タグ:タネリはたしかにいちにち噛んでゐたやうだった ( 6 ) タグの人気記事

散紅葉

散りもみじ……。いい言葉を教えていただいたので、朝、近くの妙行寺まで歩いてみました。
境内は掃き清められたあと、又あたらな落ち葉が散っていました。
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ここは松の木もあって、枯れ松葉がもみじにかかっています。
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葉が落ちると、もみじの実が目立つようになりますね。
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桜の葉も旅立ちのおめかし? 姉妹そろって?
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ひっそりと散っていくものもいます。
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by nenemu8921 | 2010-12-08 18:06 | イメージ | Comments(10)

蟇→ヒキガエル

(略)そのあちこちには青じろい水ばせう、牛(ベゴ)の舌の花が、
ぼんやりならんで咲いてゐました。
タネリは思はず、また藤蔓を吐いてしまって、勢いよく湿地のへりを
低い方へつたはりながら、
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その牛の舌の花に、一つづつ舌を出して挨拶してあるきました。
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そらはいよいよ青くひかって、そこらはしぃんと鳴るばかり、
タネリはたうたう、たまらなくなって、「おーい、誰か居たかあ」と叫びました。
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すると花の列のうしろから、一ぴきの蟇(ひきがへる)が、のそのそ這ってでてきました。
タネリはぎくっとして立ちどまってしまひました。
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それは蟇の、這ひながらかんがへてゐることが、まるで遠くで風でもつぶやくやうに、
タネリの耳に聞こえてきたのです。
  (どうだい、おれの頭のうへは
  いつからこんな、
  ぺらぺら赤い火になったらう)
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「火なんか燃えてゐない。」タネリはこわごわ云ひました。
蟇は、やっぱりのそのそ這ひながら、 
  (そこらはみんな、桃いろをした木耳(キクラゲ)だ。
  ぜんたい、いつから、
  こんなにぺらぺらしだしたのだらう。)といってゐます。
タネリは、俄かにこわくなって、いちもくさんに遁げ出しました。
                     童話「タネリはたしかにいちにち噛んでゐたやうだった」

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早春の息吹を求めて、群馬県片品村へミズバショウを見に行ってきました。
そしたら、なんと!タネリと同様の経験をしました。
ヒキガエルがのそのそ這って出てきたのです。
ぺらぺらの赤い火も、思い当たるふしがありました。
by nenemu8921 | 2009-05-05 15:13 | 鳥・動物 | Comments(10)

トキ

(略)
桜草はその靭(しな)やかな緑色の軸をしづかにゆすりながら、ひとの聞いてゐるのも知らないで斯(こ)うひとりごとを云ってゐました。
「おひさんは丘の髪毛の向ふの方へ沈んで行ってまたのぼる。
そして沈んでまたのぼる。空はもうすかり鴇の火になった。
さあ、鴇の火になってしまった。」
若い木霊は胸がまるで裂けるばかりに高く鳴りだしましたのでびっくりして誰かに聞かれまいかとあたりを見まはしました。その息は鍛冶場のふいごのやう、そしてあんまり熱くて吐いても吐いても吐き切れないのでした。
(略)
                                  童話「若い木霊」


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画像提供は蘇雲山さんです。
トキ(コウノトリ目トキ科)鴇 朱鷺
画像は中国の野生のトキである。成鳥だという。

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画像提供は佐渡トキセンターです。

「タネリはたしかにいちにち噛んでゐたやうだった」の前身ともいえるこの「若い木霊」では、トキは、官能的イメージ、性的なシンボルを象徴するかのように登場する。

明治33年に岩手県宮古地方で捕獲されたトキが国立科学博物館に保存されている。
大正期、一般的には既に絶滅した鳥と考えられていたようだ。
賢治の独自なトキのイメージは、当時既に幻の鳥として、美しい羽色が話題になったことや、博物館などで見聞する機会のあった標本の印象もあったと思われる。
トキは下に曲がった大きな嘴をもち、赤い顔をし、短い脚で、奇妙な雰囲気の鳥でもある。
実際のトキは、ダォと鳴き、臆病で動作も鈍かったゆえに簡単に捕獲され、明治以後激減してしまった。
トキは一年のうち約半分は灰色をしている。この灰色の羽を生殖羽と呼ぶ。賢治はこの生殖羽のトキを描いていない。
実際のトキに出会う機会はなかったのであろう。
by nenemu8921 | 2008-01-28 00:12 | 鳥・動物 | Comments(8)

トキ

一疋の大きな白い鳥が、日を遮って飛びたちました。
はねのうらは、桃いろにぎらぎらひかり、まるで鳥の王さまとでもいうふう、タネリの胸は、まるで酒でいっぱいのようになりました。
タネリは、いま噛んだばかりの藤蔓を、勢よく草に吐いて高く叫びました。
「おまへは鴇(とき)といふ鳥かい。」
                    童話「タネリはたしかにいちにち噛んでゐたやうだった」


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画像提供は蘇雲山さんによる中国の野生のトキです 
トキ(コウノトリ目トキ科) 鴇 朱鷺
体は白色だが、尾羽の羽毛は橙紅色を帯び、飛ぶと風切羽が橙紅色に見える。
トキは明治以後、田を荒らす害鳥として駆除されたり、美しい羽を採集するために捕獲されたりして急激に減った。
1934(昭和9)年に天然記念物、1952年に特別天然記念物、1960年には国際保護鳥と指定された。
1981年、佐渡に残された最後の野生のトキ5羽を捕獲保護し、その後中国から番のトキを寄贈されるなどの経過を経て、繁殖を図ってきた。
2003年に日本の野生のトキは死亡したが、、手厚い保護のもとトキは増え、2007年末、国内のトキは95羽だという。
コウノトリのように野生復帰できる日も遠くないのかもしれない。
画像は知人の好意から蘇雲山さん(環境文化創造研究所 主席研究員)のものをお借りした。

「タネリはたしかにいちにち噛んでゐたやうだった」におけるトキは、幻想的なイメージだ。異界へ主人公を連れ込む役割で、魔性の力を持つ鳥として描かれる。
by nenemu8921 | 2008-01-27 18:00 | 鳥・動物 | Comments(2)
丘のうしろは、小さな湿地になってゐました。そこではまっくろな泥が、あたたかに春の湯気を吐き、あちこちには青じろい水ばせう、牛(ベゴ)の舌の花が、ぼんやりならんで咲いてゐました。
タネリは思はず、また藤蔓を吐いてしまって、勢いよく湿地のへりを低い方へつたはりながら、その牛の舌の花に、一つづつ舌を出して挨拶してあるきました。
そらはいよいよ青くひかって、そこらはしぃんと鳴るばかり、タネリはたうたう、たまらなくなって、「おーい、誰か居たかあ」と叫びました。
                    童話「タネリはたしかにいちにち噛んでゐたやうだった」

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ミズバショウ(サトイモ科ミズバショウ属)水芭蕉
山地の湿原に生える多年草。花期は5~6月。ベゴノシタは東北地方の方言。
尾瀬のミズバショウが美しい歌によって有名になったのは戦後である。
賢治の時代、牛が食べないため、牧草にもならず、はびこって、農民にとってはやっかいものだった。
賢治は早くからその美しさを発見して、早春のシンボルとして登場させている。


イーハトーブでは、車で動けば一日のうちに早春から初夏まで体験できる。
関東ではもうすっかり花は終わったミズバショウだが、標高の高いところではようやく雪がとけ、
花がいま盛りで、葉は、ごらんのようにこれから伸びるのである。
by nenemu8921 | 2007-06-13 16:04 | 植物 | Comments(6)

【140】 藤

ホロタイタネリは、小屋の出口で、でまかせのうたをうたひながら、何か細かくむしったものを、ばたばたばたばた、棒で叩いて居りました。
「山のうへから、青い藤蔓とってきた
  …西風ゴスケに北風カスケ…
 崖のうへから、赤い藤蔓とってきた
  …西風ゴスケに北風カスケ… 
 森の中から、白い藤蔓とってきた
  …西風ゴスケに北風カスケ…
 洞のなかから、黒い藤蔓とってきた
  …西風ゴスケに北風カスケ…
 やまのうへから、…」
 タネリが叩いてゐるものは、冬中かかって凍らして、こまかく裂いた藤蔓でした。
                  童話「タネリはたしかにいちにち噛んでゐたやうだった」


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ヤマフジ(マメ科フジ属)藤
山野に自生する落葉つる性木本。蔓は左巻きで他物に巻きつく。近畿以西に多いと図鑑にはあるが、これは関東、渡良瀬渓谷でこの5月上旬に撮影したもの。
庭園に植えられているのはノダフジ(野田藤)。蔓は右巻きで花は長く垂れ下がる。

長いタイトルのこの童話は、「赤い鳥」に、人を介して持ち込んだが、鈴木三重吉には採用されなかったと伝えられている作品。
タネリが藤蔓を叩いているのは、その樹皮を繊維にするためだ。大昔から藤の樹皮を繊維にして衣服を織っていたそうである。古事記に大変美しい女神がいて、ある兄弟の弟神が、母神に衣服、弓矢すべてを藤蔓で作ってもらい、女神の所へ行ったところ、衣服、弓矢のすべてに藤の花が咲き、女神と深い契りを結ぶことが出来たと言った話がある。現在でも帯などに藤布が使われている。
村童タネリは藤蔓を叩くという単調な労働に飽きて、向こうの野はらや丘が早春の気配をざわざわざわざわさせているので、思わず出かけていく。
全篇、「早春という季節特有の狂気がすみずみまでゆきわた」(天沢退二郎解説)っている賢治特有の世界である。
by nenemu8921 | 2007-05-27 13:54 | 植物 | Comments(0)

宮沢賢治の愛した鳥や植物


by nenemu8921