が、虹のやうに熟れてゐました。
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(略)
そのかすかなかすかな日照り雨がはれましたので、草はきらきら光り、向ふの山は明るくなって、大へんまぶしさうにわらってゐます。
そっちの方から、もずが、まるで音符をばらばらにしてふりまいたやうに飛んで来て、みんな一度に、銀のすゝきの穂にとまりました。
めくらぶだうは感激して、すきとほった深い息をつき、葉から雫をぽたぽたこぼしました。
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(略)めくらぶだうの青じろい樹液は、はげしくはげしく波うちました。
さうです。今日こそ、たゞの一言でも、虹とことばをかはしたい、丘の上の小さなめくらぶだうの木が、よるのそらに燃える青いほのほよりも、もっと強い、もっとかなしいおもひを、はるかの美しい虹に捧げると、……(略)
                       童話「めくらぶだうと虹」

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ノブドウ(ブドウ科ノブドウ属)野葡萄
山地や丘陵地、野原や河原にごくふつうに生える落葉つる性木本。茎の基部は直径4cmほどになる。葉と対生して二俣に分かれた巻きひげがある。
葉は互生し、直径4~13cmのほぼ円形、ふつう3~5裂する。7~8月、茎先に葉に対生して花序を出し、淡緑色の小花を開く。液果は球形で、淡緑色から紫色、碧色となる。

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by nenemu8921 | 2008-11-04 22:53 | 植物 | Comments(12)

宮沢賢治の愛した鳥や植物


by nenemu8921