5月です
鳥捕りですね。この物語の中でも、最も不思議な人ですね。
するとあの鳥捕りは、すっかり注文通りだといふやうにほくほくして、両足をかっきり六十度に開いて立って、
鷺のちぢめて降りて来る黒い脚を両手で片っ端から押へて、布の中に入れるのでした。
すると鷺は、蛍のやうに、袋の中でしばらく、青くぺかぺか光ったり消えたりしてゐましたが、おしまひたうたう、みんなぼんやり白くなって、眼をつぶるのでした。
この場面は、「銀河鉄道の夜」でも非常に心に残るところですね。
眼に見えるように具体的な描写で、視覚化すると、幻想的な光景で、詩的です。
この物語の主題とか、ジョバンニの心象とは、関係ない場面なのですけれど。
6月です。
「もうここらは白鳥区のおしまひです。ごらんなさい。あれが名高いアルビレオの観測所です。」
窓の外の、まるで花火でいっぱいのやうな、あまの川のまん中に、黒い大きな建物が四棟ばかり立って、
その一つの平屋根の上に、眼もさめるやうな、青宝玉(サフアイア)と黄玉(トパース)のおおきな二つのすきとほった球が、輪になってしづかにくるくるとまはってゐました。
7月です。
ジョバンニの切符ですね。
カムパネルラは、その紙きれが何だったか待ち兼ねたといふやうに急いでのぞきこみました。
ジョバンニも全く早く見たかったのです。ところがそれはいちめん黒い唐草のやうな模様の中に、
をかしな十ばかりの字を印刷したものでだまって見てゐると何だかその中へ吸い込まれてしまふやうな気がするのでした。(略)
その鳥捕りの時々大したもんだといふやうにちらちらこっちを見てゐるのがぼんやりわかりました。
どこでも勝手に歩ける通行券の切符! どんな切符か、見たかったですね。
8月です。
ジョバンニはその小さく小さくなっていまはもう一つの緑いろの貝ぼたんのやうに見える森の上にさっさっと青じろく時々光ってその孔雀がはねをひろげたりとぢたりする光の反射を見ました。(略)
ハーブのやうに聞こえたのはみんな孔雀よ
天上では孔雀だってハープのように鳴くんだ!!
実際の孔雀は、賢治も他の作品で書いていますが、破れたラッパのような声を出します。(^_-)-☆
山猫博士も「鳥捕り」がお気に入りだったのでしょうか。
ジョバンニとカムパネルラに次いで登場回数が多いですね。
しかし5月の鳥捕り画像と、6月、7月の鳥捕りは雰囲気が違うのが気になります。
山猫博士と電話でお話したことですが、鳥捕り像について「当時はこういう仕事の人は下層階級というか、
差別されていたようだよ」とのこと。
鈴木滃二という漫画家の紹介がありました。
「賢治の影響を受けていると思うよ」とのお言葉。
あいにく、漫画界のことは不勉強で存じませんでしたが、機会があったら、読んでみたいです。