筑摩書房さんから新刊が届きました。宮沢賢治生誕120年記念出版だそうです。「銀河鉄道の夜」を連想させるすてきな装丁ですね。賢治作品の選集というか、アンソロジーでしょうか。
内容は次の通り。
編集委員は栗原敦・杉浦静。監修は天沢退二郎・入沢康夫先生方によるもの。
2016年12月25日初版・筑摩書房・¥2500+税
新校本宮沢賢治全集を底本とし、新修宮沢賢治全集や新潮社の文庫本などを参考にして校訂したという。
現代仮名遣いに改め、旧字、正字を常用漢字体に改め、句読点を補い、改行を施した箇所もあると、凡例に断りがある。
賢治作品はこれまで様々な経過を経て、世に紹介されてきたという経過があるせいか、原文偏重なところがあった。
研究者にとってはありがたいが、一般読者には読みにくかったと思う。
ようやく研究者向きでないというか、一般読者に向けての編集がなされるようになったなあという印象が強い。
市民向けの講座や子どもや児童文学にかかわる人の会などで、賢治作品を読みたいけれど、どの本を買ったらいいかわからないという声をよく聞く。
この本だったら紹介しやすいだろうか。
本文中に挿絵があればもっとよかったのにと思う。さりげない挿絵(カット)は、絵本形式のものとは全く別の魅力がある。
追記
このコレクションにも挿絵はあるんです。が、やはりアートテックなトーンなのですね。
例えば、「風の又三郎」、 「ポラーノの広場」 こんな風で、絵そのものは素敵ですが、こういうのって絵本でたくさんあるでしょう。
むしろ「風の又三郎」だったら、例えば「さいかち渕」のページに、サイカチの葉と実とか、
「ポラーノの広場」だったら、シロツメクサ(マメ科シャジクソウ属)の小さなカットなんかいいなあと思うのです。「つめくさって、クローバーのことだったんですか」といった賢治ファンもいますし、ナデシコ科ツメクサ属のツメクサを紹介していた研究者も見かけました。植物画、細密画はカットとしても美しいし、作品を文章で読む時に、読者がイメージを膨らませることを損なわず、さりげない資料にもなると思うのです。編集レベルの問題だと思います。