つゆ
2006年 11月 28日
その十力の金剛石こそは露でした。
あゝ、そしてそして十力の金剛石は露ばかりではありませんでした。
碧いそら、かゞやく太陽、丘をかけて行く風、花のそのかんばしいはなびらやしべ、
草のしなやかなからだ、すべてこれをのせになふ丘や野原、王子たちのびろうどの
上着や涙にかゞやく瞳、すべてすべて十力の金剛石でした。
童話「十力の金剛石」
王子と大臣の子どもは虹の脚もとにあるというルビーの絵の具皿を探しに出かけます。
霧が晴れて出た虹を追って二人は森に入ります。そこへ歌とともに現れた蜂雀たち。
蜂雀たちと丘に登れば、宝石の雨が降り注ぎます。見れば草花もみな宝石類です。
その花が十力の金剛石が来ない寂しさを歌います。やがて十力の金剛石が降り、地はみな潤います。
十力の金剛石とは露であり、万象を輝かしめるそのものでした。
金剛石はダイヤモンド、十力は仏のもつ十種の智力のこと。