活版所
2014年 06月 14日
お店の一角に、昔、活版印刷をしていた時のままの様子をしのばせる状況が残されていました。
ジョバンニがアルバイトをしていた活版所を思い出し、撮影させていただきました。
(略)ジョバンニはすぐ入口から三番目の高い卓子に座った人の所へ行っておじぎをしました。
その人はしばらく棚をさがしてから、
「これだけ拾って行けるかね。」と云いながら、一枚の紙切れを渡しました。
ジョバンニはその人の卓子の足もとから一つの小さな平たい函をとりだして向うの電燈のたくさんついた、
たてかけてある壁の隅の所へしゃがみ込むと、小さなピンセットでまるで粟粒ぐらいの活字を次から次と
拾いはじめました。
青い胸あてをした人がジョバンニのうしろを通りながら、
「よう、虫めがね君、お早う。」と云いますと、近くの四五人の人たちが声もたてずこっちも向かずに冷くわらいました。
ジョバンニは何べんも眼を拭いながら活字をだんだんひろいました。
六時がうってしばらくたったころ、ジョバンニは拾った活字をいっぱいに入れた平たい箱を
もういちど手にもった紙きれと引き合せてから、さっきの卓子の人へ持って来ました。
その人は黙ってそれを受け取って微かにうなずきました。(略)
童話「銀河鉄道の夜」
2011年の3月11日の大震災の折に、活字が崩れて処分しようかと思っているところだということでした。
せっかくここまで残されてきたのに、
処分を考えているなんてもったいない!
先日入手した「注文の多い料理店」の復刻版も
活版印刷でしたが、味があって良かったです。
なんとか保存してその技術も継承していって
欲しいものです。