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うぐいす

(略)
山ではふしぎに風がふいてゐる
嫩葉(わかば)がさまざまにひるがへる
ずうつと遠くのくらいところでは
鶯もごろごろ啼いてゐる
その透明な群青のうぐひすが
   (ほんたうの鶯の方はドイツ読本の
    ハンスがうぐひすでないよと云った)
                   詩「小岩井農場」パート一


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画像提供は阿出川栄次さんです。

ウグイス(ヒタキ科ウグイス亜科)鶯
全国の低地から山地のササのあるところで繁殖する。山地や北の地方のものは冬は暖地へ移動。
市街地の公園や庭の茂みや垣根にも来る。

作品は、長詩「小岩井農場」のパート一、駅から歩き始めたところだ。時は五月。新緑の季節。
鶯もごろごろ啼いてゐるとは、鳴き声の比ゆではない。
あっちにもこっちにもごろごろいて、さえずりが響くという風である。
透明な群青のうぐひすはその声の質感からの形容詞だ。
ハンスは、アンデルセン(ハンス・クリスチャン・アンデルセン)のこと。アンデルセンの童話「ナイチンゲール」のお話を思い出しての呟きである。

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by nenemu8921 | 2009-05-30 17:29 | 鳥・動物 | Comments(5)
(略)
やつてるやつてるそらで鳥が
  (あの鳥何て云ふす 此処らで)
  (ぶどしぎ)
  (ぶどしぎて云ふのか)
  (あん 曇るづどよぐ出はら)
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画像提供は阿出川栄次さんです

(略)
遠くのそらではそのぼどしぎどもが
大きく口をあいて咽喉の粘膜に風をあて
めざましく雨を飛んでゐる

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画像提供はfieldnoteさんです

(略)
  (ぼどしぎのつめたい発動機は……)
ぼどしぎはぶうぶう鳴り
いったいなにを射たうといふのだ
(略)
               詩「小岩井農場」パート七

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画像提供はfieldnoteさんです

オオジシギ(チドリ目シギ科)大地鴫
夏鳥として本州中部の高原、東北地方、北海道に渡ってくる。
ぼどしぎ、ぶどしぎはこの鳥の地方名である。

小岩井農場を歩いていて、出会ったこのオオジシギのディスプレイフライトに宮沢賢治はさぞ愕いたことだろう。
農夫に尋ねると「ぶどしぎ」と言う。
ジェッ、ジェッ、ジャッチャージャッチャー、ゴゴゴゴォゴーゴゴゴゴォゴーとけたたましい羽音は、雷シギとか、ジェットシギという異名があるが、賢治は発動機と表現している。
小岩井農場が出来て未だ間もない時期には、オオジシギも沢山いたのだろう。
昨今ではめったに出会えない鳥になってしまった。

ぶうぶう   「ぼどしぎ」たぁ 俺のことかとオホジシギ      濃藍
入沢康夫さんの「わが似非俳句処女作」のなかの一句です。
  
by nenemu8921 | 2009-05-27 07:57 | 鳥・動物 | Comments(6)

七つ森

   青い抱擁衝動や
   明るい雨の中のみたされない唇が
   きれいにそらに解けてゆく
   日本の九月の気圏です
そらは霜の織物をつくり
萱の穂の満潮
        (三角山はひかりにかすれ)
(略)

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画像提供は中谷俊雄さんです。クリックすると画像は大きくなります。三角山が分かりますか。

七つ森第二梯形の
新鮮な地被が刈り払はれ
手帳のやうに青い卓上台地(テーブルランド)は
まひるの夢をくすぼらし
ラテライトのひどい崖から
梯形第三のすさまじい羊歯や
こならやさるとりいばらが滑り
(略)
   《たうたうぼくは一つ勘定をまちがへた
    第四か第五かをうまくそらからごまかされた》
(略)
詩「第四梯形」

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画像提供は中谷俊雄さんです。クリックすると画像は大きくなります。

七つ森
国土地理院の地図「小岩井農場」(2万5千図)によれば七つ森として生森山、鉢森山、小鉢森山、三手ノ森山、松森山、塩が森と周辺の山を総称して七つ森というらしい。
だが、数え方によっては六つにも見える。八つにも見える。賢治も空からごまかされたと言っている。
盛岡市の西方、雫石町との境付近にある。
作品は橋場線の車窓から七つ森を眺めたスケッチであるが、最近ではこの小さな丘のような山々は開発されうっそうとした森とはいえなくなった。
賢治は七つ森がお気に入りだったようで作品にはしばしば登城する。
画像は20年以上も前のもの、初秋の撮影だそうで、現在よりいくらか当時の雰囲気に近いかもしれない。
第四梯形は このあたりだろうか。
by nenemu8921 | 2009-05-23 22:40 | 場所 | Comments(4)

やまなし

(略)
一本さびしく赤く燃える栗の木から
七つ森の第四伯林青(べるりんせい)スロープは
やまなしの匂の雲に起伏し
すこし日射しのくらむひまに
そらのバリカンがそれを刈る
(略) 
                   詩「第四梯形」


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ヤマナシ(バラ科ナシ属)山梨
梨の原種。高さ20mほどの落葉高木。
種山ヶ原で見たヤマナシはまったく野生のもので実は小さかったが、最近は園芸種のヤマナシも出回っているようである。
以前、童話「やなまし」の引用からヤマナシの実を紹介した。こちらをどうぞ。

作品は『春と修羅』のなかの1編。
梯形とは台形のことだが、七つ森を指す。
タイトルは七つ森の4番目の山、ここでは伯林青スロープと言っている。
それを空のバリカンが刈るというのですから、大きな表現ですね。
東北では小さな山を森という。
9月の日付のある作品で、ヤマナシはその実の香のことであろう。
賢治作品に登場するヤマナシはすべて実のイメージで、このかわいい花には言及していない。

先日新潟県と長野県の県境の小さな部落で満開の樹木に出会った。
by nenemu8921 | 2009-05-22 19:55 | 植物 | Comments(4)

あけびのつる

(略)
あゝまた風のなかに来て
かなしくきみの名をよべば
あけびのつるのかゞやきて
鳥は汽笛を吹きて過ぐ
              文語詩〔猥れて嘲笑めるはた寒き〕下書稿一

1.
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2.
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3、
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ミツバアケビ(アケビ科アケビ属)三葉木通
山野に生えるつる性の落葉木本。葉は3出複葉。
1は樹木に絡まったアケビの蔓。
2は雄花と雌花。シマシマキャンディみたいな小さく沢山あるのが雄花である。
3は雌花のアップ。これがアケビの実となる。
以前、アケビを紹介した。よかったらこちらをどうぞ。ミツバアケビは北に多い。

「春と修羅」の《あけびのつるはくもにからまり》という詩句でよく知られているように、
宮沢賢治がイメージするのはいつもアケビの蔓である。
山野で実際に蔓をこのように見ると、なかなかすごいなと思う。
だが、アケビの花は小さいが風情がある。
この文語詩は改稿されるとアケビの蔓は削除され、定稿では恋の歌が内容も全く異なるものになってしまう。

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by nenemu8921 | 2009-05-20 19:04 | 植物 | Comments(10)

下ノ畑  5月の今②

チョコフィオーレという名前だと分かりました。ブラウン系のやや大振りなミニバラです。
次から次へと咲きました。
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エリゲロン・源平小菊(キク科)は長い期間咲き続けます。
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カモミール(キク科)りんごの匂いがします。
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スイカズラに似たハニーサックルもいい香を放ち、みち行く人が足を止めます。
モリスのデザインにはスイカズラが登場しますが、賢治の作品では名前が見当たりません。
山野を歩いた賢治であれば、必ず行き会っていたでしょうに、不思議な感じがします。
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隣人の畑のオキナグサモすっかり穂になりました。本当に翁です。
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今年の5月は色とりどりのジャーマンアイリスが咲きましたが、写真を撮る間がありませんでした。
賢治はダッジアイリスのことをメモしているので、来年はしっかり撮ろうと思います。
by nenemu8921 | 2009-05-18 00:14 | 私の「下ノ畑」 | Comments(8)

下ノ畑  5月の今①

大型連休もおわり、気温がぐんぐん上り、下ノ畑で次々花が咲いています。
今年は菜種梅雨と呼ばれる春先の雨が少なかったせいか、花は早め早めに咲いてしまうようです。

クロユリ(ユリ科バイモ属)黒百合
昨年函館セミナーの折、戴いたものが花を咲かせました。
北海道とちがって温かいので、戸惑っているかもしれません。
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賢治のバラの代名詞で有名になったグルス・アン・テプリッツも咲きました。
ゴールデンウィークが始まった頃から開き始め、沢山のつぼみがつきましたが、一日で満面の笑顔みたいに開いてしまいます。
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このバラは茎が華奢で花が開くと重いのか、下を向いてしまいます。
笑って笑って笑いました……という賢治のお得意の表現を思い出します。
「バラがげらげら笑ってはいけないよ」と云いたくなります。まだまだ咲き続けます。
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ベロニカ ブルーフォンティーン(ゴマノハグサ科) 別名ルリトラノオ
G.V.さんのガーデンから来てすっかり落ち着きました。彼女のところではご主人がみな雑草と一緒に引き抜いてしまったとか…、花が終わったら、株分けして里帰りです。
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シラン(ラン科シラン属)紫蘭
やさしい風情の花ですが、丈夫で繁殖力も強く、土手に雑草よけに植えたものが増えて増えてしまい
今年はだいぶ間引きしました。
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あの紅い棘のバラも開きました。こんなのです。名前が不明です。
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カリフォルニアポピー(ケシ科ハナビシソウ属)別名花菱草
一年草ですが、こぼれ種で発芽して冬を越したものが大きく育ちます。
毎日見ている花は緊張して撮るということがなく、いざとなるといい画像がありません。
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by nenemu8921 | 2009-05-17 15:35 | 私の「下ノ畑」 | Comments(12)

松之山周辺で出会った花

十日町市の松之山という所はとても静かな谷間の農村でした。
あちこちに残雪があり、ブナは芽吹いたばかり。
白樺の林の下はカタクリの群落で、雪の融けた渓流にはミズバショウの花が咲いていました。
山は柔らかな緑のグランデーションで、林床には岩手山麓でおなじみの植物が咲いていました。

ヤマエンゴサク
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イカリソウ
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ショウジョウバカマ
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イワウチワ
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オオバキスミレ
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イワカガミ 
この花は早池峰の詩に登場します。よかったらこちらもどうぞ。
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シラネアオイ
この花は賢治作品にも登場する。以前ご紹介した記事はこちら をどうぞ。↓チゴユリも登場します。
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チゴユリ
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by nenemu8921 | 2009-05-14 15:23 | 番外 | Comments(14)

木々のみどり→新緑

朝廊をふらつき行けば目はいたし木々のみどりとそらの光りに
                                 歌稿A 84

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学校の希望はすてぬ木々の青弱りたる目にしみるころかな
                                 歌稿A 86
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空に木々は緑に夏ちかみ熱疾みしのちの身のあたらしさ
                              歌稿A 87

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ウリハダカエデ(カエデ科カエデ属)瓜膚楓
山地に生え、高さ10~15mになる落葉高木。樹皮が暗緑色で、瓜の色を思わせることからこの名がある。
5月ごろ細長い総状花序をたらし、直径8~10mmの淡緑色の花を開く。

短歌は大正3年4月に分類されているもの。
この年、賢治は18歳。
3月に盛岡中学校を卒業し、4月に盛岡岩手病院に入院、肥厚性鼻炎の手術を受けた。
このとき、賢治が看護婦の一人に片恋をしたことは良く知られている。

木々の緑はウリハカエデと限定されているわけではないが。
この5月、越後の山で、ひときわ美しく目立ったのでイメージでとりあげてみた。
by nenemu8921 | 2009-05-13 00:02 | 植物 | Comments(12)

ブナ

 虔十はいつも縄の帯をしめてわらって、杜の中や畑の間をゆっくりあるいてゐるのでした。
雨の中の青い藪を見てはよろこんで目をパチパチさせ、青ぞらをどこまでも翔けて行く鷹を
見付けてはねあがって手をたゝいてみんなに知らせました。
 けれどもあんまり子供らが虔十をばかにして笑ふものですから、虔十はだんだん笑はない
ふりをするやうになりました。
 風がどうと吹いてぶなの葉がチラチラ光るときなどは、虔十はもううれしくてうれしくてひとり
でに笑へて仕方ないのを、無理やり大きく口をあき、はあはあ息だけついてごまかしながら
いつまでもいつまでもそのぶなの木を見上げて立ってゐるのでした。(略)
                                    童話「虔十公園林」


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ブナ(ブナ科ブナ属)山毛欅、橅、椈
温帯域に生育する落葉樹である。高木。大きいものは高さ30mにも達するものがある。
樹皮は灰白色できめが細かく、よく地衣類などが着いて、独特の模様のように見える。
日本では、低山の照葉樹林帯と、亜高山の針葉樹林帯の間にはブナ林が成立する。
特に日本海側の多雪地では、純林に近いブナ林が広範囲に広がっていたが、戦後大規模に伐採されてしまった。
一方、太平洋側では純林はあまり見られず、ミズナラなど他樹種との混交林をつくる。
白神山地のブナ林は世界遺産に登録されている。
画像は新潟県の松之山、美人林と呼ばれる二次林である。
by nenemu8921 | 2009-05-12 07:29 | 植物 | Comments(6)

宮沢賢治の愛した鳥や植物


by nenemu8921