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アスパラガス

時計屋の店には明るくネオン燈がついて、一秒ごとに石でこさえたふくらふの赤い眼が、
くるっくるっとうごいたり、いろいろな宝石が海のやうな色をした厚い硝子の盤に載って、
星のやうにゆっくり循(めぐ)ったり、また向ふ側から、銅の人馬がゆっくりこっちへまはって
来たりするのでした。
そのまん中に円い黒い星座早見が青いアスパラガスの葉で飾ってありました。
                                             童話「銀河鉄道の夜」

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アスパラガス(ユリ科アスパラガス属)Asparagus spp.

アスパラガスの青い葉は、バラやカーネーションの花束に添えられるものでしたね。
最近ではかすみそうに代ってしまいましたが。

「えゝえゝ。さうです。おや、ごらんなさい。向ふの畑。ね。
光の酒に漬っては花椰菜でもアスパラガスでも実に立派なものではありませんか。」
                                        童話「チューリップの幻術」

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「アスパラガスは江戸時代にオランダ船から鑑賞用として日本にもたらされたが、食用として導入されたのは明治時代。そして本格的な栽培が始まったのは大正時代からで、欧米への輸出用缶詰に使うホワイトアスパラガスが始まりであった。その後国内でも消費されるようになり、昭和40年代以降はグリーンアスパラガスが主流となった。」と、Wikipediaにあります。

画像はこの九月に花巻郊外で撮影したもの。
車を止めて道をたずねたときに、眼に留まって撮影させてもらった。
赤い実が美しいが、野菜の栽培としては、こんなに実がついては如何なるものかと気になってしまった。
私が「下ノ畑」で栽培したときは、花を咲かせてしまい、野菜としては全然収穫できなかった。

「野菜はあなたがおつくりになるのですか。」
「お日さまがおつくりになるのです」
「どんなものですか」
「さやう、みづ、ほうな、しどけ、うど、そのほか、しめじ、きんたけなどです。」
「今年はうどの出来がどうですか」
「なかなかいゝやうですが、少しかほりが不足ですな。」
「雨の関係でせうかな。」
「さうです。しかしどうしてもアスパラガスには叶ひませんな。」「へえ」
                                 童話「紫紺染について」

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山男がイメージするアスパラガスはグリーンアスパラではなかったのでしょうか。
しかし、缶詰のホワイトアスパラを山菜と一緒にされてはなあ。。。と不審に思っておりました。


(略)
林は西のつめたい風の朝
頭の上にも曲った松がにょきにょき立って
白い小麦のこのパンケーキのおいしさよ
競馬の馬がほうれん草を食ふやうに
アメリカ人がアスパラガスを喰ふやうに
すきとほった風といっしょにむさぼりたべる
こんなのをこそspeisenとし云ふべきだ
   ……雲はまばゆく奔騰し
     野原の遠くで雷が鳴る……
林のバルサムの匂を呑み
あたらしいあさひの蜜にすかして
わたくしはこの終りの白い大の字を食ふ
                       詩「朝餐」

前半を省略しましたが、前後を勘案すれば、
白い小麦のこのパンケーキとは、大という文字を鋳出して焼いたせんべいである。
競馬の馬がほうれん草を食ふやうに、アメリカ人がアスパラガスを喰ふやうに
わたくしは朝の林の中で、すきとほった風といっしょに、これをむさぼるというのである。
speisen(シュパイゼン)はドイツ語で食事をするの意味らしい。
何故アスパラガスを食するかといえば、ドイツ人にとって、白いアスパラ、は春の訪れを告げる食べ物、
日本人が旬のタケノコを賞味するように、行事のように食するという。
こちらにドイツでの生活体験者のtamayamさんの記事があります。こちらをどうぞ。
賢治はおそらくそんなアスパラガスにまつわるエピソードを仄聞していたのだろう。
アメリカ人ではなくて、ドイツ人とすべきだった。食事もドイツ語なのだし。
賢治がイメージしていたアスパラガスとは、グリーン・アスパラでもなく、缶詰のアスパラでもなく、
旬を告げる野菜としてのSpargel(シュパーゲル)ホワイトアスパラだったのではないかしら。
などと妄想しています。

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ドイツの市場に並ぶアスパラガス。
画像はお借りました。
Commented by マングース at 2013-11-08 22:23
こんばんは。
私が6月に花巻へ行った時はちょうどアスパラガス
の花が咲いている時期でした。
今はこんなに可愛い果実を成らしているんですね♪
ドイツの方にとって春を告げる食べ物がホワイト
アスパラガスなんですか。
日本でも土の中からまだ出てきていない若い筍が
好まれるのと同じ感覚なのかもしれませんね^^
Commented by borancha at 2013-11-09 00:10
アスパラガスの赤い果実が見事ですね。
私も以前、撮ったことがありますが、ピントが合わず、
上手く撮れませんでした。
果実は種子をとるためなんでしょうか?
それとも観賞用?
Commented by nenemu8921 at 2013-11-09 10:48
マングースさん。
最近盛んな栽培野菜ですね。当たり前のように市場に並び、食卓で
なじみのあるこうした食材が、少し前まではたいそう珍しいものでした。
わたくしの子どもの頃はグリーンアスパラは見かけませんでいたから。
それよりも前の戦前に宮沢賢治はこうした野菜を気にかけていたのですね。
Commented by nenemu8921 at 2013-11-09 10:51
borancahさん。
撮影しにくい素材ですよね。
出来の悪い画像なので、記事にするか、~~、迷いました。
話題提供ということで、お許しいただきたい。
最近のものは花を咲かせても収穫できるのかな。
今度、花巻の農家の方に良く伺ってみます。
Commented by borancha at 2013-11-09 18:16
撮影しにくいですけど・・・
さすがにnenemuさんの写真は綺麗に撮れています。
Commented by nenemu8921 at 2013-11-11 23:36
boranchaさん。少し慰められる気分ですが。
もう少し、どうにかならなかったのかなと思ってしまいます。
by nenemu8921 | 2013-11-08 14:44 | 園芸植物 | Comments(6)

宮沢賢治の愛した鳥や植物


by nenemu8921