タグ:春と修羅 第二集 ( 15 ) タグの人気記事

ツタウルシ

(略)
山はひとつのカメレオンで
藍青やかなしみに
いろいろな色素粒が
そこにせはしく出没する
                   詩〔かぜがくれば〕


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紅葉する山を、周囲の環境で体色が変わるカメレオンという爬虫類に例えるとは!!
宮沢賢治って、途方もない発想と表現の人なんです。

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ツタウルシです。志賀高原では色素粒が出揃いました。
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やっぱりカメレオンです。
by nenemu8921 | 2010-10-16 22:31 | 植物 | Comments(12)

睡蓮や蓴菜

(略)
並木に沿った沼沢には
睡蓮や蓴菜(じゅんさい)
いろいろな燐光が出没するけれども
すこしもそれにかまってはならない
(略)
                  詩「命令」


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画像はクリックすると、みな大きくなります。
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睡蓮や蓴菜の繁茂する沼地は、滋賀高原のあちこちにある。蓮沼、一沼の画像です。
黄葉した水草を燐光と表現するのは、宮沢賢治ならではである。
この作品は「春と修羅 第二集」中のもの。
花巻市の郊外が舞台だが、情景的には共通する。

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風のない日で、水面への写りこみも面白かった。

More おまけです。
by nenemu8921 | 2010-10-15 09:54 | 植物 | Comments(10)

ほたる

温く含んだ南の風が
かたまりになったり紐になったりして
りうりう夜の稲を吹き
またまっ黒な水路のへりで
はんやくるみの木立にそそぐ
(略)
熟した藍や糀のにほひ
一きは過ぎる風跡に
蛙の輩は声をかぎりにうたひ
ほたるはみだれていちめんとぶ
(略)
蛍は消えたりともったり
泥はぶつぶつ醗酵する
(略)
                  詩〔温く含んだ南の風が〕
 

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作品は花巻農学校の教師時代、実習田の夜の見回りの体験を歌ったもの。1924.7.5の日付がある。
水田にホタルガ飛びかい、カエルの大合唱が響くなか、風が吹き、蒸し暑い夜である。


千葉県内にある友人の山小屋の近くに毎年ゲンジボタルが発生するという。
本当かしらと思ってご案内いただいた。
そして、夢のような光景に出会った。
渓流沿いの民家の前には小さな水田があり、蛙の大合唱が響き、
川の奥から湧くように、蒼白いひかりが飛び、本当に消えたりともったりしていたのです。
by nenemu8921 | 2010-06-18 17:29 | 昆虫・クモなど | Comments(10)

天子→月

東の雲ははやくも蜜のいろに燃え
丘はかれ草もまだらの雪も
あえかにうかびはじめまして
おぼろにつめたいあなたのよるは
もうこの山地のどの谷からも去らうとします
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(略)
あゝあかつき近くの雲が凍れば凍るほど
そこらが明るくなればなるほど
あらたにあなたがお吐きになる
エステルの香は雲にみちます
おゝ天子
あなたはいまにはかにくらくなられます
                   詩 〔東の雲ははやくも蜜のいろに燃え〕

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『春と修羅 第二集』中の1924年4月20日の日付のある作品。
外山の岩手県種畜場の種馬検査を視察するため、夜どうし歩き続けて朝を迎えたときの作品。
あなたとは、天子、月天子、月のことである。
宮沢賢治は太陽讃歌をさまざまな形で遺しているが、月もまたかれの賛美の対象だった。
荘厳な印象である。
作品の舞台は北上山地だが、越後の山間の部落で、美しい夜明けに出会ってこの詩を想起した。
東の空が蜜のいろに燃えはじめると、棚田ははじめは青く、それから紅色に美しく染まった。
by nenemu8921 | 2009-05-08 20:29 | イメージ | Comments(11)

牆林(ヤグネ)

つめたい雨も木の葉も降り
町へでかけた用足(タシ)たちも
背嚢(ケラ)をぬらして帰ってくる
   ……凍らす風によみがへり
      かなしい雲にわらふもの……
牆林(ヤグネ)は黝く
上根子堰の水もせゝらぎ
風のあかりやおぼろな雲に洗はれながら
きゃらの樹が塔のかたちにつくられたり
崖いっぱいの萱の根株が
妖しい紅をくゆらしたり
(略)
                           詩「凍雨」

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牆林(ヤグネ)は、屋敷の周囲に植え込んだ防雪雨林。他の作品では家ぐねの字をあてている。
牆(ショウ、ゾウ、かき)は家の周囲の意。牆林(ショウリン)は垣根の植え込みの樹木。

つづきを読む
by nenemu8921 | 2009-03-24 09:10 | 植物 | Comments(10)

藍→アイ

温く含んだ南の風が
かたまりになったり紐になったりして
りうりう夜の稲を吹き
またまっ黒な水路のへりで
はんやくるみの木立にそゝぐ
  ……地平線地平線
     灰色はがねの天末で
     銀河のはじが茫乎とけむる……
熟した藍や糀のにほひ
一きはすぎる風跡に
蛙の族は声をかぎりにうたひ
ほたるはみだれていちめんとぶ
(略)
              詩一五五〔温く含んだ南の風が〕

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アイ(タデ科タデ属)藍
タデ藍または藍タデともいう。中国原産の一年生植物。外形はイヌタデによく似ているが、アイは葉を傷めると傷口が藍色になる。茎は高さ50~70cmになり、よく枝分かれする。葉は幅の広い被針形で、インジコという色素を含んでいるため、藍色色素の原料となる。また、乾燥させて、解熱、殺菌の漢方薬としても用いられる。

作品は1924年7月5日の日付のある作品。夜の稲田をうたったもの。農学校の実習田の見回りを賢治はよく引き受けた。詩の後半は夜空の星の描写が続いている。
糀はこうじ。温くはぬくくと読む。


今年初めて、友人のG.Vさんからいただいた苗を育てた。いま私の下の畑で花が満開です。
by nenemu8921 | 2008-09-08 05:23 | 植物 | Comments(10)

いはかがみ→イワカガミ

みんなは木綿(ゆふ)の白衣をつけて
南は青いはひ松のなだらや
北は渦巻く雲の髪
草穂やいはかがみの花の間を
ちぎらすやうな冽たい風に
眼もうるうるして息(い)吹きながら
踵(くびす)をついで攀ってくる
九旬にあまる旱天(ひでり)つゞきの焦燥や
夏蚕飼育の辛苦を了へて
よろこびと寒さとに泣くやうにしながら
たゞいっしんに登ってくる
(略)                      詩一八一「早池峰山巓」

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イワカガミ(イワウメ科イワカガミ属)岩鏡
山地の岩場や高山の草地などに生える常緑の多年草。葉は長い柄をもち、根ぎわに群生する。葉身は円形で革質、表面に鏡のような光沢があることからのネーミング。4~7月に高さ10cmほどの花茎に総状花序をつけ、淡紅色の花を3~6個開く。
 この花はなかなかうまく撮れない。葉の表情が出ている画像がなくて残念です。

九旬の旬は順の意で、1ヶ月を3旬とする。つまり10日間で、9旬は90日のこと。
夏蚕飼育は夏の養蚕作業のことか。
by nenemu8921 | 2008-09-05 10:42 | 植物 | Comments(10)
あやしい鉄の隈取りや
数の苔から彩られ
また捕虜岩(ゼノリス)の浮彫と
石絨の神経懸ける
この山巓の岩組を
雲がきれぎれ叫んで飛べば
露はひかってこぼれ
釣鐘人参(ブリューベル)のいちいちの鐘もふるへる
(略)
                                   詩 一八一「早池峰山巓」

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ツリガネニンジン(キキョウ科ツリガネニンジン属)釣鐘人参
山野や高原などに生える多年草。
釣鐘人参に賢治はブリューベルのルビを好んで使っている。英語のblue-bellは、ブルーベルで、野生のヒヤシンスのこと。日本の釣鐘草に対応するのはbell-flowerである。
賢治は釣鐘型のブルーの草花を、ブリューベルと呼びたかったようです。

早池峰山巓は、早池峰の山の頂上のこと。
捕虜岩(ゼノリス)は、地質学用語で、火成岩体中に取り込まれた(捕獲・捕虜となった)別種の岩石片のこと。
石絨は、せきじゅうと読むか、石綿、アスベストのこと。繊維状に成長するため神経のイメージと重ねたか。
早池峰山は、蛇紋岩や橄欖岩から成る残丘だという。頂上付近は岩場が多い。その地質学的な解説を賢治風に詩的に表現している。
(漢字は難しいですね。読みも表記も…。苦労します)
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早池峰山
山頂ではなくてごめんなさい。一昨年六月、小田越から入って針葉樹林帯を抜けたあたりです。
もう、頂上まで行く勇気はありません。
by nenemu8921 | 2008-09-04 14:30 | 植物 | Comments(6)

地蔵菩薩

(略)
そこではしづかにこの国の
古い和讃の海が鳴り
地蔵菩薩はそのかみの、
母の死による発心を、
眉やはらかに物がたり
孝子は誨へられたるやうに
無心に両手を合すであらう
(略)
              詩 506〔そのとき嫁いだ妹に云ふ〕


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和讃は和文の七五調の仏をたたえる歌。(漢文調の漢讃に対しての語)
これを節づけて詠唱するのが御詠歌。

地蔵菩薩は、釈尊の入滅後、弥勒仏の出生するまでの間、無仏の世界に住して六道の衆生を教化救済するという菩薩。

嫁いだ妹の幼子が手を合わせるのは、こんな地蔵がいかにもふさわしい気がする。
「春と修羅」第二集の作品である。
盛岡市郊外天峰山の尼寺にて出会った地蔵たち。
by nenemu8921 | 2008-07-26 00:41 | イメージ | Comments(10)

へんじしてくれ

いっしょうけんめいやってきたといっても
ねごとみたいな
にごりざけみたいなことだ
  ……ぬれた夜なかの焼きぼっ杭によりかかり……
おい きょうだい
へんじしてくれ
そのまっくろな雲のなかから
                        詩「雲」

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枯蓮
池の枯蓮を眺めていて面白いオブジェを見つけた。詩人は黒雲を眺めながらつぶやいているのだが。
(もちろん詩には直接関係のない画像です)
by nenemu8921 | 2008-02-22 22:55 | イメージ | Comments(4)

宮沢賢治の愛した鳥や植物


by nenemu8921