トキ
2008年 01月 28日
桜草はその靭(しな)やかな緑色の軸をしづかにゆすりながら、ひとの聞いてゐるのも知らないで斯(こ)うひとりごとを云ってゐました。
「おひさんは丘の髪毛の向ふの方へ沈んで行ってまたのぼる。
そして沈んでまたのぼる。空はもうすかり鴇の火になった。
さあ、鴇の火になってしまった。」
若い木霊は胸がまるで裂けるばかりに高く鳴りだしましたのでびっくりして誰かに聞かれまいかとあたりを見まはしました。その息は鍛冶場のふいごのやう、そしてあんまり熱くて吐いても吐いても吐き切れないのでした。
(略)
童話「若い木霊」
トキ(コウノトリ目トキ科)鴇 朱鷺
画像は中国の野生のトキである。成鳥だという。
「タネリはたしかにいちにち噛んでゐたやうだった」の前身ともいえるこの「若い木霊」では、トキは、官能的イメージ、性的なシンボルを象徴するかのように登場する。
明治33年に岩手県宮古地方で捕獲されたトキが国立科学博物館に保存されている。
大正期、一般的には既に絶滅した鳥と考えられていたようだ。
賢治の独自なトキのイメージは、当時既に幻の鳥として、美しい羽色が話題になったことや、博物館などで見聞する機会のあった標本の印象もあったと思われる。
トキは下に曲がった大きな嘴をもち、赤い顔をし、短い脚で、奇妙な雰囲気の鳥でもある。
実際のトキは、ダォと鳴き、臆病で動作も鈍かったゆえに簡単に捕獲され、明治以後激減してしまった。
トキは一年のうち約半分は灰色をしている。この灰色の羽を生殖羽と呼ぶ。賢治はこの生殖羽のトキを描いていない。
実際のトキに出会う機会はなかったのであろう。
冬場は植物の写真が少なくて、話題を広げてしまいます。
すると、解説に困るような詩句が多くて、コマッタ、コマッタと楽しんでいます。!(^^)!
桜草が咲くまで、まだまだですね。
賢治の地元のトキが国立の施設に収蔵されているとは知りませんでした。
ぜひsamさんの画像拝見したいです。
どうも資料的な内容に関心がいくものですから写真の腕は少しも上達しませんが、友人たちのご支援を頂き続けています。
こもれびさんのページを拝見して勉強しますね。どうぞ、よろしく。