とうとう、天沢先生の訃報が届いた。
昨年末、思いがけず天沢先生から句集が届いたのですが、気になっておりました
『アマタイ句帳』(天沢退二郎著/思潮社刊/2022年7月31日初版
なぜなら、マリ林(奥さま)の後記には、氏が「散歩中道路で転び言語中枢を負傷し只今入院中ですが」という一文があったからです。
詳細は分からぬまま、案じておりました。
最近、俳句も短歌もブームのようですね。私は不調法でたしなみませんが、友人からの句集や歌集をいただくたびに戸惑いと申し訳ないような気分になります。
60年代の現代詩の伝説と言われているアマタイが、どんな句を詠むのか、ドキドキしながら拝読しました。しかし、難解で、私にはさっぱりつかめませんでした。
こんな句です。
冬葱をぷつりと断れば環形動物(アンネリダ)
大空を凍れる海鼠(ナマコ)渡りけり
アンネリダと言えば、『春と修羅』第1集に、蠕虫舞手《アンネリダタンツエーリン》という作品がありますけれども。
手水鉢のボーフラを見つめて、その動きをアラベスクの飾り文字に例えて歌っています。
また、賢治の海鼠も空の雲の動きを例えたものが多いですね。
天沢氏は「幽明偶輪歌」(平成13年(2001)刊)で、第53回読売文学賞詩歌俳句賞受賞されています。 ゆうめいぐうりんかと読みます。こちらも難解で、正直に言えば、ついていけません。
私が知っていたのは、賢治研究家としての天沢氏だけだったようです。
天沢先生と言えば、私が宮沢賢治学会の理事をしていたころ、何かとお会いする機会が多く、親切にご指導いただき、お世話になりました。
2004年には千葉賢治の会で宮沢賢治学会の地方セミナーを日蓮宗御本山清澄寺で行うことができ、基調講演をお願いしたことが忘れられない思い出です。
当時の新聞記事を紹介しますね。

こちらをクリックすると、テレビ朝日の訃報記事が読めます。
https://www.tokyo-np.co.jp/article/227962
「千葉 死場 詩場」こちらではいつもの天沢先生の笑顔が見られます。
千葉はアマタイにとって、詩の場であり、、死の場でもあったわけですね。
https://edgeofart.jp/%E5%8D%83%E8%91%89%E3%80%80%E8%A9%A9%E5%A0%B4%E3%80%80%E6%AD%BB%E5%A0%B4%E3%80%80%E5%A4%A9%E6%B2%A2%E9%80%80%E4%BA%8C%E9%83%8E%E3%81%AE%E9%81%8E%E5%8E%BB%E3%81%A8%E7%8F%BE%E5%9C%A8/
宮澤賢治は短歌をおよそ一〇〇〇首、詩を一〇〇〇編残しましたが、俳句は30句ほどにしかすぎません。
研究者の間では、あまり評価されていない印象です。。
でも、どんな句を残したのか気になりますよね。(^_-)-☆
胡四王山の南斜花壇には賢治の句碑があります。こんな句です。菊花品評会の折のもの、風耿(フウコウと読みます。賢治の俳号です)
斑猫(はんみょう)は二席の菊にねむりけり
狼星(シリウス)をうかがふ菊の夜更(よふけ)かな
秋田より菊の隠密(おんみつ)はいり候(そろ)
花はみな四方(よも)に贈りて贈りて菊日和
水霜(みずじも)をたもちて菊の重さかな 風耿(ふうこう)賢治の俳号です。
猫じゃらし死ぬまで自転車一人旅 アマタイ
天沢先生のご冥福を祈ります。