2011年 11月 25日 ( 1 )

帆布

氷河鼠(ひようがねずみ)の上着を有(も)つた大将は唇(くちびる)をなめながらまはりを見まはした。
『君、おい君、その窓のところのお若いの。失敬だが君は船乗りかね』
 若者はやつぱり外を見てゐました。月の下にはまつ白な蛋白石(たんぱくせき)のやうな雲の塊が走つて来るのです。
『おい、君、何と云つても向ふは寒い、その帆布一枚ぢやとてもやり切れたもんぢやない。けれども君はなかなか豪儀なとこがある。よろしい貸てやらう。僕のを一枚貸てやらう。さうしよう』
 けれども若者はそんな言(げん)が耳にも入らないといふやうでした。つめたく唇を結んでまるでオリオン座のとこの鋼いろの空の向ふを見透かすやうな眼をして外を見てゐました。
                                   童話「氷河鼠の毛皮」


帆布一枚とはどんなものかと思っていました。
先日、岡山へでかけた家人の土産の中に倉敷名産の帆布製の手提げ袋がありました。
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「えっ、このゴワゴワの布一枚なの!!……」

これってズックですね。
私が子どもの頃、男の子は白いズックの肩掛け鞄を愛用していました。
と思ったら、街角で出会いました。現役の中学生もズックカバン、健在のようです。
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そういえば、賢治作品にも次の一節があります。
(大学生。制服制帽。大きなめがね。灰色ヅックの提鞄)
                        短篇「電車」


帆布(はんぷ、canvas)とは平織りで織られた厚手の布である。綿または麻で作られる。
帆船の帆に使うための、厚手で丈夫な布として作られたのが始まりで、現在では通学用のカバン・エコバッグ、襦袢に付ける衿芯、丸帯・名古屋帯等の帯芯、相撲の廻し、油絵用のキャンバス、テントの天幕など建築材料、各種幌、競走馬用のゼッケン等に使われる。目的に応じて、厚み、硬さが何段階かある。(Wikipediaより)
by nenemu8921 | 2011-11-25 00:29 | その他 | Comments(12)

宮沢賢治の愛した鳥や植物


by nenemu8921