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【60】 水仙

「カシオピイア、
もう水仙が咲き出すぞ
おまへのガラスの水車(みづぐるま)
きつきとまはせ」
         童話「水仙月の四日」


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ニホンスイセン(ヒガンバナ科スイセン属)
日本では最も古くから園芸化された球根植物。房総や伊豆、南紀などでは、野生化したこの花の大群生地が観光名所にもなっている。
昨今ではラッパスイセンやクチベニスイセンなど数多くの園芸種があるが、賢治の時代はチューリップやヒヤシンスでさえ、一般的には珍しい花だった。
春一番に咲き始める香りのよいニホンスイセンこそ、水仙月のイメージにふさわしい。
ところで、水仙月とはいつかという命題には、これまでもさまざまな論があるが、どれもなるほどと思うものの、ムキになって定義しなくともいいなとも感じてしまう。

今年も私の「下ノ畑」では静かに咲き始めた。
# by nenemu8921 | 2007-01-15 16:14 | 植物 | Comments(0)

【59】 半透明な緑の蜘蛛

それはちひさな蜘蛛の巣だ
半透明な緑の蜘蛛が森いっぱいにミクロトームを装置して
虫のくるのを待ってゐる
にもかかわらずは虫はどんどん飛んでゐる
あのありふれた百が単位の羽虫の輩が
みんな小さな孤光燈といふやうに
さかさになったり斜めになったり
自由自在に一生けんめい飛んでゐる
                 詩〔落葉松の方陣は〕


半透明な緑の蜘蛛とは何か?
賢治作品に登場するクモは、植物や鳥に比べれば、そう多くはない。
カラマツ林(落葉松)のなかで見つけた半透明の緑のクモとは何か?
ミクロトーム(microtome)は、顕微鏡で観察する際の試料を薄く切るための装置。
ここではクモの巣を比ゆしている。
網を張る緑色のクモは、水平円網を張るウロコアシナガグモ(アシナガグモ科)、エゾアシナガグモ(アシナガグモ科)、サツマノミノダマシ(コガネグモ科)などがある。
サツマノミノダマシは昼間は葉裏に隠れていて、夕方になるとすばやく円網を張る。山の林道から都会の公園まで、広く見られる。
ワカバグモ(カニグモ科)、ツユグモ(カニグモ科)、ハナグモ(カニゴモ科)も美しい緑色のクモだが、徘徊性で、網は張らず、大きな前足を広げて虫を待ち伏せして捕獲する。
『宮沢賢治語彙辞典』ではワカバグモとしているが、これは明らかな早とちりといえそうだ。

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ウロコアシナガグモ 画像提供は福光村昆虫記さん
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サツマノミノダマシ 私の「下ノ畑」で、昨年7月にアガバンサスの葉の上で見つけたもの。夕方になっても網は発見できなかった。

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ワカバグモ 画像提供は虫ナビさん

「下ノ畑」ニ居リマス
住まいのベランダから見下ろせる場所に市民農園の一角を借りて小さな畑で、花や野菜を作っています。
猫の額というより、鼠の額ほどのスペースで、「下ノ畑」と呼ぶのはおこがましいのですが、宮沢賢治が愛した植物を実際に育ててみますと、新たに発見するものも多いことは確かです。
冷や汗ですが、少しづつこの「下ノ畑」も紹介したいと思います。
# by nenemu8921 | 2007-01-13 23:52 | 昆虫・クモなど | Comments(0)

【58】 蜘蛛の巣

風がにはかに吹きだすと
暗い虹だの顫えるなみが
息もつけなくなるくらゐ
そこらいっぱいひかり出す
それは小さな蜘蛛の巣だ
半透明な緑の蜘蛛が
森いっぱいにミクロトームを装置して
虫のくるのを待ってゐる
        詩〔落葉松の方陣は〕


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画像提供は堀内洋助さん
# by nenemu8921 | 2007-01-11 23:08 | その他 | Comments(2)

【57】 氷の羊歯

船乗りの青年はポケットから小さなナイフを出してその窓の羊歯(シダ)の葉の形をした氷をガリガリ削り落としました。削り取られた分の窓ガラスはつめたくて実によく透きとほり、向ふでは山脈の雪が耿々とひかり、その上の鉄いろをしたつめたい空には、まるでたつたいまみがきをかけたやうな青い月がすきつとかゝつてゐました。
                                               童話「氷河鼠の毛皮」

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画像提供はてっちゃんです。

今年はあちこちから暖冬の便りが届きます。イーハトーブでもこんな情景は見られないのかもしれない。北海道紋別市郊外山ん中在住のてっちゃんによれば、こんな氷の羊歯は、マイナス10℃ぐらいにならないと見られないそうです。
# by nenemu8921 | 2007-01-09 00:30 | 気象 | Comments(0)

【56】 太陽 1

(ちゃんと今朝あのひしげて融けた金の液体が
青い夢の北上山地からのぼったのをわたくしは見た)
                           詩「白い鳥」


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画像提供は堀内洋助さん

賢治作品には太陽が頻繁に登場する。その呼び名も「お日さま」「日輪」「日天子」「陽」「おキレさま」「光炎菩薩」「太陽マジック」「喪心のしろいかがみ」などと独特である。
その形容も朝日が青かったりして面白い。「銅(あかがね)づくりのいきもの」だったり、「日はトパーズのかけらをそそぎ」「ひはうつくしい孔雀石色に着飾って」などと鉱物的表現も宮沢賢治ならではのものだ。花巻農学校の精神歌は太陽賛歌そのものである。
ここでは《ひしげて融けた金の液体》という独特の表現を美しく捕えた画像を紹介する。背景は北上山地ではなく、渡良瀬遊水地である。
# by nenemu8921 | 2007-01-08 04:14 | 気象 | Comments(0)

【55】 カラフトの花 10

シロバナシナガワハギ(マメ科シナガワハギ属)白花品川萩
中央アジア原産の渡来植物。小さい白花を咲かせることからコゴメハギ(小米萩)とも呼ばれるそうです。
同じ仲間のシナガワハギが、なんと今の季節咲いている便りを拝見して、びっくりしました。
暖冬ですね。
腰痛の身には助かりますが、宮沢賢治風に言えば、こんな暖かい冬は宇宙意志的には問題があるのでしょうね。

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オオハナウド(セリ科ハナウド属)大花独活
サガレン旅行の賢治の足取りは不明な部分も多いが、カラフト小沼(現在のノポアレクサンドロフスク)にあった樺太庁農事試験場を賢治が訪れたであろうという説も有力だ。
そこは現在警察大学とロシア・アカデミー海洋地層地質学研究所となっていた。
その敷地内には、この月光色の散形花、オオハナウドが群生していた。
このセリ科の花の同定には花柄クジラさん、 てっちゃんのご親切なアドバイスがあってのことであります。
ネット上の友情に、感激しております。

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# by nenemu8921 | 2007-01-07 11:23 | 植物 | Comments(0)

【54】 カラフトの花 9

エゾウスユキソウ(キク科ウスユキソウ属)蝦夷薄雪草
別名をレブンウスユキソウという

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メアカンフスマ(ネデシコ科ノミノツヅリ属)雌阿寒衾
小さな小さな花だけれど、心に残った

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# by nenemu8921 | 2007-01-06 21:39 | 植物 | Comments(2)

【53】 カラフトの花 8

稚内でも、初めて見る植物は多かった。北海道とサガレンの植物は共通したものも多い。
観光客向けに整備された駅前の小さな花壇で、利尻、礼文の植物も見ることが出来た。
おそらく、宮沢賢治にとっても、初めての風物は多かっただろうと思われるのだが……。

アメリカオニアザミ(キク科アザミ属)アメリカ鬼薊
びっくりするほど大きなアザミ。ヨーロッパ原産。最近北海道で増えているという。
民家の庭先で堂々と咲いていた。
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リシリヒナゲシ(ケシ科ケシ属)利尻雛罌栗
日本で自生する唯一のケシだそうです。稚内駅前花壇で
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キクバクワガタ(ゴマノハグサ科ルリトラノオ属)菊葉鍬形
稚内駅前花壇で
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# by nenemu8921 | 2007-01-05 00:22 | 植物 | Comments(2)

【52】 カラフトの花 7

たしかに日はいま羊毛の雲にはひろうとして
サガレンの八月のすきとほつた空気を
やうやく葡萄の果汁(マスト)のやうに
またフレツプスのやうに甘くはつかうさせるのだ
そのためにえぞにふの花が一そう明るく見え
松毛虫に食はれた枯れたその大きな山に
桃いろな日光もそそぎ
すべて天上技師Nature氏の
ごく斬新な設計だ
                詩「樺太鉄道」


訂正します。
えぞにふ エゾニュウ(セリ科シシウド属)蝦夷ニュウ
賢治はセリ科の植物を好んだようで《月光色の散形花》という表現が他の作品でも登場する。
エゾニュウはセリ科の中でもひときわ大きく成長し、草丈2mにもなる。
山地の草原でたくさん見かけた。
としましたが、これはエゾノヨロイグサ(セリ科シシウド属)蝦夷鎧草と思われます。
ご親切なアドバイスを下さったてっちゃん花柄クジラさんに感謝し、訂正させていただきます。どうか、今後もよろしく。
気がついたことがありましたら、皆さん気軽に声をおかけください。
宮沢賢治も間違えた可能性もあります。

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# by nenemu8921 | 2007-01-03 00:18 | 植物 | Comments(2)

【51】 カラフトの花 6

賢治が教え子の就職依頼のために細越健を訪ねた王子製紙の大泊工場は、廃墟化し、残されたままの巨大な建物は閑散としていた。その敷地内の空き地や、市内の道端などでしばしば目についたゴボウのようなアザミのような植物。
栽培種のゴボウが野生化したものか?
ゴボウか? エゾノサワアザミか?
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エゾノキツネアザミ(キク科アレチアザミ属) 蝦夷狐薊
だと思うのですが…。郊外の草地で。
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やはり道端や空き地でよく見かけた植物だが、同定できない。
色違いの花もあった。
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# by nenemu8921 | 2007-01-02 00:02 | 植物 | Comments(4)

宮沢賢治の愛した鳥や植物


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