<   2009年 04月 ( 17 )   > この月の画像一覧

雲雀→ヒバリ

(略)
氷ひばりも啼いてゐる
そのすきとほつたきれいななみは
そらのぜんたいにさへ
かなりの影きやうをあたへるのだ
 
c0104227_19272368.jpg
画像提供はfieldnoteさんです

(略)
どうだこの天頂の遠いこと
このものすごいそらのふち
愉快な雲雀もたうに吸ひこまれてしまつた
かあいさうにその無窮遠の
つめたい板の間にへたばつて
瘠せた肩をぷるぷるしてるにちがひない
(略)
                    詩「真空溶媒」
 
c0104227_19333673.jpg

c0104227_19331331.jpg
画像提供はfieldnoteさんです 

ヒバリ(スズメ目ヒバリ科)雲雀
主に留鳥。北海道から九州までの各地の農耕地、河川敷にふつうに生息。
暖地では1月からさえずっているものが見られ、3月に入ると繁殖が始まる。
さえずりは8月ごろまで続く。

賢治作品にヒバリはたびたび登場する。その多くは鳴き声と空高く上がる姿が捉えられている。
賢治は、その鳴き声はすきとおったきれいななみで、そら全体へ影響を与えると云い、
漱石は、『草枕』で、その声を「方幾里の空気が一面に蚤に刺されていたたまれないような気がする」と書いている。
ここ「真空溶媒」の世界では、そのさえずりが周囲の世界を溶解させて幻想へいざなう装置になっている。
また、ヒバリは透明なエレベーターで運ばれるように空高く上がる。さえずりながら垂直に上がる。
じっと目を凝らして見つめると、それは小さな点になり、やがて天頂に吸い込まれたように見えなくなってしまう。
天上に近づくものの行く末は詩人に不吉な想像を促したようである。

以前にヒバリの容貌についての描写を紹介したこちらをどうぞ。


    
by nenemu8921 | 2009-04-29 19:27 | 鳥・動物 | Comments(4)

銀杏→イチョウ

(略)
おれは新しくてパリパリの
銀杏(いてふ)なみきをくぐってゆく
c0104227_21434768.jpg

その一本の水平なえだに
りっぱな硝子のわかものが
c0104227_21445196.jpg

もうたいてい三角にかはつて
c0104227_214544100.jpg

そらをすきとほしてぶらさがつてゐる
c0104227_2146632.jpg

けれどもこれはもちろん
そんなにふしぎなことでもない
おれはやっぱり口笛をふいて
大またにあるいてゆくだけだ
いてふの葉ならみんな青い
c0104227_21464527.jpg

冴えかへつてふるえてゐる
いまやそこらはalcohol瓶のなかのけしき
(略) 
                    詩「真空溶媒」


パリパリの若葉は確かに三角に見える。
雨上がりの朝、近所の寺院の境内で出会った景色はまさに真空溶媒の世界だった。
三角の若者が扇形になるのは数日のタイミングである。
おっかさんの扇形の黄金の髪の毛(いてふの実)は以前紹介した。 こちらをどうぞ。

More つづきを読む
by nenemu8921 | 2009-04-27 18:42 | 植物 | Comments(16)

たけのこ

山しなのたけのこやぶのそらわらひうすれ日にしてさびしかりけり
                                歌稿A 257
山しなの
たけのこばたのうすれ日に
そらわらひする
商人のむれ
                               歌稿B 257

c0104227_204125100.jpg

c0104227_20415920.jpg


大正5年3月19~31日、賢治は盛岡高等農林学校農学科第二学年修学旅行に参加した。
東京、京都、奈良、伊勢、箱根をめぐる旅行だった。
3月23日。京都駅着午前4時9分。東西本願寺を訪れ、桂橋際の万甚楼に6時到着。
9時府立農林学校、農事試験場を見学。ついで竹林の筍栽培を見、のちに嵐山、金閣寺を
見物。帰途衣笠村役場に寄り農業状態をきき、北野神社に詣り、三条の旅館西富家に宿泊。
と、新校本全集第16巻の年譜にある。
が、《宮沢賢治詩の世界》では、この記述に疑問を呈している。関心のある方はこちらをどうぞ。

画像は山科でもなく、京都洛西地区でもなく、千葉県鎌ヶ谷市の友人宅の竹林です。
by nenemu8921 | 2009-04-26 20:40 | 植物 | Comments(4)
(略)
「お父さんやきくよねえさんはまだいろいろお仕事があるのです。
けれどももうすぐあとからいらっしゃいます。
それよりも、おっかさんはどんなに永く待ってゐらっしゃったでせう。
わたしの大事なタダシはいまどんな歌をうたってゐるだらう、雪の降る朝みんなと手を
つないで、ぐるぐるにはとこのやぶをまはってあそんでゐるだらうかとかんがえたり
ほんたうに待って心配してゐらっしゃるんですから、早く行っておっかさんにお目にかかりませうね。」
(略)
                                         童話「銀河鉄道の夜」

c0104227_005429.jpg

c0104227_012882.jpg

ニワトコ(スイカズラ科ニワトコ属)接骨木
高さ3~5mの落葉低木。3~4月枝先に円錐花序を出し、淡白色の小花を多数つける。
果実は長さ3~5mmの卵状形で紅く熟す。

にわとこやぶ、接骨木藪、にわとこの木という表現は、たびたび登場する。
人家の庭先のイメージであるが、全国の山野に自生する。
雪の降る朝のにわとこのやぶとは、花も葉も実も落ちた状態だろう。
最近のガーデニングでは、人気がないのか、見かけることが少なくなった。

More つづきを見る
by nenemu8921 | 2009-04-25 00:01 | 植物 | Comments(8)

まるめろ

けさはじつにはじめての凛々しい氷霧(ひょうむ)だったから
みんなはまるめろやなにかまで出して歓迎した
                      詩「イーハトーブの氷霧」


c0104227_1310242.jpg
マルメロ(バラ科マルメロ属)
中央アジア原産の落葉高木。カリンやボケに近縁な果樹。
一部の地域ではこれをカリンと呼んでいるところもある。果実は芳香があるが強い酸味があり、
硬い繊維質と石細胞のため生食はできない。
灰色~白色の軟毛(大部分は熟す前に取れる)でおおわれている。
花は春、葉が出た後に咲き、大きさは5cm、色は白またはピンクで5枚の花弁がある。

賢治のまるめろは、多くはその芳香のイメージで登場する。
この作品も、初冬の季節に空気中に漂うマルメロの香りが、新しい季節の到来を、イーハトーブのおだやかな時の流れを祝しているのであろう。

 つづきを読む
by nenemu8921 | 2009-04-22 13:25 | 植物 | Comments(11)

楮→コウゾ

膠(にかわ)とわずかの明礬(みょうばん)が
   ……おゝ、その超絶顕微鏡的に
   微細精巧の億兆の網……
まっ白な楮(こうぞ)の繊維を連結して
湿気によってごく敏感に増減し
気温によっていみじくいみじく呼吸する
長方形のごくたよりない一つの薄い層をつくる  
   いまそこに
   あやしく刻みいだされる
   雪肉乃至象牙のいろの半肉彫像
(略)
                         詩「浮世絵展覧会印象」


c0104227_1749656.jpg
コウゾ(クワ科)高さ2~5mになる落葉低木。本州から九州までの山野に自生する。製紙材料として古くから利用された。
雌雄同株。赤い糸の様なものが集まって見えているのが雌花。その下の塊が雄花の蕾。このあとキイチゴに似た赤い果実をつけるという。

宮沢賢治は浮世絵のコレクターとしても知られている。
この作品は昭和3年6月上京した賢治が、大島の伊藤兄妹を訪ねたあと、上野公園内府立美術館で「御大典記念徳川時代名作浮世絵展覧会」(報知新聞社主宰)を見た印象を綴ったもの。
浮世絵は楮(こうぞ)を原料とする手漉きの和紙に刷られる。
雪肉は、積雪の白い肌を肉感的に捉えた賢治の造語らしい。
浮世絵の情緒的なイメージも硬質な印象に変わってしまうところが面白い。
東京ノート中の1篇である。

千葉市青葉の森で思いがけず楮の花を見つけた。
by nenemu8921 | 2009-04-21 18:24 | 植物 | Comments(14)

下ノ畑 4月の今 ②

遅ればせに植えつけたメークインも芽を出し、スナップエンドウが実をつけ始めました。
冬を越した赤タマネギは間引きしなくてはなりません。
毎年苗で購入するキュウリもトマトも、今年は種を蒔いてみました。
ギンドロが若葉を風に揺らせ、ブルーベリーが控えめな花をつけ、
バラはまっかな棘を造形しています。
わが「下ノ畑」は花と野菜と野草と入り混じっています。
「ほう すぎなを麦の間作ですか」   詩「習作」 
そんな賢治の詩句が浮かんできます。

ブルーベリー(ツツジ科スノキ属)の花です。
c0104227_19515043.jpg


こんな紅い棘は初めて見ました。
真紅の一重の花を咲かせるバラですが名前は不明。
c0104227_1940436.jpg


スナップ・エンドウ(マメ科)の花は昆虫の顔のように見えません?
c0104227_1944371.jpg


シンボルツリーのギンドロ、若葉は、なんだか眠そうに見えます。
c0104227_19564453.jpg


More つづきを見る
by nenemu8921 | 2009-04-19 12:08 | 私の「下ノ畑」 | Comments(4)

下ノ畑 4月の今 ①

ソメイヨシノも散り、気温も上がり、私の「下ノ畑」も動き始めました。
冬の間、体調があまりよくなかったので、すっかりサボってばかりでしたが、
植物はえらいですね。黙って芽を出し、花を咲かせます。実をつけます。

ラミウム(シソ科オドリコソウ属)
踊子草やホトケノザの仲間の園芸種。畑の下の土手にグランドカバーとして植えてあります。
葉も美しいので花が終わった後も楽しめます。
c0104227_1420376.jpg


ワスレナグサ(ムラサキ科ワスレナグサ属)勿忘草
こぼれ種であちこちから芽を出し咲いています。
賢治作品に登場するわすれぐさは、この花のことではなく菅草の花です。こちらをどうぞ
c0104227_1512579.jpg


イワヤツデ(タンチョウソウ)(ユキノシタ科ムクデニア属)岩八手 丹頂草
鉢植えで冬を越し、ある日突然小さな花を開き、つぎつぎに咲き、やがて葉も出てきました。
いかにも八手ででしょう。
c0104227_1427154.jpg
c0104227_1446077.jpg


ゲンペイコギク(エリゲロン)(キク科ムカシヨモギ属)
小さな白い花はやがてピンク色に変わっていきます。
紅白の花を源氏と平家にたとえてのネーミングとか。ほら、テントウムシも動き出しました。
c0104227_14105991.jpg


ナツメエッグ・ゼラニューム(フウロソウ科ペラルゴニウム属)いわゆるセンテッド・ッゼラニウムです。
丈夫で真冬以外はほぼⅠ年中花をつけています。葉の芳香はややスパイシーです。
c0104227_1575569.jpg

by nenemu8921 | 2009-04-17 13:50 | 私の「下ノ畑」 | Comments(10)

かげとひかり

(略)
かげとひかりのひとくさりづつ
そのとほりの心象スケッチです
(略)
                                  『春と修羅』 序
c0104227_9245485.jpg


意味がことばを構築し、スケッチがことばを呼び、ことばが新たなイメージを呼ぶ。
「季節の窓」の今日の記事から触発されました。
写真としてはちょっとかないませんが…。
by nenemu8921 | 2009-04-16 09:25 | イメージ | Comments(4)

ヤマブキ

杉なみのひざし
山ぶきの茎の青から青のオ-バ、
          「冬のスケッチ」三十一葉

c0104227_143872.jpg


c0104227_14385662.jpg
ヤマブキ(バラ科ヤマブキ属)山吹
山地のやや湿ったところに多く自生する落葉低木。
主幹はなく株立ちとなり、高さ2mほど。

冬のスケッチの一断章。青のオーバーとは緑の葉でおおわれた茎(枝)のことか。
オーバーは外套、套は、もともと重ねること、覆うことの意。
詩句からは花がない状態が連想される。
by nenemu8921 | 2009-04-14 14:40 | 植物 | Comments(4)

宮沢賢治の愛した鳥や植物


by nenemu8921