苗代の水を黒く湛えて
そこには多くの小さな太陽
また巨大なるヘリアンサスをかゞやかしむる
            詩「装景家と助手との対話」


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ヒマワリ(キク科ヒマワリ属)向日葵
北米原産の一年草。
学名はHelianthus annuus L.で、Helianthus(ヘリアンサス)は、ギリシャ語の 「helios(太陽)+ anthos(花)」が語源。つまり ”太陽の花”の意味。
ヒマワリは既に紀元前からインディアンの食用作物として重要な位置を占めていた。種子は食用にもなり、油も取れるが、賢治はそのことに触れていない。
園芸種としては切花用の矮性種や、シックな赤い花びらのもの、八重咲き種など改良種が目覚しく、100種以上あるという。

田の畦に大きなヒマワリの花を咲かせれば、苗代の水にいくつもの太陽が輝くように、映ってさぞ、立派だろう。いかにも賢治風である。が、……。
# by nenemu8921 | 2007-07-25 18:17 | 植物 | Comments(5)
つりがねさうか野ぎくの花が、そこらいちめんに、夢の中からでも薫りだしたといふやうに咲き、鳥が一疋、丘の上を鳴き続けながら通って行きました。
                                       童話「銀河鉄道の夜」


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ホタルブクロ(キキョウ科ホタルブクロ属)蛍袋
各地の丘陵や山地に生える多年草。和名の由来は、この花の中に子どもが蛍を入れて遊んだことによるとか、ちょうちんの昔の呼び名である「火垂る袋」によるものとか云われている。

ツリガネソウという名は標準和名では存在しないが、一般的に、釣鐘状の花をつけた植物(ホタルブクロ、ツリガネニンジン、シャジンの仲間など)の総称である。
賢治の表記はさまざまであるが、作品の背景を考慮し、詩的エッセンスを配慮すれば、ブリューベルやツリガネソウもイメージが明確になることもある。

「オホーツク挽歌」の「不思議な釣鐘草(ブリーベル)はハマベンケイソウであろうし、
「早池峰山巓」の「釣鐘人参(ブリューベル)のいちいちの鐘もふるへる」とあるのは、ツリガネニンジンであろう。
「銀河鉄道の夜」では、あかりのイメージがあるホタルブクロがよく似合う。

ブリューベルは、blue bell(英・一般に青いついがね型の花の咲く草)で、おしゃれに呼んでみたもの。
「新宮沢賢治語彙事典」では、フランス語、ドイツ語。英語のさまざまな意味を調べて、首をかしげているが、書斎の知識だけでは賢治文学は解読できない。
直観力とアバウトさも賢治のネーミングの手法なのだ。
# by nenemu8921 | 2007-07-23 12:19 | 植物 | Comments(4)

オミナエシ

ある死火山のすそ野のかしはの木のかげに、「ベゴ」といふあだ名の大きな黒い石が、永いことじいっと座ってゐました。
(略)
はじめは仲間の石どもだけでしたがあんまりベゴ石が気がいいので、だんだんみんな馬鹿にし出しました。
をみなへしが、斯う云ひました。
「ベゴさん。僕は、たうとう、黄金のかんむりをかぶりましたよ。」
「おめでたう。をみなへしさん。」
「あなたは、いつ、かぶるのですか。」
「さあ、まあ私はかぶりませんね。」
「さうですか。お気の毒ですね。しかし、いや。はてな。あなたも、もうかんむりをかぶってるではありませんか。」
をみなへしは、ベゴ石の上に、このごろ生えた小さな苔を見て、云ひました。
ベゴ石は笑って、
「いやこれは苔ですよ。」
「さうですか。あんまり見栄えがしませんね。」
                      童話「気のいい火山弾」


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オミナエシ(オミナエシ科オミナエシ属)女郎花
日あたりのよい山地や丘陵に生える多年草。女郎花と書くが、これは漢名ではない。
名前の「オミナ」は「美しい女性」、「エシ」は「飯」の意とする説もある。同属のオトコエシに比べて弱々しいからである。
全国の草地や林縁に普通な植物であったが、近年は少なくなった植物。
秋の七草の一つだが、もう咲き始めている。梅雨明けもまだだというのに。


いかにもオミナエシの花は素朴な黄金のかんむりである。
# by nenemu8921 | 2007-07-21 10:56 | 植物 | Comments(6)

ノカンゾウ

日ざしがほのかに降ってくれば
またうらぶれの風も吹く
にはとこやぶのうしろから
二人のをんながのぼって来る
けらを着 粗い縄をまとひ
萱草の花のやうにわらひながら
ゆっくりふたりがすすんでくる
その蓋のついた小さな手桶は
きょうははたけへのみ水を入れて来たのだ
今日でない日は青いつるつるの蓴菜を入れ
欠けた朱塗の椀をうかべて
朝の爽やかなうちに町へ売りにも来たりする
鍬を二梃たゞしくけらにしばりつけてゐるので
曠原の淑女たちよ
あなたがたはウクライナの
舞手のやうに見える
   ……風よたのしいおまへのことばを
      もっとはっきり
      この人たちにきこえるやうに云ってくれ……
        詩「曠原淑女」(〔日脚がぼうとひろがれば〕下書稿(一))


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ノカンゾウ(ユリ科ワスレグサ属)野萱草
野原や山麓に生える多年草。ヤブカンゾウより、やや小ぶりで一重咲き。

賢治は萱草といっているので、ヤブカンゾウでもノカンゾウでもいいのだが、この詩のイメージとしては、ノカンゾウがいいなと思う。
この作品は手入れされて、定稿では「睡蓮の花のやうにわらひながら」となる。

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ジュンサイ(ハゴロモモ科ジュンサイ属)蓴菜
多年生の水生植物である。澄んだ淡水の池沼に自生する。若芽の部分を食用にするため、栽培されている場合もある

花巻でよくお世話になる「ならの里」というユースでは、このジュンサイを自家栽培していて、よくご馳走になる。
この宿のすごいのは、野菜、ヨーグルト、漬物、みな自家栽培の新鮮な素材をつかっているところだ。
# by nenemu8921 | 2007-07-19 23:31 | 植物 | Comments(6)

アジサイ

あぢさゐいろの風だといふ
雲もシャッツも染まるといふ
ここらの藪と火山塊との配列は
そっくりどこかの大公園に使へるといふ
(略)
           詩「林学生」(下書稿二)


ヤマアジサイ(ユキノシタカアジサイ属)
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タマアジサイ(ユキノシタ科アジサイ属)
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アジサイ(園芸種)
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アジサイ(ユキノシタ科アジサイ属)紫陽花
日本原産の落葉低木。原型種のガクアジサイを品種改良し、園芸種として現在花の形・大きさなど数多くの種類がある。現在、庭木では日本から西洋に渡り品種改良されたセイヨウアジサイが多く見られるが、日本に多くの種類が自生する。
学名はHydrangea、「水の容器」という意味。学名のままヒドランジアあるいはハイドランジアということもある。

この作品の定稿では
ラクムス青(ブルー)の風だといふ
シャッツも手帳も染まるといふ  と、手入れされている。
ラクムスはアルカリに入れると青に変化するリトマスのこと。
アジサイの花の色が土壌の酸性度によって変化することからの発想か。

さて、アジサイいろの風とは?
# by nenemu8921 | 2007-07-18 22:42 | 植物 | Comments(4)

ヘンルータ→ルー

(略)
北の和風は松に鳴り
稲の青い鑓ほのかに旋り
きむぽうげみな
青緑或はヘンルータカーミンの金平糖を示す
(略) 
                     詩ノート〔午はつかれて塚にねむれば〕


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ルー(ミカン科ヘンルーダ属)
ヘンルーダ(ヘンルータ)は、江戸期にこの花が渡来したときのオランダ語が訛ったたもの。英語ではコモンルー(common rue)あるいは単にルー(rue)と言う。学名は Ruta graveolens 。
最近ではハーブ・ブームで、ルーまたはヘンルーダで流通している。
地中海沿岸地方の原産の多年草。樹高は50cmから1mほど。
シェークスピアにもギリシャの自然誌にも登場する由緒正しい薬草で、魔女を追い出し、疫病を払うと伝えられてきた。柑橘にも似たこの香りは、ネコが嫌がるというので猫寄らずという別名もある。わが「下ノ畑」の隣人は猫よけに植えている。

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ウマノアシガタ(キンポウゲ科キンポウゲ属)←きむぽうげ
草原や水田の畦にも多い多年草で、賢治はよく目にしたと思う。お気に入りだったようだ。他の作品ではバターカップという英名でも、しばしば登場する。

キンポウゲ(ウマノアシガタ)の花後の果実を見て、このルーの果実も、似ていることを想起したのであろう。どちらも金平糖に似ていることからの連想。
カーミンは、carmine(英・深紅色の)か? 日本で流通しているルーは、殆んど黄色い品種で、紅いルー(ヘンルータカーミン)は、市場にはないという。宮沢賢治の博識には驚くばかりだが、実際にこの花を見る機会はあったのだろうか?書物からの知識だろうか。
# by nenemu8921 | 2007-07-16 00:18 | 植物 | Comments(5)

ザクロ

     〔九月一日〕

 どっどどどどうど どどうど どどう
 ああまいざくろも吹きとばせ
 すっぱいざくろもふきとばせ
 どっどどどどうど どどうど どどう

 谷川の岸に小さな四角な学校がありました。
 学校といっても入口とあとはガラス窓の三つついた教室がひとつあるきりでほかには溜りも教員室もなく運動場はテニスコートのくらゐでした。
                                       童話「風野又三郎」


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ザクロ〔ザクロ科ザクロ属〕柘榴 石榴
庭木、盆栽など観賞用に栽培されることが多く、矮性のヒメザクロ(鉢植えにできる)や八重咲きなど多くの栽培品種があり、古典園芸植物のひとつでもある。

本篇をのちに全面的に改作、発展したものが、賢治の代表作の1つである「風の又三郎」である。
冒頭の歌もざくろではなく、青いくるみやすっぱいくゎりんが登場する。
「風野又三郎」では、又三郎は風の精というよりは、気象化学に基づいた風の擬人化といった趣が強い。
物語には二百十日の台風の到来が組み込まれている。

今夜、日本列島は季節外れの台風襲来で雨風が吹き荒れている。
先日、近所の寺院の境内で撮ったこのザクロの実も、もう吹き飛ばされているかもしれない。
# by nenemu8921 | 2007-07-15 00:35 | 植物 | Comments(2)

チーゼル



  どこからかチーゼルが刺し
  光パラフヰンの 蒼いもや
  わをかく わを描く からす
  烏の軋り……からす機械
(略)
                詩「陽ざしとかれくさ」
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チーゼル(マツムシソウ科ナベナ属)
ヨーロッパ原産の二年草、葉は皮針形。6~8月ごろ、淡紫色の細かな花が密生した大きな頭状花序をつける。果実の穂にある小包片は極めて多数で、先端が鉤(かぎ)状になっているので羅紗製造の際、起毛に用いる。
別名を羅紗掻草(らしゃかきぐさ)、鬼ナベナとも言う。

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この作品に関して賢治の弟の宮沢清六さんが、解説めいたていねいなご文章を残している。
「あたりがしんと静まり、気圧の重さで空気がみんみん鳴るようでもある。
実習服の破れ目か首すじからか、枯草がチクチクからだを刺し、丁度、薊刷毛(チーゼル)でもからだのなかにあるようだ。
そこで向きを変えれば、杉の梢が1列目に見えてくる。
実習の疲れと、空腹のために意識がぼんやりし、だんだん足も頭も軽くなって、からだが空気の中に浮び上り、目の前に青く光ったパラフィンのもやのようなものが見えてくる。」
(略)」
                                     『兄のトランク』(筑摩書房)より。




   
# by nenemu8921 | 2007-07-12 17:12 | 植物 | Comments(4)

セイタカシギ ヒナ誕生

セイタカシギのヒナ誕生の知らせを頂き、ようやく会いに行ってきました。

1、7月1~2日に生まれました。
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2、ムッキーとモッキーです。
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3、、ひとりで遠くへ行ってはいけませんよ。
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4、だいじょうぶだい、おさんぽしてこよっと。~~~~
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5、ブルブル、ブル……。ああ、こわかった。大きな長いものがぼくをにらんだよ。
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6、それは蛇っていうんだよ。もう、だいじょうぶよ。さあ、翼にお入り。
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7、ムッキーも無事でよかったね。ほら、翼は2つあるからね。
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8、ほーらね、あたたかいでしょ。
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小雨の中、あのヤンママはがんばっていました。
オオヨシキリでも、ツバメでもテリトリーにちょっと入ると、すごい剣幕で威嚇して追い出していました。
でも2羽のヒナはチョコチョコとよく歩き、時々甘えるように親鳥の翼の中で休んでいました。
もちろん、パパも協力的です。交代でヒナの面倒を見ています。パパ(♂)とママ(♀)の違いはわかりますか。

9、パパ。お兄ちゃんばかり!! ずるいよォ。ぼくも入れてよ。
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セイタカシギ(チドリ目セイタカシギ科)
1960年くらいまではまれな旅鳥であったが、最近では渡来記録もふえ、愛知、千葉では繁殖
例も多く、留鳥化している。

谷津干潟観察センターの職員の話では
今年は、この周辺で、セイタカシギの営巣が7例確認されたが(同じカップルが2回営巣した例もある)、これまでにぶじ成鳥となって巣立ったのを確認できたのは1羽のみとのこと。
セイタカシギは地上の浅いくぼみに貝やアシの茎を敷き、巣をつくり、ふつう4卵産むが、ここ谷津干潟では淡水池に、鳥たちの休憩用にとつくられたお立ち台(?愛称)です)で、営巣するケースが多いという。
この若いカップルも4つ産卵したが、蛇かカラスか、天敵に1卵はとられ、3羽が7月1日から2日にかけて孵化した。最初に孵化した1羽は不幸にも巣から水に落ち、這い上がることができなかったという。実際野生の生物がぶじ大人になれる確率は驚くほど低いのだ。
けれども残りの2羽のヒナはこのように元気で、すくすく成長している。
どうか無事に成鳥になって、大空に羽ばたいて行くことができますように。
(下手な写真にお付き合いさせて恐縮です)
# by nenemu8921 | 2007-07-11 00:07 | 番外 | Comments(8)

グラジオラス

一九二五、 十一月十日。
 今日実習が済んでから農舎の前に立ってグラジオラスの球根の旱(ほ)してあるのを見てゐたら、武田先生も鶏小屋の消毒だか済んで、硫黄華(いおうか)をずぼんへいっぱいつけて来られた。
そしてやっぱり球根を見てゐられたが、そこから大きなのを三つばかり取って僕に呉れた。
僕がもぢもぢしてゐると、これは新しい高価(高)い種類だよ。君にだけやるから来春植えてみたまへと云った。(略)
                                         「或る農学生の日誌」


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グラジオラス(アヤメ科グラジオラス属)
アフリカや地中海沿岸などを原産地とする園芸植物。春に球根(球茎)を植え、夏に赤、黄、白などの花を開花する。葉(一説には花が咲く前の一連のつぼみ)が剣のようなのでGladius(ラテン語で「剣」)にちなんで名づけられた。別名、トウショウブ(唐菖蒲)、オランダショウブ(阿蘭陀菖蒲)。

最近宮沢賢治とグラジオラスをめぐって興味ふかいエピソードが紹介されている。
「森のミュージアム・賢治とモリスの館」さんに拠れば、
花巻市桜町の「賢治詩碑」、つまり羅須地人協会の跡地に隣接する協会メンバー故伊藤克己氏宅(現在、伊藤明治宅)で、協会メンバー2世(妻、弟、甥、息子、娘等)9名参加による座談会が開かれました。とあり、

 「ある時先生から、グラジオラスを植えてみませんかとすすめられました。
グラジオラスというのはどんな花ですかと聞き返しましたら、
ナガラベットのことだということがわかりました。
それならうちの庭にも沢山ありましたし、あまり気乗りがしませんでしたが、
せっかくすすめられるものですから植えてみることにしました。
 夏がやって来て、新しく植えたグラジオラスが次から次へと咲き始めました。
花は赤、白、黄、紫と全く色とりどりのきれいな花なのです。
うちにあるナガラベッドとはあまりにも違う花なのでびっくりしました。
グラジオラスは忽ち近所の評判になり、わざわざ見に来る人もたくさんありました。
その花はたいてい近所の人に分けてやりました。」と、
羅須地人協会2世の座談会の一部が紹介されている。

宮沢賢治は、羅須地人協会時代に、近隣の人へ、グラジオラスの栽培を進め、たいそう立派な花を咲かせて話題になったということですね。
きっとそれは「新しい高価(高)い種類」だったのでしょう。

でも、ナガラベット?とは
ナガラベットとはグラジオラスの方言でしょうか?
日ごろ、何かとご教示を頂く壺中人さんから、森口多里著「町の民俗」(三國書房・昭和19年初版)をご紹介いただいた。
岩手県水沢出身の民俗学者、森口氏は「大正初年から昭和18年までの間帰郷の折々に聞いて書きとめておいた」もろもろの話を郷土にたいする愛情と家に対する郷愁を随筆の形式で表白したものとはしがきで述べているが、宮沢賢治の時代でもあり、地理的には花巻に近い水沢が舞台で、読んでみると、たいへんに興味深い内容が詰まっている。
そして、「動植物と方言」の章に、
「母がグラジオラスを「ナガラ別當」と呼んだのは一個人の瓢軽な思いつきだつたのであらう。花茎が長くステッキのように延びるからである。」とあった。
ふーむ、ナガラベットはナガラ別当なのだ!!と驚いたが、若い読者にはぴんと来ないかもしれない。
蛇足を承知で、補足させて頂くと、別当(べっとう)は、本来、本官を持つ者が他の管轄の役職を持つ場合に、それを補佐する役職名だそうで、このことから転じて、以下のような複数の意味を持つ。
①律令制度の下で、令外官として設置された検非違使庁や蔵人所の長官。
②平安時代以降の院、親王家、摂関家の政所の長官。鎌倉幕府の政所、侍所、公文所などの長官。
③東大寺、興福寺、四天王寺などの諸大寺で、寺務を司る者。なお、僧侶身分では無い者が別当に就任した場合にはそれを「俗別当(ぞくべっとう)」と呼ぶ。
④神宮寺の寺務を司る者。検校に次ぐ。別当がそこに住んだことから神宮寺の一部を別当寺とも言う。それを指す場合もある。
⑤当道座における盲人の官位の1つ。検校に次ぐ。
⑥日本人の姓の1つ。別当薫(元プロ野球選手)など
⑦かつての厩務員の呼称。

「どんぐりと山猫」に登場する馬車別当は⑦の厩務員(きゅうむいん)の呼称に当るのでしょうね。
ここでは⑤の盲人のお役人といったところで、それゆえに杖が登場するのでしょう。

つまり、簡単にいってしまえば、グラジオラスの花茎が杖のように長く伸びることから、盲人のお役人の使うステッキ(杖)を連想してのネーミングだったというわけですね。
森口氏の母上の一個人の瓢軽な思いつきだつたのか、どうか。賢治の時代、羅須地人協会周辺の人達もまた、グラジオラスのことをナガラベットと呼んでいたというわけです。
# by nenemu8921 | 2007-07-09 00:15 | 植物 | Comments(9)

宮沢賢治の愛した鳥や植物


by nenemu8921