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種山ヶ原

種山ヶ原といふのは北上山地のまん中の高原で、青黒いつるつるの蛇紋岩や、
硬い橄欖岩(かんらんがん)からできてゐます。
高原のへりから、四方に出たいくつかの谷の底には、ほんの五、六件づつの部落が
あります。
春になると、北上の河谷のあちこちから、たくさんの馬が連れて来られて、この部落
の人たちに預けられます。
そして上の野原に放たれます。それも八月の末には、みんなめいめいの持ち主に戻
ってしまふのです。
なぜなら、九月には、もう原の草が枯れはじめ水霜が下りるのです。
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放牧される四月(よつき)の間も、半分くらいまでは原は霧や雲に鎖(とざ)されます。
実にこの高原の続きこそは、東の海の側からと、西の方からとの風や湿気のお定まりの
ぶっつかり場所でしたから、雲や雨や雷や霧は、いつでも、もうすぐ起って来るのでした。

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今年も、もう空に、透き徹った秋の粉が一面散り渡るやうになりました。
雲がちぎれ、風が吹き、夏の休みももう明日だけです。
                                          童話「種山ヶ原」
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短編「種山ヶ原」は、のちに童話「風の又三郎」に、取り込まれる草稿だが、この冒頭の数行は
種山ヶ原の地形や気候、この地域で生活する人の解説になっていて、それがいかにも童話的、
感覚的表現で、この場所に立つと、「ああ、そのとおりだな」と、いつも思う。

日頃何かとお世話をおかけする「とうわ野鳥の会」の八月の定例観察会に参加させていただき、種山ヶ原で気持ちのよい一日を過ごした。
物見山山頂でイヌワシが悠々と飛ぶ姿を見て皆さん、感激でした。
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イーハトーブ里山の樹木ウオッチングのO氏の解説を興味深く聞きました。
皆さん、ありがとうございました。

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by nenemu8921 | 2009-08-30 09:14 | 場所 | Comments(12)

時間のないころのゆめ

久慈へ向かう道路沿いに見た光景です。
こんな情景に出会うと、思わず、大好きな詩が言葉になって出てきます。

「ああいいな せいせいするな」
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風が吹くし
農具はぴかぴか光ってゐるし(略)

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みんな時間のないころのゆめをみてゐるのだ(略)  詩「雲の信号」
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詩「雲の信号」は、花巻農学校の農業実習時に歌ったもので、この地が作品舞台というわけでは
ないが、時空間を越えて、これが賢治の作品世界だと感じる自由は誰にだってあると思う。
                                              (岩手町・大坊での撮影)

ご案内いただいた友へ。ありがとうございました。
すっかり味を占めたので、また、よろしくお頼み申します。
by nenemu8921 | 2009-08-30 07:29 | イメージ | Comments(8)

丹藤川

 火皿は油煙をふりみだし、炉の向ふには、この家の主人の膝が大黒柱を切って投げ出し、どっしりがたりと座ってゐる。
その息子らは外の闇から帰って来た。肩はばがひろくけらを着て馬を厩へ引いて入れ、土間でこっそり飯をたべ、そのままころころ寝てしまった。
もし私が何かまちがったことを云ったら、そのむすこらの一人でもすぐに私を外のくらやみに連れ出すだらう。
火皿は黒い油煙を揚げその下で一人の女が何かしきりに仕度をしてゐる。どうも私の膳をつくってゐるらしい。それれならさっきもことはったのだ。
ガタリと音がして皿が一枚板の上に落ちた。
主人はだまって立ってそっちへ行った。
三秒ばかりしんとした。
主人は座へ帰ってどしりと座った。
どうもあの女はなぐられたらしい。
音もさせずに撲ったのだな。その証拠には土間がいやに寂かだし、主人のめだまは黄金のやうだしさ。
                                         「丹藤川」


のちに手を入れて「家長制度」という作品に成立するこの小文は、1916(大正5)年5月、高橋秀松とともに、北上山地探訪を行った折の体験がもとになっているという。
岩手町岩手川口で、丹藤川沿いに歩いてみた。
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このあたりは北上川に合流する手前である。大きな川幅で愕いた。小さなダムにして灌漑用水に利用しているらしい。
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ヤマセミやキセキレイ、カワガラスの姿が見られた。
次回は一人で、此処で一日中バードウオッチングしてやろうと思った。
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この上流に賢治や高橋秀松が泊まった家があったのだろう。
岸辺の茂みにはナツズイセンが誰にも気にされずに咲いていた。
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高橋秀松の回想によれば、賢治と二人で土橋の上で寝ようとしていたら、一人の老人が現われて「オメエサンダチ、ナニシテル、こんな処で寝たら狼にやられるぞ、オラノウチサオデンセ」と声をかけられ、大きな曲り家に案内されたという。
狼がいたか?! 
このあと、 国道4号線上で、狸の轢死体を見た。(祈冥福)
by nenemu8921 | 2009-08-29 11:41 | 場所 | Comments(6)

田野畑・島越

三陸海岸はさすがにスケールの大きな国立公園だった。
浄土ヶ浜のほかにも、美しい海岸線は何箇所もあり、子どもの頃教科書で習ったリアス式海岸
という言葉がしきりに頭を去来した。
賢治が参加した「東海岸視察団」の旅程では、釜石の大東漁業㈱という捕鯨会社や、宮古の岡田製糸工場、県立水産学校、昆布工場、宮古公会堂、宮古測候所などを見学した様子である。
我々は陸中海岸の景観を楽しんだ。
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北山崎です。すごい長い階段を下って岸壁の突端まで行きましたが、帰りがたいへんでした。

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三王岩というところです。

また、宮沢賢治は、1925(大正14)年、1月には、単独で「異途への出発」の決意を秘めてこの地を訪れている。
田野畑駅、島越駅には、このときの体験を書いたと推定されている「発動汽船」の詩碑が建てられています。
そしてなんと、駅名まで…。
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三陸鉄道リアス線の田野畑駅。「発動汽船 三」の詩碑があります。


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「発動汽船 一」の詩碑は、港を見下ろす小高い丘の上にありました。


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こちらの島越駅には「発動汽船 二」の詩碑が建てられています。
by nenemu8921 | 2009-08-28 19:07 | 場所 | Comments(10)

寂光ヶ浜→浄土ヶ浜

風のセミナーを口実にして、花巻へ行ったついでに、周辺を少し廻り、4,5日いい時間を過ごさせてもらった。けれども前後の1日づつは車の移動に時間をとられ、なにやら、あわただしかった。
折しも、花巻東高校が甲子園で熱戦を繰り広げているときだったので、県内、何処でも話題は菊池雄星くんのことでもちきりだった。
皆さん、燃え上がっていた。結果的にはベスト4に終わったが、多くの人に元気と勇気を与えた夏だった。どなたも花巻東の話になると、はじけるような笑顔になったのが印象的だった。
旅のあれこれを、宮沢賢治の世界とクロスさせながら少しづつ紹介したい。お付き合い下さい。
まずは浄土ヶ浜です。友人のご案内を戴き、三陸海岸を廻った。


麗はしき海のびらうど褐昆布寂光ヶ浜に敷かれ光りぬ 
                             歌稿A560

1、
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寂光のあしたの海の岩しろくころもをぬげばわが身も浄し
                              歌稿A561

2、
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雲よどむ白き岩礁砂の原はるかに敷けるびらうど昆布
                             歌稿A562

3、
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寂光の浜のましろき巌にしてひとりひとでを見つめたる人
                              歌稿A563

4、
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5、
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画像はクリックするとみな大きくなります。 

1917(大正6)年、7月、宮沢賢治は、花巻町有志発企による「東海岸視察団」に参加して、
釜石、宮古などをめぐった。
「東海岸視察団」とは、軽便鉄道の敷設により花巻ー釜石間が結ばれたため、東海岸の産
業状態を視察しようという目的で結成された実業家有志36名の団体だった。
賢治はこのとき盛岡高等農林の3年生だったが、宮沢一族の直治、右八、弥吉などとともに
参加した。

寂光ヶ浜は法華経の常寂光土(仏の住む世界)から、イメージしたネーミングであろう。
賢治の創作である。
「あしたの海」とあるから、朝の情景だったのだろうか。
我々は日暮れ方に此処に立った。遠く海のかなたに虹の足もとが見えた。2の画像です。


                         

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by nenemu8921 | 2009-08-27 10:25 | 場所 | Comments(16)

(略)
ぼくらは、蝉が雨のやうに鳴いてゐるいつもの松林を通って、それから祭のときの瓦斯(ガス)のやうな匂いのむっとする、ねむの河原を急いで抜けて、いつものさいかち淵に行った。
(略)
                                            童話「さいかち淵」
 
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のちに「風の又三郎」に組み込まれるこの「さいかち淵」の一節は、なつかしい子ども時代を思い起こさせる。、熱い砂の上をはだしで歩いた感触や、生い茂った夏の木立の空気感がありありとよみがえってくる文章である。いつまでもいつまでも続く夏休みだった。
最近の子ども達は塾通いやクラブ活動などで忙しく、あっという間に夏休みは終わってしまうという。

画像はわが「下ノ畑」のギンドロで見つけたセミの抜け殻。
小さな木なのにミンミンゼミが毎日にぎやかである。都会のセミは住宅難なのかな。




  

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by nenemu8921 | 2009-08-18 02:02 | 昆虫・クモなど | Comments(10)
気圧が高くなったので
昨日固態の水銀ほど
乱れた雲を弾いてゐた
地平の青い膨らみも
徐々に平位を復するらしい
(略)
沼地の青いけむりのなかを
はぐろとんぼが飛んだかどうか
そは杳として知るを得ぬ
                   詩「葱嶺(パミール)先生の散歩」


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ハグロトンボ(カワトンボ科)羽黒蜻蛉
東アジア(日本、朝鮮半島、中国、ロシア)に分布。雄は体色が全体的に黒く緑色の金属光沢があるのに対し、雌は黒褐色である。他のトンボのように素早く飛翔したりホバリングしたりせず、蝶のようにひらひらと舞うように羽ばたく。

以前、この作品の前身である「亜細亜学者の散策」とともに紹介した。こちらをどうぞ
このトンボには、夏の川辺でよく出会う。
子どもの頃は捕まえようと夢中になったが、いつも逃げられてしまった。大人になってからはシャッターチャンスを狙って夢中になっているが、なかなかいい写真にはならない。
by nenemu8921 | 2009-08-15 17:16 | 昆虫・クモなど | Comments(16)

ヘリアンサス→ヒマワリ

(略)
苗代の水を黒く湛えて
そこには多くの小さな太陽
また巨大なるヘリアンサスをかゞやかしむる
  うん、わたくしは
  いままで霧が多く溢出水なのに
  どうして気がつかなかったのでございませう
       Gaillardox! Gaillardox!
(略)
                    詩「装景家と助手との対話」


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ヒマワリ(キク科ヒマワリ属)
北アメリカ原産の1年草。
学名:Helianthus annuusから、宮沢賢治はこの花をヘリアンサスと呼んだ。
最近では一口にヒマワリといっても、たくさんの園芸種がある。

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霧、朝霧とは、夜の間に植物が吸い上げた水分が朝方葉っぱから溢出する現象でもある。
宮沢賢治は農学校の教師時代、実習田の畔にヒマワリを植栽して、周囲の人を愕かせたという。

しかし、今年は不順な天候でヘリアンサスには似合わない夏だ。

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by nenemu8921 | 2009-08-13 14:49 | 植物 | Comments(6)
高山植物の撮影は難しいと実感しました。
どうも人の多いところは落ち着きませんでした(負け惜しみ!)

1.エゾシオガマ(ゴマノハグサ科)
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2.イワツメクサ(ナデシコ科)
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3.ムカゴトラノオ(タデ科)初めて見ました。
群生しているところでは独特の雰囲気があります。
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4.ショウジョウバカマ(ユリ科)
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5.これもショウジョウバカマかしら? 猩々色ではないけれど。
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6.タカネクロスゲ(カヤツリグサ科)
おいしそうには見えませんが、アブ?ハチ?がびっしり集っていました。
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by nenemu8921 | 2009-08-11 19:22 | 番外 | Comments(7)
1.ウメバチソウ(ユキノシタ科) 
宮沢賢治の好きなこの花は開き始めたばかりでした。しかし、この花は毎年うまく撮れない。
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2.ミツバオウレン(キンポウゲ科)
大好きな花だけれど、オウレン類も難しい。
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3..ウラジロナナカマド(バラ科)
ナナカマドより、ずっと地味だが、初めて出会った。
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4.タカネナナカマド(バラ科)
高山帯でないと見られないそうです。
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5.シナノオトギリ(バラ科)
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6.アキノキリンソウ(キク科)
麒麟草ではなくて、黄輪草だそうですね。
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7.コイワカガミ(イワウメ科)
葉が小さいのでコイワカガミだそうです。
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8.不明の花です。見つけたのはこの1輪だけでした。
どなたか、ご教示いただけると嬉しいのですが。
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by nenemu8921 | 2009-08-09 23:51 | 番外 | Comments(8)

宮沢賢治の愛した鳥や植物


by nenemu8921