(略)
そこでめくらぶだうの青じろい樹液は、はげしくはげしく波うちました。
さうです。今日こそ、ただの一言でも、虹とことばをかはしたい、丘の上の小さなめくらぶだうの木が、よるのそらに燃える青いほのほよりも、もっと強い、もっとかなしいおもひを、はるかの美しい虹に捧げると、ただこれだけを伝へたい、ああ、それからならば、それからならば、実や葉が風にちぎられて、あの明るいつめたいまっ白の冬の眠りにはひっても、あるひはそのまま枯れてしまってもいいのでした。
童話「めくらぶだうと虹」
ノブドウ(ブドウ科ノブドウ属)野葡萄
北海道から沖縄まで分布するツル性落葉多年草。
果実は、ブドウタマバエやブドウガリバチの幼虫の寄生(虫えい)により、虫こぶ状になり、形も大小様々で、色も白緑色、淡紫色、瑠璃色、赤紫色など変化に富んでいる。
メクラブドウとはノブドウの方言。実が盲人の目玉に似ているというのでこう呼んだ。
賢治はこの美しい実を地上の虹と見立て、天上の虹と対照させている。


賢治祭で花巻を訪ねた。
在来線の花巻駅近く、ススキが生い茂る線路脇で、ウルシの樹木に絡まったノブドウを見つけた。色づき始めたばかりだった。