ツメタガイ

また、私はそこから風どもが送ってよこした安心のやうな気持も感じてうけとりました。

そしたら、丁度あしもとの砂に、小さな白い貝殻に、円い小さな孔があいて落ちてゐるのを見ま

した。つめたがひにやられたのだな、朝からこんないい標本がとれるなら、ひるすぎには十字狐

だってとれるにちがひないと、私は思ひながら、それを拾って雑嚢に入れたのでした。

                                        童話「サガレンと八月」


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ツメタガイは巻貝で、ハマグリやアサリなどの二枚貝などの上に覆いかぶさって、孔を空け、ちゅうちゅうと中身を食べてしまう。まるで、ドリルであけたように見事な孔だ。
実際に栄浜で散策して拾うことが出来た。
フィールドワークをしていると、この心理がよくわかる。今日は朝からカワセミに出会ったから、この調子ではきっとチゴハヤブサにも会えるだろうとおもったりするのだ。
アサリの養殖業者はツメタガイが大量発生すると壊滅的な被害を受けるという。
写真は東京湾三番瀬で採集したもの。
# by nenemu8921 | 2006-11-10 23:30 | その他 | Comments(1)
「何の用でここへ来たの、何かしらべに来たの、何かしらべに来たの」(略)

西の山地から吹いて来たまだ少しつめたい風が、私のみすぼらしい黄いろの上着をぱたぱたかすめながら、何べんも何べんも通って行きました。(略)

「おれは内地の農林学校の助手だよ。だから標本を集めに来たんだい」(略)

「何の用でここへ来たの、何かしらべに来たの、しらべに来たの、何かしらべに来たの」

「何してるの、何を考えてるの、何かみてるの、何かしらべに来たの」(略)

「そんなにどんどん行っちまはないで、せっかくひとへ物を訊いたら、しばらく返事を待ってゐたらいいじゃないか」(略)

けれども、それもまた風がみんな一語づつ切れ切れに持って行ってしまひました。(略)

そして、ほんとうに、こんなオホーツク海のなぎさに座って、乾いて飛んでくる砂やはまなすのいい匂いを送ってくる風のきれぎれのものがたりを聴いてゐると、ほんとうに不思議な気持ちがするのでした。(略)
                                         童話「サガレンと八月」


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大正12年8月4日宮沢賢治はこの栄浜(現スタロードゥブスコエ)を訪れました。
そのときの体験も交えてこの童話が描かれていると思われます。
風が運んできた切れ切れの言葉を、つむいだものがたりです。
2005年、7月29日、私がここを訪れたとき、風はやはり何か、叫んでいるようでした。
# by nenemu8921 | 2006-11-09 22:53 | 場所 | Comments(0)

ヤナギラン

南の岬は、いちめんうすい紫いろのやなぎらんの花でちょっと燃えているやうに見え

その向ふには、とど松の黒い緑がきれいに綴られて、何とも云へず立派でした。

あんなきれいなとこをこのめがねですかして見たら、ほんたうにもうどんなに不思議に

見えるだらうと思ひますと、タネリはもう居てもたってもゐられなくなりました。

                                       童話「サガレンと八月」

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      いちめんのやなぎらんの群落が

      光ともやの紫色の花をつけ

              詩「鈴谷平原」



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# by nenemu8921 | 2006-11-08 23:51 | 植物 | Comments(2)

【10】 樺太鉄道

やなぎらんやあかつめくさの群落(略)
おお満艦飾のこのえぞにふの花
月光いろのかんざしは
すなほなコロボックルのです(略)
崖にならぶものは聖白樺(セントベチュラアルバ)(略)
すべて天上技師 Nature 氏の
ごく斬新な設計だ(略)
       詩「樺太鉄道」


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2005.07.29 樺太鉄道沿いの光景
まるでタイムマシーンに乗って、賢治の詩の世界におりたったような気がした
# by nenemu8921 | 2006-11-07 20:22 | 場所 | Comments(1)

菊花品評会

魚燈して霜夜の菊をめぐりけり

班猫は二席の菊に眠りけり

狼星をうかゞふ菊の夜更かな

秋田より菊の隠密はいり候

水霜をたもちて菊の重さかな

             風 耿


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いずれも菊花品評会の折の句。風耿は賢治の俳号。
花巻市の双葉町には美味しい酒を飲ませる「風耿」という料理屋があります。

魚燈はイワシやニシンなど脂肪分の多い魚から取った脂を用いたランプのこと。
菊の香りを魚くさいランプで損なわなかっただろうか?
班猫は、道教えと言われる昆虫。走る宝石と呼ぶ人もいる美しい虫。
菊と隠密の取り合わせが面白いですね。大掛かりな品評会だったのでしょうか。
菊の季節は東北では霜が降りるほどの寒い季節だったのですね。
# by nenemu8921 | 2006-11-06 00:27 | 植物 | Comments(1)

ヒカゲノカズラ

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「占めた」と叫んで、お父さんは急いで帰って、仲間の蛙をみんなつれて来ました。
そして、林の中からひかげのかずらをとって来て、それを穴の中につるして、たうた
う一ぴきづつ穴からひきあげました。
                                    童話「蛙のゴム靴」



ヒカゲノカズラ(ヒカゲノカズラ科)
山麓にみる常緑の多年草。茎は針金状で地をはい緑色で、長さ2mくらい。葉は輪生、
またはらせん状につき、硬い。子のう穂は細茎の上に2~4個つき、淡黄色で円柱形。
胞子葉は広卵形で先が鋭くとがり、らせん状につく。その上部基部に腎臓形の胞子のうを
生じ、横にさけて黄臼色の胞子をだす。



杭穴に落ちた蛙君たちを救出するのに使ったのはこんな植物だったのです。
蛙の視点で世界を見てこその発想ですね。

# by nenemu8921 | 2006-11-04 23:45 | 植物 | Comments(2)

イヌタデ

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イヌタデ(タデ科)
道端や野原に多い一年草。イヌと冠するものは役に立たないという意味のものが多く、
本種も葉に辛味がなくて、食用にならないことから名前がついた。
各地で古くからアカマンマの呼び名で親しまれ、、
子どものままごと遊びに使われた。
# by nenemu8921 | 2006-11-04 10:50 | 植物 | Comments(0)

タデ

  七つの銀のすすきの穂(略)
      赤い蓼の花もうごく
      すゞめ すゞめ 
      ゆっくり杉に飛んで稲にはひる(略)
      (なんだか風と悲しさのために胸がつまる)

                   詩「マサニエロ」


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      写真は花巻市郊外の05年9月末の光景。
      いちめんのタデはイヌタデでしょうか。
      
      「マサニエロ」は花巻城跡に立ち、歌っている作品。  
# by nenemu8921 | 2006-11-04 10:30 | 植物 | Comments(0)

菊日和

花はみな四方に贈りて菊日和

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賢治は短歌から文学創作に入ったことはよく知られていますが、
晩年、いくつかの俳句も残しています。
菊花品評会の折の句です。
菊日和とは、菊の花の咲く11月頃に見られる秋晴れのよい天気のこと。
ここ数日菊日和ですね。
# by nenemu8921 | 2006-11-03 12:29 | 植物 | Comments(2)
ごまざいの毛をとって来て、こすってやったり、
いろいろして、やっと助けました。
              童話「蛙のゴム靴」

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ゴム靴を持っている特権でかわいいルラ蛙と結婚したカン蛙くん。
どうにも、面白くないベン蛙とブン蛙。
新婚旅行に出かけたところを、「あゝ、こゝはみちが悪い。おむこさん手を引いてあげよう」とか、
何とかいいながら、無理やり手を引っぱって……。
三疋とも杭穴に落ちてしまいました。
ルラ蛙の必死の奮闘で、ようやく助け出された三疋はゴマザイの毛で介抱されたというわけです。

でも、ゴマザイ(ガガイモ)は花もきれいですよね。
# by nenemu8921 | 2006-11-03 09:48 | 植物 | Comments(6)

宮沢賢治の愛した鳥や植物


by nenemu8921